Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 10

アモン人との戦い

1 しばらくして、アモン人の王が死に、その子ハヌンが王位につきました。

2 ダビデは、「彼の父ナハシュには、常々、誠実を尽くしてもらった。私も新しい王に敬意を表そう」と、父親を亡くしたハヌンに悔やみを述べるため、使者を遣わしました。

3 ところがハヌンの家臣たちは、主君にこう取り次ぎました。「この使いの者どもは、亡き父君を敬ってここに来たのではありません。ダビデの魂胆は見えすいております。この町を攻める手始めに、まずスパイを送り込んできたのです。」

4 そこでハヌンは、使者を取り押さえ、ひげを半分そり落とし、服を腰のあたりから切り取り、下半身を裸のままで追い返したのです。

5 それを知ったダビデは、ひげが伸びそろうまでエリコにとどまるよう彼らに命じました。ひげをそり落とされたことを、彼らが深く恥じていたからです。

6 アモンの人々は、このことがダビデを本気で怒らせたことを知ると直ちに、レホブとツォバの地からシリヤ(アラム)の歩兵二万、マアカ王から兵士一千、トブの地から兵士一万二千を、それぞれ雇い入れました。

7-8 ダビデも黙ってはいません。ヨアブをはじめ全イスラエル軍を差し向けて、彼らを攻撃しました。アモン人は町の門の守備に当たり、ツォバとレホブから来たシリヤ人、およびトブとマアカからの傭兵が野に出て戦いました。

9 ヨアブはふた手に分かれて戦うために、精兵をよりすぐって自らの配下に置き、野に出てシリヤ人と戦う備えを固めました。

10 残りの手勢は兄弟アビシャイの指揮に任せて、町の攻撃に向かわせました。

11 ヨアブはアビシャイに言いました。「もしシリヤ人を向こうに回して、われわれだけで戦えないようなら助けに来てくれ。反対に、アモン人がおまえらの手に負えないようなら、こちらが加勢しよう。

12 勇気を出せ! われわれの肩には同胞のいのちと、神の町々の安全がかかっている。がんばるのだ。必ず主のお心のとおりになるのだから。」

13 ヨアブの部隊が攻撃をしかけると、シリヤ軍はくずれ始めました。

14 彼らが敗走するのを見て、アモン人も逃げ出し、町にこもってしまいました。そこでヨアブは攻撃を中止し、エルサレムに引き揚げました。

15-16 シリヤ人は、このままではとてもイスラエル軍にかなわないとわかり、再び兵力の結集を計りました。そしてハダデエゼルは、ユーフラテス川の向こうから呼び集めたシリヤ人を味方に引き入れたのです。彼らの大軍は、ハダデエゼル軍の将軍ショバクに率いられて、ヘラムに着きました。

17 ダビデはこの報告を受けると、自らイスラエル軍を率いてヘラムに向かいました。攻撃をしかけてきたシリヤ軍は、

18 再び敗走するはめになってしまいました。この戦いで、シリヤ軍は戦車兵七百と騎兵四万を失い、将軍ショバクも戦死しました。

19 ハダデエゼルと同盟を結んだ王たちは連合軍の敗北を見てダビデに降伏し、その臣下となりました。これにこりたシリヤ人は、二度とアモン人を助けようとはしませんでした。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/10-b925cf4b2b03712a9db831c220150dda.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 11

ダビデとバテ・シェバ

1 翌年の春になると、再び戦いが始まり、ダビデはヨアブの率いるイスラエル軍を送り込んで、アモン人壊滅を計りました。イスラエル軍はたちまちラバの町を包囲しましたが、ダビデ自身はエルサレムにとどまっていました。

2 ある夕暮れのことです。昼寝から起きたダビデは、宮殿の屋上を散歩していました。見ると、水浴びをしている美しい女性が目に留まりました。

3 さっそく人を送り、その女のことを探らせました。そして、エリアムの娘でウリヤの妻バテ・シェバであることを知ったのです。

4 彼女は、月経後の汚れのきよめをしていたところでした。ダビデは女を召し入れ、忍んで来た彼女と床を共にしたのです。こうして彼女は家に帰りました。

5 それから、自分が妊娠したことを知ると、人をやってダビデに知らせました。

6 さあ、何とかしなければなりません。ダビデは急いでヨアブに伝令を送り、「ヘテ人ウリヤを帰還させよ」と命じました。

7 戦場から戻って来たウリヤに、ダビデはヨアブや兵士の様子、戦況などを尋ねました。

8 それから、「家へ帰ってゆっくり骨休めをしなさい」と勧めたのです。贈り物も持たせました。

9 ところが、ウリヤは自宅に戻らず、王の家来たちとともに、宮殿の門のそばで夜を過ごしたのです。

10 ダビデはそれを知ると、さっそくウリヤを呼んで尋ねました。「いったい、どうしたのだ。長く家から離れていたというのに、なぜ昨夜は妻のもとへ戻らなかったのだ。」

11 「恐れながら王様。神の箱も、ヨアブ様も、その配下の者たちもみな、戦場で野宿しています。それなのに、どうして私だけが家に帰って飲み食いし、妻と寝たりできるでしょう。誓って申し上げます。そんな罪深いことをする気は毛頭ありません。」

12 「よかろう。では今夜もここにとどまるがよい。明日は軍務に戻ってもらう。」

こうして、ウリヤは宮殿から離れませんでした。

13 翌日、ダビデは彼を食事に招き、酒を勧めて酔わせました。しかし、ウリヤは自宅に帰ろうとはせず、その夜もまた、宮殿の門のわきで寝たのです。

14 翌朝、ついにダビデは戦場のヨアブあてに手紙をしたため、それをウリヤに持たせました。

15 その書面で、「ウリヤを激戦地の最前線に送り、彼だけ残して引き揚げて戦死させるようにせよ」と指示したのです。

16 ヨアブはウリヤを、包囲中の町の最前線に送り込みました。町を守っていたのは、敵の中でもえり抜きの兵だと知っていたのです。

17 ウリヤは数人のイスラエル兵士とともに戦死しました。

18 ヨアブは戦況報告をダビデに送る際、

19-21 使いの者にこう言い含めました。「もし王がお怒りになって、『なぜ、そんなに町に近づいたのだ。城壁の上から敵が射かけてくるのを考えに入れなかったのか。アビメレクはテベツで、城壁の上から女が投げ落としたひき臼でいのちを落としたのだ』とおっしゃったなら、『ウリヤも戦死いたしました』と申し上げるがよい。」

22 使者はエルサレムに着くと、ダビデに報告しました。

23 「敵は攻撃をしかけてまいりました。こちらも応戦し、敵を町の門のところまで追い詰めました時、

24 城壁の上から、矢を射かけてまいったのです。そのため、味方の数人が殺され、ヘテ人ウリヤも戦死いたしました。」

25 それを聞いてダビデは言いました。「よし、わかった。ヨアブには、落胆するなと伝えてくれ。剣は両刃の剣だ!今度こそ慎重に攻めて町を占領せよ。成功を祈ると伝えてくれ。」

