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ヨシュア記

ヨシュア記 の紹介

の紹介

モーセの死後、国家の指導者はヨシュアに移りました。イスラエルがその地を征服する全期間を通じて、ヨシュアは信仰的にもすぐれた指揮官でした。モアブ平原でヨシュアに訓練されたイスラエル軍がヨルダン川を渡ると、戦いが始まっていきました。大きな三つの戦争があり、それぞれの戦いに勝ったのち、約束の地はイスラエルの各部族に分割されました。使命を終えたヨシュアは、人々を訓戒し、平安のうちに死んでいきました。

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ヨシュア記 1

新しい指導者ヨシュア

1 主に忠実に従ったモーセが死ぬと、彼に仕えていたヌンの子ヨシュアに、神は告げて言いました。

2 「わたしのしもべモーセは死んだ。あなたこそ次のイスラエルを担う新しい指導者だ。さあ、人々を率いてヨルダン川を渡り、約束の地へ行きなさい。

3 モーセに約束したとおりのことをあなたにも約束しよう。『あなたがたの行く所はどこも、イスラエルの領地となる。

4 南はネゲブの砂漠から北はレバノン山脈まで、西は地中海から東はユーフラテス川まで、ヘテ人の全領地も含まれる。』

5 一生の間、あなたに手向かう者などいない。わたしがモーセと共に歩んだように、あなたとも共に歩むからだ。決して見放したり、見捨てたりはしない。

6 ヨシュアよ、雄々しく立ち、勇気を出しなさい。りっぱな指導者になるのだ。わたしが先祖に与えると約束した地を全部、占領しなさい。

7 強く雄々しくあって、勇気を出しなさい。モーセが与えた律法をしっかり守りなさい。そうすれば、あなたは成功する。

8 人々に、律法をいつも思い出させなさい。まずあなたが、昼も夜も律法を忘れず、それを完全に守るよう心がけなさい。模範を示し、どんなことも律法どおりきちんと行わなければならない。成功するもしないも、すべてその一点にかかっている。

9 さあ、勇気を出しなさい。恐れたり迷ったりしてはならない。どこへ行っても、あなたの神であるわたしがついている。」

10-11 ヨシュアは指導者たちを集め、人々にヨルダン川を渡る準備をさせるよう命じました。そして、はっきりと宣言したのです。「三日以内にわれわれはヨルダン川を渡る。神様が与えてくださる地を占領するのだ。」

12-13 それから、ルベン族とガド族、およびマナセの半部族の族長たちを召集し、彼らがモーセと取りかわした協定を思い出させました。その協定とは、こうでした。「主は、ヨルダン川の東側のこの地を、彼らの安住の地としてお与えになった。

14 だから、妻子と家畜はここに落ち着いてよい。ただし、武装した彼らの部隊が、他の部族よりも先にヨルダン川を渡り、川の西側の約束された領地を占領するために手を貸すこと。

15 他の部族がその地を完全に征服するまで、共に行動すること。その任務を果たして初めて、ヨルダン川の東側の地に落ち着くこと。」

16 彼らはそれを受け入れ、ヨシュアを総指揮官として、その命令に従うことを堅く誓いました。

17-18 「私たちは、モーセに従ったと同様、あなたに従います。主がモーセとともにおられたように、あなたにも伴われますように。ご命令に逆らう者はだれであろうと死に値します。どうぞ遠慮なく、断固とした姿勢で臨んでください。」

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ヨシュア記

ヨシュア記 2

偵察者の派遣

1 さてヨシュアは、シティムの野営地から対岸へ二人の偵察者を送り込むことにしました。任務は、特にエリコの様子を調べることでした。二人は娼婦ラハブの家に着きました。そこで夜を過ごす計画だったのです。

2 ところがエリコの王に、「イスラエル人のスパイらしい、怪しい二人組が、今晩、町に忍び込んだ」と通報する者がありました。

3 王はすぐに憲兵隊をラハブの家に差し向け、二人の引き渡しを要求しました。「あいつらはスパイだぞ。イスラエルが送り込んだのだ。どうやってわれわれを攻撃しようか、探りに来たのだ。」

4 しかしラハブは、二人をかくまったまま、憲兵隊長に答えました。「ああ、あの人たちならとっくに帰ったよ。ここにいたんだけどねえ。まさかスパイだなんて、思いもよらなかったわ。

