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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 10

1 サムエルはオリーブ油の入ったつぼを取り、サウルの頭に注ぎかけ、口づけしてから言いました。「なぜこんなことをしたか、おわかりですか。主があなたを、ご自身の民イスラエルの王に任命なさったからなのです。

2 今、私と別れたら、あなたはベニヤミン領内のツェルツァフにあるラケルの墓のそばで、二人の人に出会うでしょう。その二人は、ろばがとっくに見つかったと伝えるはずです。また、お父上があなたのことを、『いったい、どこへ行ってしまったんだ』と心配している様子も知らせてくれます。

3 それから、さらにタボルの樫の木のところまで行くと、三人の人に出会うでしょう。神様を礼拝するため、ベテルの祭壇に向かう人たちです。一人は子やぎ三頭を携え、一人はパンを三つ、他の一人はぶどう酒の皮袋一袋を持っているはずです。

4 彼らはあなたにあいさつして、パンを二つくれるので、それを受け取りなさい。

5 そのあとあなたは、ペリシテ人の守備隊がいる、『神の丘』として名高いギブア・エロヒムに行くことになります。そこへ着くと、預言者の一団が、琴、タンバリン、笛、竪琴を鳴らし、預言をしながら丘を降りて来るのに出会うでしょう。

6 その時、神の霊が激しく下り、あなたも共に預言を始めます。すると、全く別人になったように感じ、またそうふるまうに違いありません。

7 その時から、自分の思うとおり、その時その時の状況に応じて、いちばん良いと思われることをすればよいのです。神様が導いてくださるからです。

8 それから、ギルガルへ行き、七日間、私を待ちなさい。焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげるために私も行くから、今後なすべきことは、その時に教えることにしましょう。」

9 サウルはサムエルのもとを辞して進んで行くうち、神から新しい心を与えられました。そしてサムエルの預言はすべて、その日のうちに現実となったのです。

10 サウルと召使が神の丘に着くと、言われたとおり預言者の一団が近づいて来るのに出会いました。神の霊がサウルに下り、彼も預言を始めました。

11 そのことを聞いたサウルの友人たちは驚き、「どうしたんだ。あのサウルが預言者だって?」と言いました。

12 居合わせた近所の人も、「父親もあんなふうだったかな」とささやきました。そういうわけで、「サウルも預言者なのか」ということばが、ことわざのようになったのです。

13 サウルは預言を終えると、丘の祭壇へと上って行きました。

14 彼のおじはサウルと召使いに、「いったい、どこへ行っていたのだ」と聞きました。

「ろばを捜し回っていたのですが、見つからないので、サムエル様のところへ、ろばの居場所を伺いに行ったのです。」

15 「そうだったのか。それで何と?」

16 「ろばはもう見つかったとおっしゃいました。」

しかしサウルは、自分が王として油を注がれたことは黙っていました。

17 さて、サムエルは全イスラエルをミツパに召集し、

18-19 イスラエルの神のことばを伝えました。「わたしはあなたがたをエジプトから連れ出し、エジプト人と、あなたがたに害をもたらすすべての民の手から救い出した。ところが、こうまで心にかけたわたしを退け、『それより、王が欲しい』と叫んでいる。さあ、部族ごとに、氏族ごとに、わたしの前に出なさい。」

20 こうしてサムエルは、部族の指導者を整列させました。聖なるくじで、まずベニヤミン族が選ばれました。

21 ベニヤミン族を、氏族ごとに主の前に出させたところ、マテリの氏族が選ばれました。こうしてついに、キシュの子サウルをくじで選び出したのです。ところが、どこを捜してもサウルの姿は見当たりません。

22 人々が、「いったいサウルは、どこへ行ったのでしょう。ここに来ているのですか」と尋ねると主は、「見なさい。彼は荷物の陰に隠れている」と答えました。

23 それで人々は彼を見つけると、そこから連れて来ました。サウルが立つと、他のだれよりも肩から上だけ高いのが目立ちました。

24 サムエルはすべての民の前で宣言しました。「この人こそ、主が王としてお選びくださった人だ。イスラエル中で、この人の右に出る者はいない!」

「王様、ばんざーいっ!」

民の間から喜びの叫びが上がりました。

25 サムエルは全国民に、王の権利と義務について語りました。さらに、それを文書にして、主の前の特別な場所に納めました。こののち、人々をそれぞれ自分の家に帰したのです。

26 サウルもまた、ギブアの自宅に戻りました。この時、神によって心動かされた勇士たちは、彼について行きました。

27 ところが、中には飲んだくれやならず者もいて、「こんな男がおれたちを守れるものか」と言って彼を侮り、贈り物すら持っていこうとしませんでした。しかし、サウルは何も言いませんでした。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 11

王となったサウル

1 さて、アモン人ナハシュが軍を率いて、イスラエル人の町ヤベシュ・ギルアデに迫りました。ヤベシュの人々は講和を求め、「どうか、お助けください。あなたがたにお仕えしますから」とすがりました。

2 ナハシュの答えは情け容赦のないものでした。「よし、わかった。ただし、一つ条件がある。全イスラエルへの見せしめに、おまえたち一人一人の右目をえぐり取らせてもらおう。」

3 なんということでしょう。ヤベシュの長老たちは困りました。「七日間の猶予を下さい。その間に、だれも助けに来てくれなければ、お申し出に従うまでです。」

4 使者がサウルの住むギブアの町に駆けつけ、苦境を訴えると、だれもが声を上げて泣きだしました。

5 そこへ、畑を耕しに行っていたサウルが戻って来て、「いったい、どうしたのだ。なぜ、みんな泣いているのか」と尋ねました。人々はヤベシュからの知らせを伝えました。

6 その時、神の霊が激しくサウルに下ったのです。サウルは満身を怒りに震わせ、

7 二頭の雄牛を捕まえるや、それを切り裂き、使者に託してイスラエル中に送りました。そして、「サウルとサムエルに従って戦うことを拒む者の雄牛は、このようにされる」と言い送ったのです。主が人々にサウルの怒りを恐れさせたのか、みな、いっせいに集まって来ました。

8 ベゼクでその数を調べると、イスラエルから三十万人、さらにユダから三万人が加わったことがわかりました。

9 そこでサウルは、使者をヤベシュ・ギルアデに送り帰し、「明日の昼過ぎまでに助けに行く」と告げさせたのです。この知らせに、どれほど町中が喜びにわき立ったことでしょう。