26 バテ・シェバは夫が戦死したことを知り、喪に服しました。

27 喪が明けると、ダビデは彼女を妻として宮殿に迎え、彼女は男の子をもうけました。しかし、ダビデがしたことは主の御心にかないませんでした。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/11-5533b4771a2f227aced00cc6df9b56c3.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 12

預言者ナタンの叱責

1-2 主は預言者ナタンを遣わし、ダビデにこんな話を聞かせました。「ある町に二人の人がいました。一人は大金持ちで、羊ややぎをたくさん持っていました。

3 もう一人はとても貧乏で、財産といえば、苦労してやっと手に入れた雌の子羊一頭だけでした。彼はまるで自分の娘のように、子羊をしっかり腕に抱いて寝ました。また、彼の子どもたちも子羊を大そうかわいがり、食事のときは自分の皿やコップに口をつけさせるほどでした。

4 そんなある日、金持ちのほうに一人の客がありました。ところが、彼は客をもてなすのに、自分の群れの子羊を使うのを惜しみ、貧しい男の雌の子羊を取り上げ、それを焼いてふるまったのです。」

5 ここまで聞くと、ダビデはかんかんになって怒りだし、「生ける主に誓って言うが、そんなことをする者は死刑だ。

6 償いとして、貧しい男に子羊四頭を返さなければならない。盗んだだけでなく、その男にはあわれみの心というものがないのだから。」

7 すると、ナタンはダビデに言いました。「それはあなたです。あなたこそ、その大金持ちの男なのです! イスラエルの神、主はこう仰せられます。『わたしはあなたをイスラエルの王とし、サウルの迫害から救い出した。

8 そして、サウルの宮殿や妻たち、イスラエルとユダの王国も与えてやったではないか。なお足りないと言うなら、もっともっと多くのものを与えただろう。

9 それなのに、どうしてわたしの律法をないがしろにして、このような恐ろしい罪を犯したのか。あなたはウリヤを殺し、その妻を奪ったのだ。

10 これからは殺人の恐怖が常にあなたの家を脅かす。ウリヤの妻を奪って、わたしを侮ったからだ。

11 はっきり言おう。あなたのしたことの報いで、あなたは家族の者から背かれる。また、妻たちはほかの者に取られる。彼は白昼公然と、彼女たちと寝るだろう。

12 あなたは人目を忍んで事を行ったが、わたしは全イスラエルの目の前で、あなたをそのような目に会わせよう。』」

13 「私は主に対して罪を犯しました」と、ダビデはナタンに告白しました。

ナタンは答えました。「そのとおりです。しかし、主はその罪を赦してくださり、それによって死ぬことはありません。

14 ただ、主に敵する者たちに主を侮る機会を与えたので、生まれてくるあなたの子どもは必ず死にます。」

15 こうして、ナタンは戻って行きました。

主は、バテ・シェバが産んだ子を重い病気にかからせました。

16 ダビデはその子が助かるように願い求め、断食して、一晩中、主の前で地にひれ伏していました。

17 長老たちはダビデに、身を起こしていっしょに食事をとるようしきりに勧めましたが、聞こうとしませんでした。

18 七日目に、とうとうその子は息を引き取りました。家臣たちは、そのことをダビデに告げるのをためらいました。「王はお子様が病気になったことで、あんなにお心を乱された。そのうえ亡くなったと聞いたら、いったいどうなさるだろう」と心配したのです。

19 しかしダビデは、ひそひそ話し合っている彼らの様子から、何が起こったかを悟りました。

「子どもは死んだのか。」

「はい、お亡くなりになりました。」

20 すると、ダビデは身を起こし、体を洗い、髪をとかし、服を着替え、主の宮に入って礼拝したのです。それから宮殿に帰って食事をしました。

21 家臣たちは尋ねました。「王のなさりようはどうも解せません。お子様が生きておいでの間は、泣いて断食までなさいましたのに、亡くなられたとたん、嘆きもせず、食事までなさるとは……。」

22 「子どもが生きている間は、断食をして泣いた。『もしかしたら、主があわれんで快復させてくださるかもしれない』と思ったからだ。

23 しかし死んでしまった今、断食して何になる。もう、あの子を呼び戻せはしない。私があの子のところへ行くことはできても、あの子はここへは戻って来ないのだ。」

24 ダビデは妻バテ・シェバを慰めました。彼女は再びみごもり、やがて男の子を産み、その子はソロモンと名づけられました。その子を愛した主は、

25 預言者ナタンを遣わして祝福を贈りました。ダビデは主の気持ちに応えて、その子をエディデヤ〔「主に愛された者」の意〕という愛称で呼ぶことにしました。

26-27 そうこうするうち、ヨアブの率いるイスラエル軍はアモン人の首都ラバを完全に包囲しました。ヨアブはダビデに伝令を送りました。「ラバとその美しい港は、もうわれわれのものです。

28 どうか、残りの部隊を率いて来て、総仕上げをなさってください。この勝利の栄冠を、私ではなく、あなたがお受けになりますように。」

29-30 そこでダビデは、残りの部隊を引き連れてラバへ乗り込み、町を占領しました。目をみはるばかりのおびただしい戦利品が、エルサレムに運び込まれました。ダビデはラバの王の冠を取り、自らの頭上に戴きました。冠は宝玉をちりばめた金製のもので、非常に高価なものでした。

31 ダビデはまた、町の住民を奴隷として連れて来て、のこぎり、つるはし、斧などを使う仕事につかせ、れんが造りをさせました。ラバだけでなく、アモン人の町すべてを同様に扱いました。こうして、ダビデとイスラエル軍はエルサレムに帰還しました。

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 13

アムノンとタマル

1 ダビデの息子の一人、王子アブシャロムには、タマルという美しい妹がいました。ところが、タマルの異母兄に当たる王子アムノンが、彼女に深く思いを寄せるようになったのです。

2 アムノンはタマルへの恋に苦しみ、煩うまでになってしまいました。未婚の娘と若者とは厳格に隔てられていて、話しかける機会さえなかったのです。

3 ところが、アムノンには悪賢い友人が一人いました。ダビデの兄シムアの息子で、いとこに当たるヨナダブです。

4 ある日、ヨナダブはアムノンに尋ねました。「何か心配事でもあるのか。どうして、王子ともあろう者が、日に日にそれほどやつれていくのだ。」

アムノンは打ち明けました。「ぼくは妹のタマルを愛してしまった。」

5 「なんだ、そうか。では、よい方法を教えてやろう。床に戻って、仮病を使うのだ。父君のダビデ王が見舞いに来られたら、タマルをよこして食事を作らせてくださいと頼むといい。タマルのこしらえたものを食べればきっとよくなる、と申し上げるのだ。」ヨナダブはこう入れ知恵したのです。