5 町の門が閉まるころ、夕闇にまぎれて町から出て行ったみたい。行き先までは知らないけど、急いで追いかければ捕まえられるかもしれないよ。」

6 ところが実際は、彼女は二人を屋上へ連れて行き、乾燥させるために積み上げた亜麻(麻糸の材料となる植物)の中に隠していたのです。

7 そうとも知らず、憲兵たちは二人を追って、くまなく捜しながらヨルダン川まで下って行きました。その間に、町の門は閉じられました。

8 ラハブは、二人がまだ寝ないうちに屋上に上って来て、彼らに言いました。

9 「あなたたちの神様が、この地をあなたたちのものにしようとしていることは、よくわかっています。みんな怖がっているわ。イスラエルと聞いただけで震え上がるほどよ。

10 だって、イスラエルの人たちがエジプトを出た時、神様が紅海に道をつくられたっていうじゃない。それに、ヨルダン川の東側にいたエモリ人の二人の王様、あのシホン王とオグ王をどんな目に会わせたかということも、みんな聞いてるわ。何でもそこを攻め落とし、住民を皆殺しにしたんですって?

11 そんなことを聞いたら、怖がらないほうがおかしいでしょう。戦う勇気なんか吹っ飛ぶもの。あなたたちの神様はただの神様じゃないわね。きっと、天地を支配なさるお方に違いないわ。

12-13 だから、一つだけお願いを聞いてほしいの。このエリコを占領する時、いのちだけは助けてもらえないかしら。私の両親や兄弟、それにその家族も。そのことを、あなたたちの神様の聖なる御名にかけて誓ってください。あなたたちを助けた私の真心に応えてほしいのです。」

14 彼らはうなずきました。「われわれのことをしゃべらなければ、あなたにも家族にも傷一つ負わせないと誓おう。いのちにかけても、あなたを守る。」

15 ラハブの家は町の城壁の上にあったので、二人の偵察者は、綱で窓からつり降ろしてもらいました。

16 ラハブは二人に注意しました。「山へお逃げなさい。あなたたちを捜してる追っ手が引き返して来るまで、三日間、隠れていればいいわ。それからお帰りなさい。」

17-18 二人は別れぎわにこう言い残しました。「いいかい。この赤いひもを窓に結びつけておきなさい。そして、両親や兄弟など身内の者はみな、この家でいっしょにいなさい。そうでなければ、何が起きても責任はもてない。

19 一歩でもこの家から外へ出たら保証はないが、この家にいるかぎり、一人だって殺されたり傷つけられたりはしないと、はっきり約束しよう。

20 ただし、もしあなたが裏切れば、誓いは無効だ。いいね。」

21 「そのとおりにするわ。」こうしてラハブは、窓に赤いひもを結びつけました。

22 二人の偵察者は山へ逃げ、三日間身を隠しました。追っ手は二人を捜し回りましたが、ついに見つけることができず、すごすごと町へ引き返して行きました。

23 その後、二人は山を下りてヨルダン川を渡り、ヨシュアのもとへ帰って一部始終を報告しました。

24 「主は、あの地を全部、われわれに下さいます。間違いありません。住民はみな、われわれを死ぬほど恐れているのです。」

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ヨシュア記 3

ヨルダン川を渡る

1 翌朝早く、ヨシュアに率いられたイスラエル人は、シティムを出発し、夕方にはヨルダン川の岸に着きました。川を渡る前に、そこに幾日かとどまりました。

2-4 三日目に、指導者たちは野営地を巡って、人々に次のような命令を伝えました。「主の契約の箱(十戒を記した石板が納めてある)をかついでいる祭司たちの姿が見えたら、あとに従いなさい。これから行く所は見知らぬ地だから、祭司が先導するのです。ただし、箱との間は、二千キュビト(約九百メートル)の距離を保ちなさい。それより近づいてはなりません。」

5 それから、ヨシュアは人々に、それぞれ身をきよめるように命じ、「明日、主が偉大な奇跡を行われるから」と言いました。

6 翌朝、ヨシュアは祭司たちに命じました。「契約の箱をかつぎ、先頭に立って川を渡りなさい。」言われたとおり、祭司たちは出発しました。

7 主はヨシュアに、「今日、あなたに大きな栄誉を授けよう。わたしがモーセとともにいたように、あなたとともにいることを、イスラエルの人々に知らせるためだ。

8 契約の箱をかつぐ祭司たちには、水ぎわに来たら水の中に立つよう命じなさい」と告げました。

9 ヨシュアは人々を召集し、語りました。「さあ、よく聞きなさい。主のことばを告げよう。

10 生ける神があなたがたのうちにおられ、カナン人、ヘテ人、ヒビ人、ペリジ人、ギルガシ人、エモリ人、エブス人など、やがて占領する地の全住民を必ず追い払ってくださることが、今日、はっきりわかるだろう。