10 ヤベシュの人々は、敵にこう通告しました。「降伏いたします。明日、あなたがたのところへまいりますから、どうぞお気のすむようになさってください。」

11 翌朝早く、サウルはヤベシュ・ギルアデに駆けつけ、全軍を三隊に分けてアモン人を急襲し、午前中にほとんど全員を打ち殺してしまいました。残った者たちも散り散りになり、二人の者が共に残ることさえありませんでした。

12 その時、人々はサムエルに言いました。「サウルなどわれわれの王ではないと言った者たちはどこでしょうか。引っぱり出してください。息の根を止めてやります。」

13 しかし、サウルは答えました。「今日はだめだ。この日、主はイスラエルを救ってくださったのだから、だれをも殺してはならない。」

14 続いて、サムエルが呼びかけました。「さあ、ギルガルへ行こう。サウルがわれわれの王であることを、改めて確認するのだ。」

15 人々はこぞってギルガルへ行き、主の前でサウルを王として立てました。それから、主に和解のいけにえをささげ、共に喜び合ったのです。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 12

サムエルの別れのことば

1 サムエルは、再び民に語りかけました。「さあ、見るがいい。あなたがたの願いどおり王を立てた。

2 私は自分の息子よりも、この人を選んだ。私は若いころから公の務めについてきたが、今や白髪頭の老人になった。

3 今、私は主の前に、そして主が油を注がれた(神にきよめ分けられ、任命を受けた)王の前に立っている。さあ、言い分があるなら言ってくれ。私がだれかの牛やろばを盗んだりしただろうか。みんなをだましたり、苦しめたりしたことがあるか。わいろを取ったことがあるか。もしそんな事実があったら、言ってほしい。何か間違いを犯したことがあるなら償いたいのだ。」

4 「とんでもない。あなたからだまし取られたり、苦しめられたりした覚えなど、これっぽちもありません。それに、あなたは、わいろなどとは全く無縁な方です。」

5 「では、私があなたがたから非難される点が何一つないことについては、主ご自身と、主が油を注がれた王が証人ということでよいか。」

「はい、そのとおりです」と彼らは答えました。

6 サムエルは続けました。「モーセとアロンをお選びになったのは、主であった。主があなたがたの先祖をエジプトから導き出してくださったのだ。

7 さあ、主の前に静かに立ちなさい。先祖たちの時代からこのかた、主があなたがたに対してどれほどすばらしいみわざを行ってくださったか思い出させよう。

8 かつて、エジプトに抑留されていたイスラエル人が叫び求めた時、主はモーセとアロンを遣わし、彼らをこの地へと導いてくださった。

9 ところが、だれもみな、すぐに彼らの神、主を忘れてしまった。それで、ハツォル王の率いる軍の将シセラや、ペリシテ人、モアブの王の手に落ちるのを主は放っておかれた。

10 すると人々はもう一度、主に叫び求めた。主を捨て、バアルやアシュタロテなどの偶像を拝んだ罪も告白した。そして、『もし敵の手から救い出してくださるなら、あなただけを礼拝します』と泣きすがった。

11 それで主は、ギデオン(エルバアル)、バラク、エフタ、サムエルを遣わして敵の手から救い出し、安らかな生活を取り戻させてくださったのだ。

12 ところが、あなたがたは、アモン人の王ナハシュを怖がって、自分たちを治める王が欲しいと言いだした。あなたがたの神である主こそが、あなたがたの王であったのに。主はこれまでもずっと、あなたがたを支配してこられたのだ。

13 さあ、よく見なさい。この人が、あなたがたの選んだ王だ。

14 あなたがたが主を恐れかしこみ、主の命令を聞き、反抗的な態度を捨て、そして王とともに主に仕える道を歩むなら、すべてうまくいくだろう。

15 しかし、もし主の命令に逆らい、主に聞き従うことを拒むなら、主のさばきが下り、先祖たちの二の舞になるだろう。

16 さあ、主のみわざを見なさい。

17 だれでも知っているように、小麦を刈り取るこの時期には雨が降らない。しかし、私は主に祈って、今日、雷と雨を送っていただく。王を欲しがるのがどれほど愚かなことだったか思い知るだろう。」

18 そうして、サムエルが呼び求めると、主は雷と雨をもたらしたので、人々はみな驚き、震え上がりました。

19 彼らはサムエルにとりすがりました。「ああ、いのちだけはお助けくださいと祈ってください。私たちは王が欲しいと言って、今までの罪にまた罪を重ねてしまいました。」

20 サムエルは彼らをなだめました。「怖がることはない。過ちを犯したのは事実だが、問題はこれからだ。心を尽くして主を礼拝し、何があっても背いてはならない。

21 ほかの神々が助けてくれるわけがないのだから。

22 主は、ご自分の民を捨てて、その偉大なお名前を汚すようなことはなさらない。主はあなたがたを、特別な民として選んでくださったのではないか。そうすることが主のご意志だったのだ。

23 私も、あなたがたのために祈るのをやめて、主に罪を犯すことなどしない。これからも、良いこと正しいことを教え続けよう。

24 主を信頼し、心から礼拝をささげなさい。主があなたがたに行ったすばらしいわざを、すべて心に留めなさい。

25 しかし、もしこのまま罪を犯し続けるなら、王とともに滅ぼされることになるだろう。」

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 13

サウルの失敗

1 サウルが王位についてから、一年が過ぎました。サウルは治世の二年目に、

2 三千人の精兵を選びました。このうち二千人はサウルとともにミクマスとベテルの山地にこもり、残りの千人はサウルの息子ヨナタンに統率されて、ベニヤミン領のギブアにとどまりました。残りの者は自宅待機となりました。

3-4 そののちヨナタンは、ゲバに駐屯していたペリシテ人の守備隊を攻略し、そのニュースがたちまちペリシテの領土中に広まりました。サウルは全イスラエルに戦闘準備の指令を出し、ペリシテ人の守備隊を破ったことで、ペリシテ人の大きな反発を買った事情を訴えました。イスラエルの全軍が再びギルガルに召集され、

5 ペリシテ側も兵力を増強し、戦車三千、騎兵六千、それに浜辺の砂のようにひしめくほどの兵士たちを集結させました。そして、ベテ・アベンの東にあるミクマスに陣を敷いたのです。

6 イスラエル人は敵のおびただしい軍勢を見るなり、すっかりおじけづいてしまい、先を争ってほら穴や茂みの中、岩の裂け目、それに地下の墓所や水ためにまでも隠れようとしました。

7 中には、ヨルダン川を渡って、ガドやギルアデ地方まで逃げ延びようとする者も出ました。その間、サウルはギルガルにとどまっていましたが、従者たちは、どうなることかと恐怖に震えていました。