6 アムノンは言われたとおりにしました。王が見舞いに来ると、「妹タマルをよこして、食事を用意させてください」とだけ願い出ました。

7 ダビデはうなずき、タマルに、「アムノンの住まいへ行き、何か手料理をごちそうしてやってくれ」と頼んだのです。

8 タマルはアムノンの寝室を訪れました。アムノンは、タマルが粉をこねてパンを作る姿をじっと見つめていました。タマルはアムノンのために、とびきりおいしいパンを焼き上げました。

9 ところが、それをお盆に載せてアムノンの前に差し出しても、口に入れようとしません。アムノンは召使たちに、「みんな、下がってくれ」と命じたので、みな部屋から出て行きました。

10 すると、彼はタマルに言ったのです。「もう一度、そのパンをこっちに運んで来て、食べさせてくれないか。」タマルは言われるままに、そばへ行きました。

11 ところが、目の前に近づいたタマルに、アムノンは、「さあ、タマル。おまえはぼくのものだ」と捕まえたのです。

12 彼女はびっくりして叫びました。「やめてください、お兄様! こんなばかなこと、いけないわ。イスラエルでは、それがどれほど重い罪かご存じでしょう。

13 こんな辱しめを受けたら、私、どこにも顔出しできません。お兄様だって、国中の笑い者になります。どうしてもというのなら、今すぐにでも、お父様に申し出てください。きっと二人の結婚を許してくださるわ。」

14 しかし、アムノンはそれを聞こうともせず、力ずくでタマルを自分のものにしてしまったのです。

15 それから急に、彼はタマルに対して憎悪を抱くようになりました。それは、彼女に先に抱いた愛よりも激しいものでした。「さっさと出て行け!」アムノンはどなりました。

16 タマルは必死に言いました。「いけません! 今、私を追い出したりなさったら、たった今なさったことより、もっと大きな罪を犯すことになります。」

しかし、アムノンは聞こうとはしませんでした。

17-18 召使を呼ぶと、「この女を追い出し、戸を閉めてくれ」と命じ、タマルを放り出しました。当時、未婚の王女は、みな袖のある長服を着ていましたが、

19 彼女はその服を裂き、頭に灰をかぶり、手を頭に置いて、泣きながら帰って行きました。

20 タマルの実の兄アブシャロムは、妹に問いただしました。「アムノンがおまえを辱しめたというのはほんとうか。落ち着きなさい。身内でのことだから、何も心配することはない。」それでタマルは、兄アブシャロムの住まいでひっそり暮らしていました。

21-22 王はこの一件を耳にし、烈火のごとく怒りました。アブシャロムは、このことについてはアムノンに何も言いませんでした。しかし心の中では、妹を辱しめたアムノンに、はらわたが煮えくり返るような思いでした。

アムノン殺害

23-24 それから二年が過ぎ、アブシャロムの羊の毛の刈り取りがエフライムのバアル・ハツォルで行われた時、彼は父と兄弟全員を、刈り取りの祝いに招くことにしました。

25 王は答えました。「いや、アブシャロム。われわれがみな押しかけたら、おまえに負担がかかりすぎる。」

アブシャロムがどんなに勧めても、ダビデは、「気持ちだけをありがたく受け取る」と言って断りました。

26 「父上においでいただけないのでしたら、名代として、アムノンをよこしてくださいませんか。」

「なに、アムノンだと? またどうして、あれを。」

27 しかし、アブシャロムが熱心に頼むので、ついにダビデも承知し、アムノンも含めて、王子全員が顔をそろえることになりました。

28 アブシャロムは従者たちに命じました。「アムノンが酔うまで待つのだ。私が合図したら、あいつを殺せ。恐れるな。私の命令だから、勇気を出して、やり遂げるのだ!」

29-30 こうしてアムノンは、アブシャロムの従者の手で殺されたのです。驚いたのは、ほかの王子たちです。それぞれらばに飛び乗って逃げ帰りました。

彼らがまだエルサレムへ帰り着かないうちに、この知らせがダビデのもとに届きました。「アブシャロム様が、王子たちを皆殺しになさいました。生き残った方は一人もありません!」

31 王はびっくりして立ち上がり、服を引き裂き、地にひれ伏すようにその場に倒れ込みました。家臣たちも、恐れと悲しみに包まれて服を裂きました。

32-33 しかしそこへ、王の兄シムアの子ヨナダブが駆けつけて、真相を伝えました。「違います。王子たちがみな殺されたのではありません! 殺されたのはアムノン王子だけです。アブシャロム様は、タマル様のことがあった日から、ずっとこの機会をねらっていたのでしょう。王子たちみなではなく、アムノン王子だけです。」

34 一方、アブシャロムは逃げました。エルサレムの城壁の上で見張っていた兵たちは、山沿いの道から町へ向かって来る一群を見つけました。

35 ヨナダブは王に言いました。「ごらんください! 王子たちがこちらに向かっておいでになります。今、私が申し上げたとおりです。」

36 彼らは到着するや、声を上げて泣きました。王も家臣も共に泣きました。

37-39 一方アブシャロムは、アミフデの子であるゲシュルの王タルマイのもとに逃げ、そこに三年間とどまっていました。ダビデは、アムノンの死についてしばらく嘆き悲しんでいましたが、ようやくあきらめがついたのか、アブシャロムに会いたいと思うようになりました。

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 14

アブシャロムを赦すダビデ

1 将軍ヨアブは、アブシャロムに会いたがっている王の気持ちを察しました。

2-3 そこで、知恵者として評判の高いテコアの女を呼び寄せ、王に会ってもらいたいと頼みました。そして、どういうふうに話せばいいかを指示したのです。「王の前で喪中の女を装うのだ。喪服をまとい、髪を振り乱し、長いこと深い悲しみに打ちひしがれてきたふりをするのだ。」

4 女は王の前に出ると、床にひれ伏して哀願しました。

「王様! どうぞ、お助けください!」

5-6 「いったい、どうしたのだ。」

「私は夫を亡くした女でございます。息子が二人おりましたが、それが野でけんかをしたのです。だれも仲裁に入ってくれませんで、片方が殺されてしまいました。

7 すると、親類中の者が寄ってたかって、残った息子を引き渡せと申すのです。兄弟を殺したような者は生かしておけないと言います。でも、そんなことになれば跡継ぎが絶えてしまい、夫の名も、この地上から消え去ってしまいます。」