11 いいですか。全地の支配者である主の契約の箱が、先頭に立って、ヨルダン川を渡ろうとしている。

12 今、各部族から一人ずつ、十二人を選びなさい。

13-14 箱をかつぐ祭司たちの足が川に入った瞬間、流れはせき止められるだろう。まるで見えない壁にはばまれたように、水は盛り上がるはずだ。」

15 ちょうど刈り入れの季節を迎えたヨルダン川は、岸いっぱいに水をたたえていました。イスラエルの民が川を渡ろうと出発し、箱をかつぐ祭司たちが足を入れた時、

16 突然、はるか川上のツァレタン付近の町アダムで水はせき止められ、盛り上がり始めたのです。また、その地点より川下の水は塩の海(死海)に流れ込み、ついに川床がむき出しになりました。こうして人々はみな、エリコの町に向かって渡ったのです。

17 箱をかつぐ祭司たちは、川の真ん中の乾いた地面に立ち、全員が渡り終えるまで待っていました。

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ヨシュア記 4

十二の石の記念碑

1 人々が無事に渡り終えた時、主はヨシュアに語りました。

2-3 「各部族から一人ずつ選ばれた十二人に命じて、ヨルダン川の真ん中の、祭司が立っている所から、一つずつ石を拾わせなさい。その十二の石を集めて、今夜野営する地に記念碑として積み上げなさい。」

4 ヨシュアは十二人を呼び出し、

5 こう命じました。「あの契約の箱のある川の真ん中に行き、一つずつ石を肩にかついで来なさい。それぞれ一つずつ、全部で十二だ。それらは十二部族を象徴する。

6 その十二の石で記念碑を建てよう。そうすれば、将来、子どもたちに『これは何の記念碑ですか』と尋ねられて、

7 『ヨルダン川を主の箱が渡った時、水がせき止められたことを忘れないための碑だよ』と話して聞かせることができる。この記念碑は、偉大な奇跡をイスラエル人が永久に忘れないためのものだ。」

8 十二人はヨシュアの命令に従い、川の真ん中から十二の石を拾いました。主がヨシュアに命じたとおりに、彼らはそれらの石を野営地まで運び、記念碑を建てました。

9 ヨシュアはまた、川の真ん中の祭司たちが立っていた場所にも、十二の石で記念碑を築きました。それは今もそこに建っています。

10 箱をかついでいた祭司たちは、モーセからヨシュアに与えられた主の命令がことごとく成し遂げられるまで、川の真ん中に立ち続けていました。その間に、人々は急いで川を渡ったのです。

11 全員が渡り終えると、みなの見守る中で、箱をかついだ祭司たちが、川から上がって先頭に立ちました。

12-13 武装したルベン族とガド族、それにマナセの半部族からなる四万人の軍勢は一隊となり、主のために戦う他部族の先頭に立って、エリコの平原を目指して進みました。

14 その日は、ヨシュアにとって生涯忘れることのできない日となりました。主はイスラエル人全員の目の前で、ヨシュアに大きな栄誉を与えたのです。人々は、モーセを敬ったと同じようにヨシュアを心から敬いました。

15-16 ヨシュアこそが主の命を受けて、契約の箱をかつぐ祭司たちに命令を下した人だったからです。

「川から上がりなさい」と祭司たちに命じるよう、主はヨシュアを促しました。

17 ヨシュアがそのとおりに命じ、

18 祭司たちが川から上がると、たちまち水は元どおりに流れ込み、岸いっぱいにあふれました。

19 この奇跡が起こったのは第一の月の十日(太陽暦の三月二十四日)のことです。この日、全イスラエルはヨルダン川を渡り、エリコの町の東方にあるギルガルに宿営しました。

20 このギルガルに、ヨルダン川から運んだ十二の石を積み上げ、記念碑を建てました。

21 その時ヨシュアは、その意味について説明しました。「いつの日か、子どもたちが、『なぜここに、こんな石が置いてあるのですか。これはどういう意味ですか』と尋ねる時がくるだろう。

22 その時には、この十二の石は、イスラエル人がヨルダン川の乾いた土の上を渡ったのだと教えてやりなさい。

23 さらに、その時どのようにして主が、われわれの目の前で川の水をからし、全員が渡り終えるまで乾いたままにしておかれたかを教えなさい。それはまさに、四十年前の紅海での出来事と同じである。