8 サムエルはサウルに、自分が行くまで七日間待つように言ってありました。ところが、七日たってもサムエルは現れません。サウル軍は急に動揺し始め、統制が取れなくなりそうな形勢です。

9 困ったサウルは、祭司ではないのに、自分で焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげようと決心しました。

10 こうして、サウルがちょうどいけにえをささげた直後、サムエルが姿を現したのです。サウルが迎えに出て祝福を受けようとすると、

11 サムエルは、「あなたはなんということをしたのか」と問い詰めました。

サウルは答えました。「兵士たちは逃げ出そうとしておりましたし、あなたも約束どおりおいでになりません。ペリシテ人は、今にも飛びかからんばかりにミクマスで構えています。

12 敵はすぐにも進撃してくるでしょう。なのに、まだ神様に助けを請うていません。とてもあなたを待ちきれませんでした。それでやむなく、自分でいけにえをささげてしまったのです。」

13 「なんと愚かなことを!」サムエルは思わず叫びました。「よくもあなたの神、主の命令を踏みにじってくれた。主はあなたの家系を、子々孫々まで、永遠にイスラエルの王に定めておられたのに。

14 だが、もはやあなたの王家も終わりだ。主が望んでおられるのは、ご自分に従う者なのだ。すでに、お心にかなう人を見つけて、王としてお立てになっている。あなたが命令に背いたからだ。」

15 サムエルはギルガルを発って、ベニヤミン領内にあるギブアに上って行きました。

一方、サウルは自分の指揮下にある兵を数えてみました。すると、たった六百人しか残っていませんでした。

16 サウルとヨナタンとこれらの兵は、ベニヤミンのゲバに駐屯し、ペリシテ人はミクマスに腰をすえていました。

17 やがて三つの攻撃部隊が、ペリシテ人の陣営からくり出されました。一隊はシュアルの地にあるオフラに向かい、

18 もう一隊はベテ・ホロンに向かい、第三の隊は荒野に接するツェボイムの谷を見下ろす境界へと進軍したのです。

19 当時、イスラエルには鍛冶屋がありませんでした。イスラエル人が剣や槍を作ることを恐れたペリシテ人が、鍛冶屋の存在を許さなかったからです。

20 そこで、イスラエル人がすき、くわ、斧、かまなどを研ぎたい場合は、ペリシテ人の鍛冶屋を訪ねなければなりませんでした。

21 すきやくわの研ぎ料、斧や突き棒の修理料は一ピム(一シェケル=銀十一・四グラムの三分の二)でした。

22 この時、イスラエル兵の中で剣や槍を持っているのはサウルとヨナタンだけでした。

23 そうこうするうち、ミクマスへ通じる山道は、ペリシテ軍の先陣によって厳重に封鎖されました。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 14

ヨナタンの活躍

1 一日二日が過ぎたころ、サウルの子の王子ヨナタンは、側近の若者に言いました。「さあ、ついて来い。谷を渡って、ペリシテ人の陣営に乗り込もう。」

このことは、父サウルには知らせていませんでした。

2 サウルと六百人の兵は、ギブア郊外のミグロンのざくろの木付近に陣を敷いていました。

3 その中には祭司アヒヤもいました。アヒヤはイ・カボデの兄弟アヒトブの子で、アヒトブはシロで祭司を務めたエリの子ピネハスの孫に当たります。ヨナタンが出かけたことは、だれ一人知りませんでした。

4 ペリシテ人の陣地へ行くには、二つの切り立った岩の間の狭い道を通らなければなりませんでした。二つの岩は、ボツェツとセネと名づけられていました。

5 北側の岩はミクマスに面し、南側の岩はゲバに面していました。

6 ヨナタンは従者に言いました。「さあ、あの主を知らない者たちを攻めよう。主が奇跡を行ってくださるに違いない。主を知らない兵の力など、どれほど大きかろうと、主には物の数ではない。」

7 若い従者は言いました。「そうですとも。あなたの思いどおりにお進みください。お供します。」

8 「そうか。では、こうしよう。

9 われわれが敵の目に留まったとき、『じっとしていろ。動くと殺すぞ!』と言われたら、そこに立ち止まって彼らを待とう。

10 もし『さあ、来い!』と言われたら、そのとおりにするのだ。それこそ、彼らを打ち負かしてくださる神のしるしだ。」

11 ペリシテ人は近づいて来る二人の姿を見かけると、「見ろ! イスラエル人が穴からはい出て来るぞ!」と叫びました。

12 そしてヨナタンに、「さあ、ここまで来い。痛い目に会わせてやろう!」と大声で呼びかけるではありませんか。ヨナタンはそばの若者に叫びました。「さあ、あとから登って来い。主がわれわれイスラエルを助けて、勝利をもたらしてくださるぞ!」

13 二人は崖をよじ登り、ペリシテ人がしりごみするところを打ちかかり、ヨナタンと若者は右に左に切り倒しました。

14 この時に殺されたのは約二十人で、一くびきの牛が半日で耕す広さの場所に死体が散乱しました。

15 不意を突かれて、ペリシテ軍の全陣営、とりわけ先陣の部隊はパニックに陥りました。大地震にでも見舞われたように、恐怖におののきました。

16 ギブアにいたサウルの陣営では、見張りの番兵が思いがけない光景を目にしていました。ペリシテ人の大軍が、うろたえて右往左往し始めたのです。

17 サウルは、「だれかわれわれの陣営から消えた者がいるか調べろ」と命じました。調べると、ヨナタンと側近の若者がいません。

18 サウルはアヒヤに、「神の箱を持って来なさい」と叫びました。そのころ、神の箱はイスラエル人の間にあったのです。

19 サウルが祭司と話している間に、ペリシテ人の陣営の騒ぎは、ますます大きくなっていきました。

サウルは祭司に、「もうよい」と言って、

20 六百人の兵とともに大急ぎで戦場に駆けつけました。すると、ペリシテ人が同士打ちをしており、どこもかしこも収拾がつかない有様です。

21 それまでペリシテ軍に徴兵されていたヘブル人も、寝返ってイスラエル側につきました。

22 ついには、山地に隠れていた者まで、ペリシテ人が逃げ出すのを見て、追撃に加わりました。

23 こうして、この日、主はイスラエルを救い、戦闘はベテ・アベンに場所を移していきました。

24-25 この日、サウルは民に命じていました。「夕方まで、つまり、私が完全に敵に復讐するまで、食べ物を何も口にするな。もし食べる者がいれば、のろわれる。」それで、森に入ると地面にみつばちの巣があったのに兵士たちは目もくれず、まる一日、何も食べていませんでした。