8 「わかった。任せておきなさい。だれもあなたの息子に手出しできないように取り計らってやろう。」

9 「ありがとうございます、王様。こうしてお助けくださったことで、もし王様が責めをお受けになるようなことがありましたら、みな私の責任です。」

10 「そんな心配はいらない。あれこれ言う者がいれば私のもとへ連れて来なさい。二度とあなたに文句が言えないようにさせよう。」

11 「どうか、神にかけてお誓いください。息子には指一本ふれさせはしない、と。これ以上、血を見るのはたまりません。」

「神にかけて誓おう。あなたの息子の髪の毛一本も損なわれはしないと。」

12 「どうぞ、もう一つだけ、お願いを聞いてください。」

「かまわぬ。言ってみなさい。」

13 「王様、どうして私にお約束くださったことを、神の民全部に当てはめなさらないのですか。ただ今のようなお裁きによるなら、王様は罪ある者にされるのです。と申し上げるのは、追放されたご子息のお戻りを拒んでおられるからです。

14 私どもはみな、いつかは死ななければなりません。人のいのちは地面にこぼれた水のようなもので、二度と集めることはできません。もし王様が、追放中のご子息をお迎えになる道を講じなさるなら、神様の末長い祝福がありましょう。

15-16 このはしためが、息子のことでお願いに上がったのも、私と息子のいのちが脅かされていたからです。私は、『きっと王様は訴えを聞き入れ、私どもをイスラエルから消し去ろうとしている者の手から助け出してくださるに違いない。

17 そして安らかな生活を取り戻させてくださるだろう』と思ったのです。王様は神の使いのようなお方で、善悪を正しくお裁きになれると存じています。どうぞ、あなたの神、主があなたとともにおられますように。」

18 「一つだけ尋ねるが、よいか?」

「どうぞ、おっしゃってください。」

19 「おまえを差し向けたのはヨアブではないか。」

「王様。こうなれば、隠しようがありません。仰せのとおり、ヨアブ様が私を遣わし、どう申し上げればよいかまで指示してくださいました。

20 何とか事態をよくしようと、あの方の取り計らわれたことです。あなたは神の使いのように賢くあられ、また、この地上のすべてのことをご存じでいらっしゃいます。」

21 そこで王はヨアブを呼び寄せ、「わかった。行って、アブシャロムを連れ戻して来なさい」と命じたのです。

22 ヨアブは王の前にひれ伏し、祝福のことばを述べました。「今ようやく、あなたが私に情けをかけていてくださるとわかりました。この願いをお聞き入れくださったからです。」

23 ヨアブはゲシュルの地に駆けつけ、アブシャロムをエルサレムに連れ戻しました。

24 王は、「アブシャロムを自分の住まいに連れて行きなさい。ここに来させてはならない。私に会うことはならない」と申し渡しました。

25 さて、イスラエル中を探しても、アブシャロムほど男らしく顔立ちのよい人物はいませんでした。また彼ほど、そのことでほめそやされた者もいませんでした。

26 彼は年に一回、髪を刈りました。髪の重さが二百シェケル(約二・五キログラム)以上にもなり、そのままでは歩くのさえ難しかったからです。

27 彼には息子三人と娘一人がいて、娘の名はタマルといい、たいへん美しい少女でした。

28 アブシャロムは、二年間エルサレムにいながら、王には一度も会えませんでした。

29 そこで、ヨアブに仲立ちを頼もうとしましたが、ヨアブは来ようとしません。二度も呼びにやりましたが、それでも来ません。

30 しびれをきらしたアブシャロムは家来に、「私の畑と隣り合わせのヨアブの畑へ行き、大麦に火をつけろ」と命じました。彼らはそのとおりにしました。

31 驚いたのはヨアブです。飛んで来て、「なぜ、あなたの家来たちは、うちの畑を焼いたりするのです」と抗議しました。

32 アブシャロムは答えました。「実は頼みたいことがあるのだ。父上に尋ねてくれないか。会う気がないなら、どうして私をゲシュルから呼び戻したのか、と。こんなことなら、向こうにいたほうがましだった。とにかく、父上にお会いしたい。そのうえで、もし父上から罪を問われるなら、殺される覚悟はできている。」

33 ヨアブは、アブシャロムのことばを王に伝えました。そのかいあって、ついに王もアブシャロムを呼び寄せました。アブシャロムは王の前に出ると、ひれ伏しました。その彼に、ダビデは口づけをしました。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/14-3201d3b7e0e7835014bdc6bed1c261cc.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 15

アブシャロムの謀反

1 このあとアブシャロムは、りっぱな戦車とそれを引く馬を買い入れました。さらに、自分を先導する五十人の馬丁を雇いました。

2 彼は、毎朝早く起きて町の門へ出かけました。王のところへ訴えを持ち込む者を見つけると、そのつど呼び止めて、さも関心があるように訴えを聞くのです。

3 だれに対しても、こんなふうに気をそそるのでした。「この件では、君のほうが正しいようだな。しかし、気の毒だが、王の側には、こういう訴えに耳を貸してくれる者はいないだろう。

4 私が裁判官だったら、訴えのある人はみな、私のところへ来れるし、もちろん、公平な裁判もできるのだが。」

5 アブシャロムはまた、だれか頭を下げてあいさつする者がいると、決してそのままやり過ごさず、素早く手を差し伸べて握りしめました。

6 こうして、アブシャロムは巧みにイスラエル中の人たちの心をとらえていったのです。

7-8 それから四年後、アブシャロムは王に願い出ました。「主にいけにえをささげるため、ヘブロンへ行かせてください。ゲシュルにいた時、『もしエルサレムにお帰しくださるなら、いけにえをささげて感謝します』と誓願を立てていたのです。それを果たしたいのです。」

9 王は、「いいだろう。誓願を果たしに行くがいい」と許可しました。

アブシャロムはヘブロンへ発ちました。

10 ところが、ヘブロン滞在中にイスラエル各地に密使を送り、王への反逆をそそのかしたのです。密書には、こう書かれていました。「ラッパが吹き鳴らされたら、アブシャロムがヘブロンで王になったとご承知ください。」

11 アブシャロムはエルサレムを出る時、客として二百人を招待し、同伴して来ていました。もちろん、彼らはアブシャロムのもくろみなど全く知らなかったのです。

12 アブシャロムは、いけにえをささげている間に、ダビデの顧問の一人で、ギロに住むアヒトフェルを呼び寄せました。アヒトフェルは、増え広がる他の賛同者と同様に、アブシャロムを支持すると表明しました。それで、この謀反は非常に大きなものになりました。

逃げるダビデ

13 エルサレムのダビデ王のもとには、すぐに急使が送られました。「全イスラエルがアブシャロムになびいて、謀反を企てています!」

14 ダビデは即座に命じました。「では、すぐに逃げるのだ。早くしないと手遅れになる。アブシャロムが来る前に町から抜け出せば、われわれもエルサレムの町も助かるだろう。」

15 家臣たちは、「あなたにお従いします。お考えどおりになさってください」と答えました。

16 王とその家族は、すぐに宮殿から出ました。宮殿には、留守番として十人の若いそばめを残しただけでした。

17-18 ダビデは町はずれでひと息つき、その間に、あとに従ってガテからついて来た六百人のガテ人と、ケレテ人、ペレテ人の外国人部隊を、先導役として王の前を進ませるようにしました。

19-20 ところが、だしぬけに、王はガテ人六百人の隊長イタイにこう言ったのです。「どうして、われわれと行動を共にするのだ。部下を連れてエルサレムのあの王のもとにいるほうがよいぞ。君らは亡命中の外国人で、イスラエルには寄留しているだけなのだから。しかも、昨日来たばかりだというではないか。なのに、今日、行く先の定まらぬ放浪の旅に誘い出すには忍びない。部下を連れて戻るがよい。神様の恵みがあるよう祈っている。」

21 「主に誓って申し上げます。また、あなたのおいのちにかけても誓います。あなたが行かれる所どこであろうと、どんなことが起ころうと、命がけでついて行きます。」

22 「わかった。そうまで言うなら、ついて来てくれ」

こうしてイタイは、六百人とその家族を引き連れて進みました。

23 王と従者たちがキデロン川を渡り、荒野へ進んで行くのを見て、町中が深い悲しみに包まれました。

24 レビ人とともに神の契約の箱をかついでいたエブヤタルとツァドクは、全員が通り過ぎるまで、箱を道ばたに下ろしました。

25-26 それから、ダビデの指示に従って、ツァドクは契約の箱を都に戻しました。その時、ダビデはこう言いました。「もし主がよしとされるなら、私をもう一度連れ戻し、神の箱と幕屋を見させてくださるだろう。また、たとえ主から見放されるのであっても、どうか主が最善と思われることをしてくださいますように。」

27 さらに、ツァドクに言いました。「よいか、私に考えがある。あなたの息子アヒマアツとエブヤタルの息子ヨナタンを伴って、急いで都に引き返しなさい。

28 私はヨルダン川の浅瀬で、知らせを待っている。荒野に身を隠す前に、エルサレムの様子を知りたいのだ。」

29 ツァドクとエブヤタルは、神の箱をエルサレムに持ち帰り、そこにとどまりました。

ダビデの友フシャイ

30 ダビデはオリーブ山への道を登りました。頭を覆い、はだしで、泣きながら悲しみを表したのです。ダビデに従う人々も、頭を覆い、泣き声を上げて山を登りました。

31 自分の顧問であったアヒトフェルが、事もあろうにアブシャロムに加担している、という情報を得た時、ダビデは、「主よ。どうか、アヒトフェルがアブシャロムに愚かな助言をするよう導いてください」と祈りました。

32 人々が神を礼拝する場所であるオリーブ山の頂上まで登りきった時、ダビデはアルキ人フシャイに出会いました。彼は服を裂き、頭に土をかぶって、ダビデの到着を心待ちにしていたのです。

33-34 しかし、ダビデはフシャイに言いました。「あなたがいっしょに来てくれても、重荷になるだけなのだ。エルサレムに帰ってアブシャロムに、『私は、これまでお父上の相談役として仕えてまいりました。これからは、あなたにお仕えします』と言ってくれ。そうすれば、アヒトフェルの助言に反対して、それをぶち壊すことができる。

35-36 祭司のツァドクとエブヤタルもエルサレムにいる。私を捕らえようとする計画があったなら、彼らに知らせてくれ。そうすれば、二人の息子たちアヒマアツとヨナタンが、私のもとに、成り行きを知らせてくれることになっている。」

37 それで、ダビデの友フシャイはエルサレムに帰りました。ちょうど同じころ、アブシャロムもエルサレムに着きました。

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 16

ダビデとツィバ

1 ダビデが山の頂上から少し下ったころ、メフィボシェテ家の執事ともいうべきツィバが、ようやく追いつきました。二頭のろばに、パン二百個、干しぶどう百房、ぶどう百房、それにぶどう酒一たるを積んでいます。

2 王は、「いったい何のためだ」と尋ねました。

「ろばはご家族がお乗りになるため、パンと夏のくだものは若いご家来衆に、ぶどう酒は荒野で弱った方々に召し上がっていただくためです。」

3 「メフィボシェテはどこにいる。」

「エルサレムに残っております。あの方は、『今こそ、王になれる。今日こそ、祖父サウルの王国を取り戻す』と申しておりました。」

4 「それがかなったら、メフィボシェテのものを全部、おまえに与えよう。」

「ありがとうございます、王様。心からお礼申し上げます。」

ダビデをのろうシムイ

5 ダビデの一行がバフリムの村を通り過ぎると、一人の男がのろいのことばを浴びせながら出て来ました。男はゲラの息子シムイで、サウル一族の者でした。

6 彼は王と側近、さらに護衛の勇士のだれかれかまわず、石を投げつけました。

7-8 「出て行けっ! この人殺し! 悪党め!」この時とばかり、ダビデをののしります。「よくもサウル王とその家族を殺してくれたな。ざまあ見ろ。罰があたったのだ。王位を盗んだおまえが、今は息子のアブシャロムに王位を奪われた。これが神のおぼしめしというものだ。今度は、おまえが同じ手口で殺されるのだ。」

9 あまりのひどさに、アビシャイが申し出ました。「あの死に犬に、あなたをのろわせておいてよいものでしょうか。あいつの首をはねさせてください。」

10 「ならぬ! 主が彼にのろわせておられるのだ。どうして止められるだろう。

11 実の息子が私を殺そうとしているのだぞ。このベニヤミン人は、のろっているだけではないか。放っておきなさい。主がそうさせておられるのだから。

12 おそらく主は、私が不当な扱いを受けていることをご存じで、それに甘んじる私に、あののろいに代えて祝福を下さるだろう。」

13 一行がなおも進んで行くと、シムイも丘の中腹をダビデと並行して歩き、のろったり、石を投げたり、ちりをばらまいたりしました。

14 王も従者も全員、くたくたに疲れていました。それで一行はしばらく休息することにしました。

アヒトフェルとフシャイの進言

15 その間に、アブシャロムと彼の兵は、エルサレム入城を果たしました。アヒトフェルもいっしょでした。

16 ダビデの友、アルキ人フシャイはエルサレムに戻り、直ちにアブシャロムに謁見を求めて来ると、「王様、ばんざい! 王様、ばんざい!」と叫びました。

17 アブシャロムは尋ねました。「これが、父ダビデに対する態度か。どうして父といっしょに行かなかったのだ。」

18 「私はただ、主とイスラエルの民によって選ばれたお方に仕えたいのです。

19 かつてはお父上でしたが、これからは、あなたにお仕えします。」

20 話が決まると、アブシャロムはアヒトフェルに、「さて、これからどうしたものか」と意見を求めました。

21 アヒトフェルは進言しました。「お父上が宮殿の留守番にと残しておかれた、そばめたちがいます。まず、その女たちを訪ねて、いっしょに寝られるのがよろしい。それくらい父君を侮辱すれば、全国民はもう、あなたと父君の仲は致命的で、和解の余地はないと察するでしょう。そうすれば、いっそう民はあなたのもとに一致団結します。」