26 サウルののろいを恐れていたからです。

27 ところが、ヨナタンは父の命令を知りません。手にしていた杖をみつばちの巣のみつにちょっと浸してなめてみました。すると、体中に力がわいてきたのです。

28 その時、ヨナタンにだれかが耳打ちしました。「お父上は、今日、食物を口にする者にのろいをおかけになったのですよ。ですから、みんなへとへとに疲れているのです。」

29 「なんということだ!」ヨナタンは思わず叫びました。「そんな命令は、みんなを苦しめるだけだ。このみつをちょっとなめただけでも、私は元気になった。

30 もしわが軍が、敵陣で見つけた食糧を自由に食べてよいことになっていたら、もっと多くのペリシテ人を打ち殺せたろうに。」

31 一日中すきっ腹をかかえたまま、彼らは、ミクマスからアヤロンにかけてペリシテ人を追いかけ、彼らを討ったのです。そのため、みな、ぐったりしていました。

32 夕方になると、人々は戦利品に飛びつき、羊、牛、子牛などをほふり、血のしたたる肉に食らいつきました。

33 だれかがこの様子をサウルに告げ、血が残ったままの肉を食べて主に罪を犯していると非難しました。

「けしからん!」サウルは腹を立て、こう言い渡しました。「大きな石をここに転がして来なさい。

34 そして、隊中にふれ回り、牛や羊を連れて来て殺し、血を絞り出すよう命じるのだ。血が残ったままの肉を食べて、主に罪を犯してはならない。」

人々は言われたとおりにしました。

35 そしてサウルは、主のために祭壇を築いたのです。これは彼が築いた最初の祭壇でした。

36 それからサウルは、「さあ、夜通しペリシテ人を追い、最後の一人まで打ってしまおうではないか」と気勢を上げました。従者たちは、「それはいい。お考えどおりにしましょう」と答えました。ところが祭司は、「まず、神様にお伺いを立てましょう」と言いました。

37 そこでサウルは、「ペリシテ人を追うべきでしょうか。敵を打ち負かすのをお助けいただけますか」と、神に答えを請いました。しかし、夜が明けても何の返事もありません。

38 そこでサウルは兵士の長を集め、「何かまずいことがあったのだ。今日、どんな罪が犯されたのか、はっきりさせる必要がある。

39 イスラエルを救ってくださった主の御名にかけて誓う。罪を犯した者は、たとえわが子ヨナタンであろうと死ななければならない。」

しかし、だれも真相を語ろうとしませんでした。

40 そこでサウルが、「ヨナタンと私はこちらに、おまえたちはみなあちらに、両側に分かれて立ってみよう」と提案し、一同はそれに応じました。

41 サウルは祈りました。「ああ、イスラエルの神、主よ。なぜ、私の問いにお答えいただけなかったのでしょう。何か責められるべき点があるのでしょうか。ヨナタンか私に罪があるのですか。それとも、ほかの者が悪いのですか。主よ、罪を犯したのはだれかはっきりお示しください。」

それから聖なるくじを引くと、ヨナタンとサウルの側に当たりました。

42 サウルは続けて、「私とヨナタンとでくじを引こう」と言いました。その結果、くじはヨナタンに当たりました。

43 サウルはヨナタンに詰め寄りました。「何をしたのか、私に言いなさい。」

「みつをなめたのです。杖の先につけて、ほんの少しばかり。でも、私は死ななければなりません。」

44 「そうだ、ヨナタン。おまえは死ななければならない。もしそうでなければ、神が私を死ぬほどに罰してくださるように。」

45 すると、兵士たちが反発しました。「今日イスラエルを救ったのはヨナタン様です。その方のいのちが奪われるなんて、あってはなりません! 主にかけて誓います。あの方の髪の毛一本も失われてはなりません。今日の目ざましい働きは、神様に用いられている証拠ではありませんか。」

こうして、彼らはヨナタンを救ったのです。

46 そののち、サウルは追撃していた部隊を呼び戻したので、ペリシテ人は引き揚げて行きました。

47 サウルはイスラエルの王位についてからこのかた、周囲のあらゆる敵、モアブ、アモン人、エドム、ツォバの王たちからペリシテ人に至るまで、派兵して戦っていました。そして、向かうところどこでも勝利を収めました。

48 彼は大きな力を振るい、アマレク人を討ちました。サウルのおかげで、イスラエルはすべての侵略者の手から救われました。

49 さて、サウルには、ヨナタン、イシュビ、マルキ・シュアという三人の息子と、メラブ、ミカルという二人の娘がいました。

50-51 妻はアヒノアムといい、アヒマアツの娘でした。軍の司令官はサウルのおじネルの息子で、いとこに当たるアブネルでした。アブネルの父ネルとサウルの父キシュとは兄弟で、二人ともアビエルの子です。

52 イスラエル人はサウルの在世中、絶えずペリシテ人と戦い続けました。サウルは勇敢で屈強な若者を見つけると、彼らをみな軍隊に徴用しました。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 15

王位から退けられたサウル

1 ある日、サムエルはサウルに言いました。「私はあなたをイスラエルの王にした。主がそうせよと言われたからだ。今、確かにあなたは主に従っている。

2 それで、主はあなたにこう命じておられる。『アマレク人に罰を下す。イスラエル人がエジプトを脱出した時、彼らが領地内を通るのを拒否したからだ。

3 さあ、攻め上ってアマレク人を一人残らず打ちなさい。男も女も、子どもも赤ん坊も、牛も羊も、らくだもろばも徹底的に打つのだ。』」

4 サウルは兵をテライムに集結させました。兵は二十万で、それにユダの兵一万が加わりました。

5 そしてアマレク人の町へ行き、谷に陣を敷きました。

6 サウルはケニ人に使者を立て、アマレク人と運命を共にしたくなければ彼らの中から出て行くように警告しました。イスラエル人がエジプトから脱出した時、ケニ人が親切にしてくれたからです。ケニ人はさっそく荷物をまとめ、アマレク人の中から出て行きました。

7 そののちサウルは、ハビラからエジプトの東方、シュルに至る道でアマレク人を打ち、

8 王アガグを捕虜にしたほかは、一人残らず殺しました。

9 しかし、サウルと兵は、羊や牛の最上のもの、子羊のまるまる太ったものを殺さずに取り分けておきました。それらがとても気に入ったからです。そして、あまり値打ちのない、質の悪いものだけを殺したのです。