22 そこで、宮殿の屋上に、だれの目にもそれとわかる天幕(テント)が張られました。アブシャロムはそこへ入って、父のそばめたちと寝たのです。

23 アブシャロムは、かつてダビデがそうしたように、アヒトフェルのことばには何でも従いました。アヒトフェルが語ることはすべて、神の口から直接授けられた知恵のように思われたからです。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/16-dbb607e32ab03ac1f5de22068f23344a.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 17

1 「さて」と、アヒトフェルはことばを続けました。「私に一万二千の兵を任せてください。今夜にも、ダビデ王の追跡に出かけましょう。

2-3 疲れて気弱になっているところを襲うのです。彼らは大混乱に陥り、われ先にと逃げ出すことでしょう。その中で王だけを殺します。あとの者たちは生かしておいて、あなたのもとに連れてまいります。」

4 アブシャロムとイスラエルの全長老は、その計画に賛成しました。

5 ところが、アブシャロムは、「アルキ人フシャイの意見も聞いてみよう」と言いだしたのです。

6 フシャイが姿を見せるとアブシャロムは、一応アヒトフェルの考えを伝えたあとで、こう尋ねました。「おまえの意見はどうか。アヒトフェルの言うとおりにすべきだろうか。もし反対なら、はっきり言ってくれ。」

7 「恐れながら申し上げます。このたびのアヒトフェル殿のお考えには、賛成しかねます。

8 ご承知のように、お父君とその部下たちはりっぱな勇士です。今は、子熊を奪われた母熊のように気が立っておいででしょう。そればかりか、戦いに慣れておられるお父君は、兵卒とともに夜を過ごしたりはなさいますまい。

9 必ず、どこかのほら穴にでも隠れておいでのはずです。もしそのお父君が襲いかかり、こちらの幾人かが切り倒されでもしたら兵が混乱し、口々に『味方がやられたぞ』と叫びだすでしょう。

10 そうなると、どんなに勇敢な者でも、たとえライオンのように強い勇士でも、ひるむでしょう。何しろ、イスラエルの者はみな、お父君が偉大な勇者であり、その兵士たちも武勇にすぐれていることを知っておりますから。

11 むしろ、こうしてはいかがかと考えます。まず、北はダンから南はベエル・シェバに至るまでのイスラエル全国から兵を集め、強力な軍をお作りになることです。その大軍を率いて、自ら出陣なさるのがよろしいかと存じます。

12 そして、お父君を見つけしだい、全軍もろとも一気に滅ぼすのです。一人も生かしておいてはなりません。

13 もしどこかの町へ逃げ込んだら、全軍をその町に差し向け、城壁に綱をかけて近くの谷まで引いて行くよう、お命じなさい。そこには、一かけらの石も残りますまい。」

14 アブシャロムをはじめイスラエル人はみな、「フシャイの意見のほうが、アヒトフェルの考えよりすぐれている」と思いました。実は、これはみな、アブシャロムを痛めつけようという、主の意図によるものでした。実際には、退けられたアヒトフェルの進言のほうが、ずっと上策だったのです。

15 フシャイは祭司のツァドクとエブヤタルに、アヒトフェルの思惑と、対案として出した自分の意見を説明しました。

16 「急げ! ご一行を見つけしだい、今夜はヨルダン川の浅瀬にはとどまらず、直ちに向こう岸へ渡って、荒野へ逃げるようにと勧めてくれ。でなければ、王様も供の者も皆殺しにされるだろう。」

17 ヨナタンとアヒマアツは、エルサレムにいては人目につくので、エン・ロゲルの地に潜んでいました。ダビデ王に伝える情報は、召使の女の手によって二人に届けられる手はずになっていました。

18 ところが一人の少年が、エン・ロゲルからダビデのもとに向かう二人を見つけて、アブシャロムに告げてしまったのです。二人はバフリムまで逃げると、ある人に、裏庭の井戸の中にかくまってもらいました。

19 その人の妻は井戸に布をかぶせ、いかにも日に干しているふうに、麦をばらまいてくれたのです。だれ一人、その下に人が隠れていようとは思いませんでした。

20 アブシャロムの家来たちがその家に来て、「アヒマアツとヨナタンを見なかったか」と尋ねました。女は、「川を渡って行きましたよ」と答えました。追っ手はやっきになって捜し回りましたが、見つけることができないまま、エルサレムに引き揚げました。

21 しばらくして井戸からはい出した二人は、ダビデ王のもとへと急ぎました。彼らは、「さあ、お急ぎください。今夜中にヨルダン川を渡るのです」と勧めました。そして、王を捕らえて殺そうという、アヒトフェルの策略を報告しました。

22 そこで王と供の者はみな、夜のうちにヨルダン川を渡り、夜明けまでには、全員が向こう岸に着きました。

23 一方アヒトフェルは、アブシャロムに進言を退けられたことで、すっかり面目を失い、ろばに乗って郷里へ帰ってしまいました。そして身辺の整理をすると、首をくくって自殺し、彼の父の墓に葬られました。

アブシャロムの死

24 ダビデは、まもなくマハナイムに着きました。その間にアブシャロムはイスラエル全軍を召集し、兵を率いてヨルダン川を渡って来ました。

25 ヨアブに代わる司令官には、アマサが任命されました。アマサはヨアブのまたいとこで、父はイシュマエル人イテラで、母のアビガルは、ヨアブの母ツェルヤの妹ナハシュの娘でした。

26 アブシャロムとイスラエル軍は、ギルアデに陣を敷きました。

27 マハナイムに着いたダビデを温かく迎えたのはアモン人で、ラバ出身のナハシュの息子ショビと、ロ・デバル出身のアミエルの息子マキル、それに、ログリム出身のギルアデ人バルジライでした。

28-29 彼らはダビデ一行のために、寝るためのマット、調理用の土鍋や皿、小麦、大麦、炒り麦、そら豆、レンズ豆、はちみつ、バター、チーズなどを持って来てくれました。彼らは、「荒野をずっと旅して来られて、さぞお疲れでしょう。お腹もすいて、のども渇いておられましょう」とねぎらいました。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/17-1de75c83f46faac19f6591a1cce34c02.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 18

1 さて、ダビデは軍を再編成し、連隊長や中隊長を任命しました。

2 全軍を三隊に分け、ヨアブと、その兄弟で同じくツェルヤの息子アビシャイと、ガテ人イタイにそれぞれ指揮させました。王は自ら陣頭に立ちたいと考えていましたが、家来たちの猛反対に会いました。