10 その時、主はサムエルに語りかけました。

11 「わたしはサウルを王に立てたことを悔いる。二度までもわたしに逆らった。」サムエルはそのことばに激しく動揺し、夜通し主に叫び続けました。

12 翌朝早く、彼がサウルに会いに出かけようとした時、「サウル王はカルメル山へ行って自分のために記念碑を建て、それからギルガルへ引き返した」と告げる者がありました。

13 ようやくサムエルが捜し当てると、サウルは上機嫌であいさつしてきました。「これは、ようこそ。ご安心ください。主のご命令をすべて守りました。」

14 「なに? では、この聞こえてくる、メエメエ、モウモウという鳴き声はいったい何だ。」

15 「特上の羊や牛を殺してしまうのはもったいないと考え、あなたの神、主にささげるために連れて来たのです。ほかのものはいっさい殺しました。」

16 「黙りなさい! 昨夜、主が何とおっしゃったか教えよう。」

「何とおっしゃったのですか?」

17 「サウル。自分では取るに足りない者でいるつもりかもしれないが、いやしくもあなたは、イスラエルの王に任命された者ではないか。

18 主に何と命じられたか、忘れてはいないだろう。『罪人アマレクのすべてを滅ぼし尽くせ』と言われたのではなかったか。

19 それなのに、どうして従わなかったのだ。なぜ戦利品に飛びついて、主の命令に背いたのだ。」

20 「私としては、お従いしたつもりです。命令どおりにいたしました。アガグ王は連れて来ましたが、ほかのアマレク人は全員殺しました。

21 たまたまいた羊や牛や戦利品の最上のものを取り分け、主にいけにえとしてささげようとしたのは、民が言いだしたことです。」

22 サムエルは言いました。「主は、いくら焼き尽くすいけにえやその他のいけにえをささげたとしても、あなたが従順でなければ、少しもお喜びにはならない。従順は、いけにえよりはるかに尊いのだ。主は、あなたが雄羊の脂肪をささげるよりも、主の御声に耳を傾けるほうをお喜びになる。

23 反逆は占いの罪に等しく、不従順は偶像礼拝に等しい罪なのだ。もはや主のおことばを無視したからには、主もあなたを王位から退けることだろう。」

24 「ああ、私は罪を犯しました。言われるとおり、あなたの指図にも主の命令にも背きました。民を恐れて、言いなりになったのです。

25 どうか、この罪をお赦しください。主を礼拝するため、いっしょに行ってください。」

26 「今さら、むだなことだ! 主のご命令を退けたあなたを、主もイスラエルの王位から退けられたのだ。」

27 こう答えて引き返そうとするサムエルにとりすがったサウルは、そのはずみでサムエルの上着を破ってしまいました。

28 サムエルはサウルに言いました。「よく見るがよい。主は、今日、あなたからイスラエルの王国を取り上げて、さらにすぐれた人物にお渡しになった。

29 イスラエルの栄光そのものであるお方のことばに偽りはなく、心変わりもありえない。」

30 それでもサウルはとりすがりました。「私が間違っていました。しかし、どうか今、民と指導者たちとの前で私の面目をつぶさないでください。どうか、いっしょに行って、あなたの主を礼拝させてください。」

31 あまりの熱心さにサムエルもついに折れました。

32 そののち、サムエルはサウルに、「アガグ王を連れて来なさい」と命じました。アガグはいそいそとサムエルの前に出て来ました。「最悪の事態は免れた。きっと助けてもらえるだろう」と思ったのです。

33 しかし、サムエルはきびしく言い渡しました。「おまえの剣は実に多くの母親から子どもを奪った。今度はおまえの母親が子を失う番だ。」そうしてサムエルはギルガルで、主の前にアガグを切り殺しました。

34 そののち、サムエルはラマの自宅へ戻り、サウルもギブアに引き返しました。

35 二人は、もう二度と顔を合わせることがありませんでした。しかし、サムエルはサウルのことで悲しみ、主もまた、サウルをイスラエルの王としたことを悔やみました。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 16

油を注がれたダビデ

1 主はサムエルに言いました。「いつまでサウルのことでくよくよしているのか。もうわたしは、彼をイスラエルの王位から退けてしまったのだ。さあ、つぼいっぱいにオリーブ油を満たして、ベツレヘムへ行き、エッサイという人を探しなさい。わたしは、その息子の一人を新しい王に選んだ。」

2 しかしサムエルは、「どうしてそんなことができましょう。それがサウルの耳に入ったら殺されます」と言いました。しかし、主は答えました。「あなたは雌の子牛を一頭取り、『主にいけにえをささげに行く』と言えばよい。

3 そして、いけにえをささげる時、エッサイを呼びなさい。どの息子に油を注いだらよいかは、そこで指示しよう。」

4 サムエルは主のことばどおりに行いました。一方ベツレヘムでは、町の長老たちが恐る恐るサムエルを出迎えて言いました。「これは、これは。わざわざお越しになられたのは、何か変わったことでも?」

5 「いや、心配はご無用です。主にいけにえをささげに来たまでです。いけにえをささげるため、身をきよめていっしょに来てください。」サムエルはエッサイと息子たちにきよめの儀式を行い、彼らも招きました。

6 彼らが来た時、サムエルはそのうちの一人、エリアブをひと目見るなり、「この人こそ、主がお選びになった人に違いない」と思いました。

7 しかし、主は言いました。「容貌や背の高さで判断してはいけない。彼ではない。わたしの選び方は、あなたの選び方とは違う。人は外見によって判断するが、わたしは心と思いを見るからだ。」

8 次はアビナダブが呼ばれ、サムエルの前に進み出ました。しかし、「主は彼も選んでおられない」とサムエルは言いました。

9 続いてシャマが呼ばれましたが、主からは、「彼もわたしの目にかなわない」という返事しかありませんでした。同様にして、エッサイの七人の息子がサムエルの前に立ちましたが、みな主に選ばれませんでした。

10-11 サムエルはエッサイに言いました。「どうも主は、この息子さんたちのだれをも選んでおられないらしい。もうほかに息子さんはいないのですか。」

「いいえ、まだ末の子がおります。今、野で羊の番をしておりますが。」

「すぐ呼びにやってください。その子が来るまで、食事は始めませんから。」

12 エッサイはすぐに彼を迎えにやりました。連れて来られたのは、見るからに健康そうで、きれいな目をした少年でした。その時、「この者だ。彼に油を注ぎなさい」と、主の声がありました。