3 「それは断じてなりません。私たちが逃げ出そうと、半数が死のうと、彼らにはどうでもよいことなのです。目当てはあなたお一人なのですから。あなたは、私たちの一万人にも当たるお方です。ですから今は、この町にとどまって、必要な時に助けてくださればよろしいのです。」

4 ついに王も、「わかった。言うとおりにしよう」とうなずきました。王は町の門に立って、全軍が出陣するのを見送りました。

5 王はヨアブ、アビシャイ、イタイに、「私に免じて、あの若いアブシャロムには、手ごころを加えてやってくれ」と命じました。全兵士は、王が指揮官たちにそう命じるのを聞いていました。

6 こうして、戦いはエフライムの森で始まったのです。

7 イスラエル軍はダビデ軍に撃退され、ばたばたと兵士が倒れて、その日のうちに、なんと二万人がいのちを落としました。

8 戦いはこの地方一帯に広がり、殺された者よりも、森で行方不明になった者のほうが、はるかに多い有様でした。

9 戦いの最中、アブシャロムは幾人かのダビデ軍兵士に出くわしました。らばに乗って逃げていたアブシャロムは、大きな樫の木の枝が覆いかぶさる下を通り抜ける時、髪を枝に引っかけてしまいました。らばはそのまま行ってしまい、アブシャロムだけが宙づりになったのです。

10 ダビデの兵士の一人がそれを見て、ヨアブに知らせました。

11 ヨアブは、「な、なんだと! やつを見つけて、どうして殺さなかったのだ。たくさんの褒美を取らせ、将校にでも取り立ててやったのに」と言いました。

12 「どれほどご褒美が頂けましょうとも、そんなことはごめんです。私たちはみな、王様が指揮官のお三方に、『私に免じて、若いアブシャロムに手を下すのだけはやめてくれ』とお頼みになったのを聞いたのですから。

13 それに、もし私が命令に背いて王子様を殺したとして、そのことが王様に知れた場合、将軍、あなた様が真っ先に私を非難なさるのではありませんか?」

14 「たわごとを言うな!」こう言い捨てると、ヨアブは三本の槍を取り、宙づりになったまま息も絶え絶えになっていたアブシャロムの心臓を突き刺しました。

15 ヨアブ直属の若いよろい持ち十人も、アブシャロムを取り囲み、とどめを刺しました。

16 ヨアブはラッパを吹き鳴らし、イスラエル軍追撃をやめて、兵を引き揚げました。

17 人々はアブシャロムの死体を森の深い穴に投げ込み、石を山のように積み上げました。イスラエル軍兵士は、てんでに自分たちの天幕に逃げ帰っていました。

18 生前アブシャロムは、「私には跡取りの息子がいないから」と言って、王の谷に自分の記念碑を建てていました。彼が、「アブシャロムの記念碑」と名づけたそれは、今も残っています。

19 ツァドクの子アヒマアツが申し出ました。「この吉報を王様にお伝えする役目を、ぜひとも私に仰せつけください。主が敵アブシャロムの手から救い出してくださったのですから。」

20 「いかんいかん。王子が死んだことなど、良い知らせとは言えない。おまえには、また別の機会に働いてもらおう。」

21 こう言うと、ヨアブは一人のクシュ人に命じました。「さあ、行ってくれ。見たとおりを王様にお知らせするのだ。」男はヨアブに一礼すると、すぐに走りだしました。

22 それでも、アヒマアツはあきらめません。「どうか、私も行かせてください」と、必死にヨアブにすがります。「困ったやつだな。今は、おまえの出る幕ではないのだ。もう何も王にお知らせすることはない。」

23 「わかっております。しかし、とにかく行かせてほしいのです。」

あまりの熱心さに、ついにヨアブも、「まあ、よい。そんなに行きたければ行くがいい」と折れました。するとアヒマアツは、平原を通り抜けて近回りをし、先のクシュ人よりも先に着いたのです。

24 ダビデは町の門のところに腰かけていました。見張りが城壁のてっぺんのやぐらに上ると、ただ一人で駆けて来る男の姿が目に入りました。

25 このことを大声で告げるとダビデは、「一人か。それなら、きっと良い知らせだ」と叫びました。

しかし、第一の使者のあとから少し間をおいて、

26 もう一人の男が走って来るのを、見張りは確認しました。「もう一人、やってまいります。」彼は大声で叫びました。

「うん、それも吉報に違いない。」王はうなずきました。

27 「最初に来るのは、ツァドクの息子アヒマアツのようです。」

「あれはいいやつだ。悪い知らせなど持って来るはずがない。」

28 アヒマアツは、「万事首尾よくまいりました!」と叫ぶと、王の前にひれ伏し、さらにことばを続けました。「主はすばらしいお方です。王様をお守りくださいました。反逆者どもは一網打尽です。」

29 「それで、アブシャロムはどうした。無事なのか。」

「ヨアブ将軍からこの使いをことづかりました際、何か騒ぎがあったようで叫び声を耳にしましたが、くわしいことは知りません。」

30 「よかろう。ここで待っておれ。」アヒマアツは、わきに退きました。

31 するとクシュ人が到着し、「王様、吉報でございます! 本日、主は、すべての謀反人どもからあなたをお救いくださいました」と報告しました。

32 「それで無事なのか!? 息子のアブシャロムは。」

「あなたに敵する者に、あの方の姿はよい見せしめとなりました。」

33 すると王の目から涙があふれ、彼は門の屋上に上り、そこで泣き叫びました。「ああ、アブシャロムよ。わが子、アブシャロム! こんなことなら、私が代わって死ねばよかった。ああ、アブシャロム。ああ、わが子よ!」

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/18-1a3db988c9996fe0721d5d6fd3caa96f.mp3?version_id=83—

Categories
サムエル記Ⅱ

サムエル記Ⅱ 19

1 王がアブシャロムのために悲嘆にくれているという知らせが、やがてヨアブのもとにも届きました。

2 王が息子のために嘆き悲しんでいると知って、その日の勝利の喜びはどこかに消え、みな深い悲しみに包まれました。

3 兵士たちは、まるで負け戦のようにすごすごと町へ引き揚げました。

4 王は手で顔を覆い、「ああ、アブシャロム! ああ、アブシャロム、息子よ、息子よ!」と泣き叫んでいます。

5 ヨアブは王の部屋を訪ね、こう言いました。「私たちは今日、あなたのおいのちをはじめ、王子様や王女様、奥方様や側室方のおいのちをお救い申し上げました。それなのに、あなたは嘆き悲しんでおられるばかりで、まるで私たちが悪いことでもしたかのようです。兵たちは全く恥をかかされました。