13 サムエルは、その少年ダビデを兄弟たちの真ん中に立たせて、持って来たオリーブ油を取り、彼の頭に注ぎました。すると、主の霊がダビデに下り、その日から彼には卓越した力が与えられたのです。こののち、サムエルはラマへ帰って行きました。

サウルに仕えるダビデ

14 一方、主の霊はサウルから離れ、主が代わりに災いの霊を送り込まれたので、彼はいつも気が滅入り、何かにおびえるようになりました。

15-16 そこで家臣たちがサウルに治療法を進言しました。「災いの霊に苦しめられる時には、竪琴の音色が一番です。上手な弾き手を探してまいりましょう。美しい調べが心を静めてくれます。きっと晴れ晴れとしたご気分におなりでしょう。」

17 「そうだな。さっそく弾き手を見つけてまいれ。」

18 その時、家臣の一人が申し出ました。「ベツレヘムにいい若者がいます。私が会ったのはエッサイという人の息子ですが、竪琴を弾かせたら、それはもう天下一品です。りっぱな戦士で勇敢ですし、分別もございます。なおすばらしいことに、彼には主がついておられるのです。」

19 サウルは乗り気になり、使いをエッサイのもとへ送って、「あなたの息子で、羊飼いをしているというダビデをよこしてくれ」と頼みました。

20 エッサイは要請に応じて、ダビデばかりか、子やぎ一頭と、パンやぶどう酒を積んだろば一頭とを献上しました。

21 ダビデをひと目見たとたん、サウルは感嘆の声をもらし、たいそう気に入りました。こうしてダビデは、サウルのそば近くに取り立てられたのです。

22 サウルはエッサイのところに人をやり、「ダビデが気に入ったので手もとに置きたい」と伝えました。

23 神からの霊がサウルをさいなむ時、ダビデが竪琴を弾くと、災いの霊が離れ、サウルは気分がよくなるのでした。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 17

ダビデとゴリヤテ

1 ところで、ペリシテ人はイスラエルに戦いをしかけようと軍隊を召集し、ユダのソコとアゼカとの間にあるエフェス・ダミムに陣を敷きました。

2 サウルはこれに応戦するため、エラの谷に兵力を集めて戦いに備えました。

3 ペリシテ人とイスラエル人は、互いに谷を隔てた丘の上でにらみ合うかたちになりました。

4-7 その時、ゴリヤテというガテ出身のペリシテ一の豪傑が陣地から出て来て、イスラエル軍に向き合いました。身長が約三メートルもある巨人で、青銅のかぶとをかぶり、五十七キロもあるよろいに身を固め、青銅のすね当てを着け、七キロもある鉄の穂先のついた太い青銅の投げ槍を持っていました。盾持ちが、大きな盾をかかえて先に立っていました。

8 仁王立ちのゴリヤテは、イスラエルの陣営に響き渡るように大声で叫びました。「よく、こうもたくさんそろえたもんだ。おれはペリシテ人の代表だ。おまえらも代表を一人選んで一騎打ちをし、それで勝負をつけようじゃないか。

9 もし、おまえらの代表の手にかかっておれ様が倒れでもすりゃあ、おれたちは奴隷になる。だが、おれ様が勝ったなら、おまえらが奴隷になるのだ。

10 さあ、どうした。イスラエル軍には人がいないのか。おれと戦う勇気のあるやつは出て来い。」

11 サウルとイスラエル軍は、これを聞いてすっかり取り乱し、震え上がってしまいました。

12 エフラテ人エッサイの子のダビデには七人の兄がいました。

13 三人の兄エリアブとアビナダブとシャマは、このペリシテ人との戦いに義勇兵として従軍しており、

14-15 末っ子のダビデはサウルの身辺の警護に当たりながら、時々ベツレヘムへ帰り、羊を飼う父の仕事を手伝っていました。

16 さて、巨人ゴリヤテは四十日間、毎日、朝と夕の二回、イスラエル軍の前に姿を現しては、これ見よがしにのし歩いてみせました。

17 ある日、エッサイはダビデに言いつけました。「さあ、この炒り麦一エパ(二十三リットル)とパン十個を、兄さんたちに届けてくれないか。

18 このチーズは隊長さんに差し上げ、あの子たちの様子を見て来ておくれ。あの子たちから何かことづかってくることも忘れないようにな。」

19 サウルとイスラエル軍は、エラの谷に陣を張っていました。

20 ダビデは翌朝早く、羊を他の羊飼いに任せ、食べ物をかかえて出かけました。陣営のはずれまで来ると、ちょうどイスラエル軍がときの声を上げて戦場へ向かうところでした。

21 やがて、敵味方が互いににらみ合う態勢となりました。

22 ダビデは持って来た包みを荷物係に預け、兄たちに会うために陣地へ駆けだしました。

23 兄たちと話をしながらふと見ると、敵陣から大男が向かって来ます。あのゴリヤテです。彼はいつものように、ふてぶてしく挑発してきました。

24 イスラエル軍はゴリヤテを見ると、おじけづいて後ずさりを始めました。

25 「あの大男を見ろよ。イスラエル軍をなめていやがる。あいつを倒した者には、王様からしこたまごほうびが頂けるそうだ。王女の婿にしてもらえるうえ、一族はみな税を免除されるそうだ。」

26 ダビデは、ほんとうの話かどうか、そばにいる人たちに確かめようと尋ねました。「あのペリシテ人を倒して、イスラエルへの悪口雑言をやめさせた者には、何をしていただけるのでしょうか。全く、生ける神様の軍をなぶりものにするなんて! いったい、あの、神様を知らないペリシテ人は何者ですか。」

27 人々は、先ほどのことばをくり返しました。

28 ところが長兄エリアブは、ダビデがそんな話に首を突っ込んでいるのを聞いて、腹を立てました。「いったい、ここへ来て何をしようというのだ。羊の世話はどうした。とんでもないうぬぼれ屋め。戦見たさに、のこのこやって来たんだろう。」

29 「僕が何をしたっていうんです? ちょっと尋ねただけじゃありませんか。」

30 ダビデはほかの人のところへ行って、次々に同じ質問をして回りました。だれからも同じような答えが返ってきます。

31 そのうち、ダビデのことばの裏にある意図をくんだだれかが、そのことをサウル王に告げたので、王はダビデを呼びにやりました。

32 ダビデはきっぱりとサウルに言いました。「こんなことで何も心配には及びません。私が、あのペリシテ人を片付けましょう。」

33 サウルは言いました。「冗談を言うな! おまえみたいな小僧が、どうしてあんな大男と渡り合えるのだ。あいつは若い時から鍛え抜かれた戦士だぞ!」

34 「私は父の羊を飼っているのですが、ライオンや熊が現れて、群れの子羊を奪って行くことがよくあります。

35 そんな時、私は棒を持って追いかけ、その口から子羊を助け出すんです。もしそいつらが襲いかかって来たら、あごひげをつかんでたたきのめします。

36 ライオンも熊も、こうしてやっつけてきました。あの、神様を知らないペリシテ人だって、同じ目に会わせてやります。生ける神様の軍をばかにした男ですから。

37 ライオンや熊の爪や歯から守ってくださった神様は、あのペリシテ人の手からも、私を守ってくださるに違いありません。」

サウルは、ついに首をたてに振りました。「よし、わかった。行きなさい。主がついておられるように。」

38-39 サウルは、自分の青銅のかぶととよろいをダビデに与えました。ダビデはそれをまとい、剣を持ち、試しに一、二歩、歩いてみました。そんなものを身に着けたことがなかったのです。しかし、「これじゃ、身動きがとれません」と言うや、脱ぎ、

40 川からなめらかな石を五つ拾って来ると、羊飼いが使う袋に入れました。そして、羊飼いの杖と石投げだけを持って、ゴリヤテに向かって行ったのです。

41-42 ゴリヤテは盾持ちを先に立て、ゆっくり近づいて来ましたが、まだ初々しい少年だとわかると、ふふんと鼻で笑い、大声で言いました。

43 「杖なんか持って来やがって、おれ様を犬っころ扱いする気か。」彼は自分の神々の名を挙げてダビデをのろい、

44 「さあ、来い。おまえの肉を鳥や獣にくれてやるわい!」と叫びました。

45 ダビデも負けずに答えました。「おまえは剣と槍で立ち向かって来るが、私は天地の主であり、おまえがばかにしたイスラエルの主のお名前によって立ち向かうのだ。

46 今日、主がおまえを打ち負かしてくださる。おまえの息の根を止め、首をはねてやるからな。そして、ペリシテ人らのしかばねを鳥や獣にくれてやる。すべての国々は、イスラエルに神様がおられることを知るのだ。

47 そしてイスラエルは、主が武器に頼らずにご計画を実現なさるということ、神様のなさることは人間の企てとは無関係だということを学ぶのだ。主はおまえたちを、私たちの手に渡してくださる。」

48-49 近づいて来るゴリヤテめがけて、ダビデは駆け寄りました。そして、袋から石を一つ取り出すと、石投げでビュンとそれを放ちました。石はゴリヤテの額にみごと命中し、額に食い込み、ゴリヤテの巨体は揺らいで、うつぶせに倒れました。

50-51 ダビデは石投げと石一つで、このペリシテ人の大男をしとめたのです。剣を持っていなかったダビデは、走り寄ってゴリヤテの剣を抜き、それでとどめを刺して、首をはねました。ペリシテ人は自分たちの代表戦士がやられてしまったので、しっぽを巻いて逃げ出しました。

52 イスラエル軍は、どっと勝ちどきを上げると、あとを追いかけ、ガテとエクロンの門まで追撃しました。シャアライムへ至る道のそこかしこに、ペリシテ人の死者や負傷者があふれました。

53 イスラエル軍は引き返して、もぬけの殻となったペリシテ人の陣地を略奪しました。

54 ダビデはゴリヤテの首を持ってエルサレムへ帰り、ゴリヤテが着けていた武具を自分の天幕に保管しました。

55 サウル王は、ダビデがゴリヤテと戦うために出て行くのを見た時、司令官のアブネルに尋ねました。「アブネル。あの若者は、どんな家系の出なんだ。」

「それが、全くわからないのです。」

56 「そうか。では、さっそく調べてくれ。」

57 ダビデがゴリヤテを倒して帰って来ると、アブネルはその首をかかえたダビデを、王の前へ連れて来ました。

58 「みごとであった。ところで、おまえの父親はどういう人かね。」王は尋ねました。「父はエッサイと申して、ベツレヘムに住んでおります。」

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 18

ダビデを恐れるサウル

1-3 サウル王がひととおりの質問を終えたあと、ダビデは王子ヨナタンを紹介され、二人はすぐに深い友情で結ばれました。ヨナタンはダビデを血を分けた兄弟のように愛し、

4 自分の上着、よろいかぶと、剣、弓、帯を与えました。王はダビデをエルサレムにとどめ、もはや家に帰そうとはしませんでした。

5 ダビデは王の特別補佐官として、いつも任務を成功させたので、とうとう軍の指揮官に任命されました。この人事は、軍部からも民衆からも喜ばれました。

6 ところで、ダビデがゴリヤテを倒し、勝利を収めたイスラエル軍が意気揚々と引き揚げて来た時、あることが起きたのです。あらゆる町々から沿道にくり出した女たちが、サウル王を歓迎し、タンバリンやシンバルを鳴らして、歌いながら喜び踊りました。

7 女たちが歌ったのはこんな歌でした。「サウルは千人を打ち、ダビデは一万人を打った。」

8 これを聞いて、王は非常に腹を立てました。「何だと。ダビデは一万人で、この私は千人に過ぎないのか。まさか、あいつを王にまつり上げる気ではないだろうな。」

9 この時から、王の目は、ねたみを帯びてダビデに注がれるようになりました。

10 翌日から、神からの災いの霊がサウル王を襲うようになり、彼は錯乱状態に陥りました。そんな王の心を静めようと、ダビデはいつものとおり竪琴を奏でました。ところが王は手に持っていた槍を、

11-12 いきなりダビデめがけて投げつけました。ダビデを壁に突き刺そうと思ったのです。しかし、さっと身をかわしたダビデは難を逃れました。一度ならず二度もそんなことがあったのです。それほど王はダビデを恐れ、激しい嫉妬に駆られていました。これもみな、主がサウル王を離れて、ダビデとともにいたからです。

13 王はダビデを恐れ、自分から遠ざけることにし、職務も千人隊の長にまで格下げしました。しかし王の懸念をよそに、ダビデはますます人々の注目を集めるようになっていきました。

14 ダビデはその行く所どこででも勝利を収めました。主がともにいたからです。

15-16 サウル王はますますダビデを恐れるようになりました。イスラエルとユダの人々はみな、ダビデを支持しました。ダビデが民の側に立っていたからです。

17 ある日、王はダビデを呼んで言いました。「私はおまえに、長女のメラブを嫁として与えてもいいと思っている。そのためにまず、主の戦いを勇敢に戦い、真の勇士である証拠を見せてくれ。」王は内心、「ダビデをペリシテ人との戦いに行かせ、敵の手で殺してしまおう。自分の手を汚すまでもない」と考えたのです。