6 あなたは、ご自分を憎む者を愛し、ご自分を愛する者を憎んでおられるようです。あなたにとって私たちなど、取るに足りない者なのでしょう。はっきりわかりました。もしアブシャロム様が生き残り、私たちがみな死んでいましたら、さぞかし満足なさったのでしょう。

7 さあ、今、外に出て、兵士に勝利を祝ってやってください。主に誓って申し上げます。そうなさいませんなら、今夜、すべての者があなたから離れていくでしょう。それこそ、ご生涯で最悪の事態となるかもしれません。」

8 そこで王は出て行き、町の門のところに座りました。このことが町中に知れ渡ると、人々は続々と王のもとに集まって来ました。

エルサレムへ戻るダビデ

9-10 一方、イスラエルのそこかしこで、議論がふっとうしていました。「どうして、ダビデ王にお帰りいただく話をしないのか。ダビデ王は、われわれを宿敵ペリシテ人から救い出してくださったお方だ。せっかく王として立てたアブシャロム様は、ダビデ王を追って野に出たが、あえなく戦死なさった。さあ、拝み倒してでもダビデ王に帰っていただき、もう一度、王位についていただこうではないか。」どこでも、こんな話でもちきりでした。

11-12 そこでダビデは、祭司のツァドクとエブヤタルを使いに出し、ユダの長老たちに伝えさせました。「どうして、王の復帰をまだためらうのか。民はすっかりその気でいるのだ。ためらっているのはあなたたちだけだ。もともと、あなたたちは私の兄弟、同族、まさに骨肉そのものではないか。」

13 また、アマサにも伝えました。「甥のあなたに、決して悪いようにはしない。ヨアブを退けても、あなたを司令官にしよう。もしこれが果たせないなら、私は神に打たれてもよい。」

14 そこでアマサは、ユダの指導者たちを説得しました。彼らは説得に応じ、口をそろえて王に、「どうぞ、ご家来衆ともどもお戻りください」と言ってきました。

15 こうして、ダビデはエルサレムへの帰途につき、ヨルダン川にさしかかると、ユダ中の人々が王をギルガルまで出迎えたかのような人出となり、川越えを手伝おうとしました。

16 ベニヤミン人ゲラの子でバフリム出身のシムイも、王を迎えようと駆けつけました。

17 彼のあとには、ベニヤミン人が千人ほどついて来ていましたが、その中に、かつてサウル王に仕えたツィバとその十五人の息子、二十人の召使もいました。彼らは王の来る前にヨルダン川に着こうと、息せき切って来たのです。

18 彼らは王の一家と兵たちを渡し舟に乗せ、一生懸命その川越えを手伝いました。

王が渡り終えた時、シムイは前にひれ伏し、すがるように弁解しました。

19 「王様、何とぞお赦しください。エルサレムから落ち延びられたあなたに、取り返しもつかないほどの悪いことをしてしまいましたが、どうか水に流してください。

20 大それた罪を犯してしまったと、重々反省しております。それで、今日、ヨセフ族の中でも、一番乗りしてあなたをお迎えに上がろうとまいりました。」

21 すると、アビシャイがさえぎりました。「おまえは死なずにすまされないだろう。主に選ばれた王をののしったのだから。」

22 ダビデは止めました。「そんなことばは控えなさい。今日は処罰の日ではなく、祝宴の日だ。私がもう一度、イスラエルの王に返り咲いたのだから。」

23 それからシムイに、「おまえのいのちを取ろうとは思っていない」と誓って言いました。

24-25 さらに、サウルの孫メフィボシェテが、王を迎えようとエルサレムからやって来ました。彼は王がエルサレムを逃れた日以来、足も着物も洗わず、ひげもそらずに過ごしていたのです。王は、「メフィボシェテ、どうしていっしょに来てくれなかったのだ」と尋ねました。

26 「王様、あのツィバが欺いたのでございます。私はツィバに、『王について行きたい。私のろばに鞍を置け』と命じました。ご承知のように、私は足が思うようになりませんもので。

27 ところがツィバは、さも同行を拒んでいるかのように、私のことをあなたに中傷したのです。しかし、王様は神の使いのような方です。お心のままにご処置ください。

28 私も親族もみな、死刑の宣告を受けて当然の身でしたのに、あなたはこのしもべに、あなたの食卓で食事する栄誉をお与えくださいました。このうえ、何を申し上げることがありましょう。」

29 「わかった。ではこうするとしよう。おまえとツィバとで、領地を二分するがよい。」

30 「どうぞ、全部ツィバにやってください。私は、あなたに無事お戻りいただけただけで本望でございます。」

31-32 王とその軍がマハナイムに滞在していた時、一行の面倒をよく見たバルジライが、ヨルダン川を渡る王の案内を務めようと、ログリムからやって来ました。八十歳になろうという老人でしたが、非常に裕福に暮らしていました。

33 王はバルジライに請いました。「いっしょに来て、エルサレムで暮らさないか。ぜひお世話したいと思うのだが。」

34 「とんでもございません。私はもう、あまりにも年をとりすぎております。

35 八十にもなって、余命いくばくもございません。ごちそうやぶどう酒の味もわからなくなっており、余興も楽しくはありません。足手まといになるばかりです。

36 ただ、ごいっしょに川を渡らせていただければと思いまして。これほど名誉なことはありません。

37 そうしたら戻ります。両親の墓のある故郷で死にたいのです。で、ここに控えておりますのがキムハムと申しますが、これにお供をさせていただけませんか。どうか、私の代わりにあなたの面倒を見させてください。」

38 「それはよい。キムハムとやらを連れて行こう。ご恩返しのつもりであなたの言うとおりにしよう。」

39 こうして、全員が王とともにヨルダン川を渡り終えました。ダビデから祝福の口づけを受けると、バルジライは家路につきました。

40 王はキムハムを伴ってギルガルへ向かいました。ユダの大多数とイスラエルの約半数が、ギルガルで王を出迎えました。

41 しかし、イスラエルの人々は、ユダの人々だけが王とその家族の川越えに立ち会ったことに腹を立て、王に抗議したのです。

42 ユダの人々は言い返しました。「どうして、そんなに怒るのだ。王はわれわれの部族のご出身だ。何も文句を言われる筋合いはない。いったい王がどうされたというのだ。特別、われわれを養ってくださったわけでも、贈り物を下さったわけでもない。」

43 しかし、イスラエルの人々は収まりません。「われらイスラエルには十部族もあり、あなたがたの十倍も王に対しては権利を持っているのだ。それなのに、どうして、われらを呼ばなかったのだ。そもそも、今度の王位返り咲きを言いだしたのは、われわれではないか。」こうして言い争いが続き、ユダ側も激しく応酬しました。

—https://api-cdn.youversionapi.com/audio-bible-youversionapi/406/32k/2SA/19-305f5359f557757c6283a30bbaa6244b.mp3?version_id=83—