18 ダビデは答えました。「私のような者が王家の婿になるなど考えられません。私の父の家系は取るに足りません。」

19 ところが、いよいよ結婚という段になって、王は娘メラブをダビデではなく、メホラ人のアデリエルと結婚させてしまいました。

20 そうこうするうち、別の娘ミカルがダビデを恋するようになったのです。それを知って喜んだのはサウル王でした。

21 「あいつをペリシテ人の手で殺す機会が、また巡って来た」とほくそ笑み、さっそくダビデを呼びつけると、「今度こそ婿になってくれ。末の娘をやろう」と言いました。

22 その一方でサウル王は家臣たちに、ダビデにこう勧めるようにひそかに命じたのです。「王様はあなたを大そうお気に入りですよ。私たちもみな、あなたを慕っております。お申し出を受けて、婿になられたらいいではありませんか。」

23 ダビデは答えました。「私のように名もない家の貧しい者は、逆立ちしたって、王女を妻に迎えられるほどの仕度金は用意できません。」

24 家臣たちがこのことを報告すると、

25 王は答えました。「ダビデに伝えてくれ。私が望んでおる仕度金は、ペリシテ人を百人打って来ることだ。敵に復讐してくれることこそ、私の望みだと。」しかし、王の本心は、ペリシテ人との戦いでダビデが戦死することだったのです。

26 ダビデはこの申し出を喜びました。そこで、期限が来る前に、

27 部下を率いて出陣し、ペリシテ人二百人を打ち殺して、その包皮を王に差し出したのです。これで王は、ダビデにミカルを与えないわけにはいかなくなりました。

28 王は、主がダビデとともにいること、また、ダビデがどれほど民の信望を集めているかを思い知らされ、

29 ますますダビデを恐れるようになりました。それで、以前にも増して激しくダビデを憎むようになっていったのです。

30 ペリシテ軍の攻撃を受けるたびに、ダビデはなみいるサウル王の将校たちをしり目に、はなばなしい戦果を上げました。そのため、ダビデの名声は国中に広がっていきました。

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サムエル記Ⅰ

サムエル記Ⅰ 19

サウルから逃げるダビデ

1 ついにサウル王は、側近や息子のヨナタンにまで、ダビデ殺害をそそのかすようになりました。しかしヨナタンは、ダビデと深い友情で結ばれていたので、

2 父のたくらみをダビデに知らせました。「明日の朝、野に隠れ場所を見つけて潜んでいてほしい。

3 父をそこまで連れ出すから。そこであなたのことについて話をする。何かわかったらすぐに知らせる。」

4 翌朝、ヨナタンは父と話し合い、ダビデの正しさを力説して、敵視しないでほしいと頼みました。「ダビデは一つも害をもたらしたりしていません。それどころか、いつも精一杯、助けてくれました。

5 彼が命がけでゴリヤテを倒した時のことを、お忘れになったのですか。その結果、主がイスラエルに大勝利をもたらしてくださったのではありませんか。あの時、父上はほんとうにお喜びになりました。それなのに、なぜ今になって罪もない者を殺害しようとなさるのです。そんなことをする理由など少しも見当たりません。」

6 サウル王はうなずき、「主が生きておられる限り、彼を殺すことはない」と誓いました。

7 あとでヨナタンはダビデを呼び、いきさつを話しました。そしてダビデを王のところへ連れて行き、すべてが元どおりに収まりました。

8 まもなくして戦いが始まりましたが、ダビデは兵を率いてペリシテ人と戦い、多数の敵兵を討ち取りました。ペリシテ軍は軍旗を巻いて遁走したのです。

9-10 ところが、ある日、サウル王は家で腰を下ろして、ダビデの奏でる竪琴に耳を傾けていました。とその時、急に、神からの災いの霊が王を襲い、あっという間もなく、王は手にしていた槍をダビデに投げつけ、刺し殺そうとしたのです。ダビデはとっさに身をかわして助かりましたが、夜になるのを待って逃げ出しました。槍は壁の横木に突き刺さったままでした。

11 その晩、王は兵をやってダビデの家を見張らせました。朝になって出て来るところをねらって、彼を殺そうとしたのです。ミカルは夫ダビデに危険を知らせました。「逃げるなら、今夜のうちですわ。朝になったら殺されてしまいます。」

12 ミカルはダビデを助けたい一心で、彼を窓からつり降ろして逃がしました。

13 そして、代わりに偶像を寝床に入れ、すっぽりと毛布をかけました。頭はやぎの毛で編んだものを枕にのせました。

14 そこへ、ダビデを捕らえて王のもとへ連行しようと、兵士たちが踏み込んで来ました。ミカルは、ダビデは病気でベッドから動かせないと告げたのですが、

15 王は、ベッドごとでも連れて来るように命じました。そのまま殺してしまうつもりだったのです。

16 しかし、運び出そうとした時、偶像であることがわかってしまいました。

17 サウルはミカルにただしました。「なぜ、私をだまして彼を逃がしたのか。」

「しかたがありません。そうしなければ殺すと、あの人に脅されたのです。」

18 ダビデはラマまで逃げ延び、サムエルに会って、サウル王の仕打ちを洗いざらい訴えました。サムエルはダビデを連れてナヨテに行き、そこでいっしょに住むことにしました。

19 ところが、ダビデがラマのナヨテにいるという報告を受けると、

20 王はダビデを捕らえようと兵を差し向けました。しかし、一行がナヨテに来て、預言をしていたサムエルはじめ預言者の一団を見た時、なんと神の霊がサウルの兵士たちにも下り、預言を始めたのです。

21 この知らせに、王はほかの兵を遣わしましたが、彼らもまた預言に加わったのです。同じことが三度も起こりました。

22 そこで、今度は王自身がラマへ出向き、セクにある大きな井戸まで来ると、「サムエルとダビデはどこにいるか」と尋ねました。尋ねられた人は、「ナヨテにいらっしゃるそうですよ」と答えました。

23 ところが、ナヨテへ向かう途中のこと、神の霊が下り、王も預言を始めました。

24 王は着物を脱ぎ、一昼夜、裸のまま地面に横たわって、サムエルの預言者たちとともに預言していました。家臣たちは、ただもう目をみはるばかりでした。思わず、「サウル王も預言者の一人なのか」と口走る者もいました。

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