24 主がこうなさったのは、全世界の国民が、イスラエルの神である主こそ力ある唯一の神であると悟り、さらにあなたがたがみな、この主をいつも礼拝するようになるためなのだ。」

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ヨシュア記 5

割礼の儀式

1 ヨルダン川の西側の諸国民、エモリ人および地中海沿岸に住むカナン人の王はみな、主がヨルダン川の水をからし、イスラエル人が川を渡って来たと聞いて、すっかり意気阻喪し、恐怖におののきました。

2-3 その時、主はヨシュアに、「日を定めて、イスラエルの男子全員に割礼(男子が生まれて八日目にその性器の包皮を切り取る儀式)を施しなさい」と命じました。この儀式が行われたのは、イスラエルの歴史上、二度目のことです。主は、このために火打ち石でナイフを作るよう指示しました。この時の場所は「包皮の丘」と呼ばれています。

4-5 二度目の割礼の儀式を行った理由はこうです。イスラエルがエジプトを出た時、兵役に就く年齢の男子は、すべて割礼を受けていました。しかしその世代の人々はみな、荒野を旅する間に死んでしまい、その後に生まれた子どもたちは、だれ一人割礼を受けていなかったのです。

6 イスラエルの民は四十年荒野をさまよい歩き、エジプトを出た時に兵役に就く年齢にあった男子は、ついに死に絶えました。彼らが主に従わなかったので、約束されていた乳とみつの流れる地に入らせないと主は誓ったのです。

7 ですから今、ヨシュアは彼らに代わって息子たちに割礼を施したのです。

8-9 主はヨシュアに語りました。「今日わたしは、割礼を受けていないという恥をあなたがたから取り除いた。」それで、この出来事のあった場所はギルガル〔「終わらせる」の意〕と呼ばれ、現在でもそう呼ばれています。割礼を終えたのちも、彼らは傷が治るまで宿営にとどまっていました。

10 エリコの平原にあるギルガルに滞在中も、イスラエル人は第一の月の十四日の夕方になると、過越の祭りを祝いました。

11-12 そして翌日、自分たちの占領下にある畑から収穫した産物、パン種を入れないパンと炒り麦を食べました。すると、次の日からマナは降らなくなり、二度とマナを見ることはありませんでした。それ以来、人々はカナンの地の産物を食べるようになったのです。

13 さて、ヨシュアがエリコの町を見上げていた時、一人の人が目の前に現れました。その人は抜き身の剣を手にしていました。ヨシュアは歩み寄り、「味方か、それとも敵か」と問いただしました。

14 すると、「わたしは主の軍の将である」という答えが返ってきました。その声を聞くと、ヨシュアは地にひれ伏して彼を拝み、「どうぞご命令を」と言いました。

15 その将なる天の御使いは、「くつを脱げ。ここは聖なる地である」と言いました。ヨシュアはそのことばに従いました。

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ヨシュア記 6

エリコの城壁

1 さて、エリコの町の城門は堅く閉じられていました。だれもがイスラエル人を恐れていたからで、人っ子ひとり出入りできないほどでした。

2 ところが、主はヨシュアにこう告げたのです。「あなたは、もう勝ったも同然だ。町も人もみな、あなたたちのものだ。

3-4 六日の間、全軍を率いて、日に一度、町の周囲を回りなさい。そのあと、ラッパを手にした七人の祭司と契約の箱が続き、七日目には七度回り、祭司がラッパを吹き鳴らしなさい。

5 祭司がラッパをひときわ高く、長く吹き鳴らしたら、全員、大声でときの声を上げなさい。町の城壁はくずれ落ちるだろう。その時、四方八方から町へ攻め込むのだ。」

6-9 ヨシュアは祭司たちを召集し、指示を与えました。すなわち、武装した者たちが行進の先頭に立ち、そのあとに七人の祭司がラッパを吹き鳴らしながら続くこと、そのうしろを主の契約の箱をかつぐ祭司が進み、さらに、護衛兵がしんがりを務めることなどです。

10 ヨシュアは命じました。「ラッパの音以外、音を出してはいけない。一言も発してはならない。私が『ときの声を上げよ』と言ったら、いっせいに大声で叫びなさい。」

11 その日、主の箱は一度だけ町の周囲を回りました。人々は宿営に帰り、夜を過ごしました。

12-14 翌朝、夜明けとともにもう一度町の周囲を回り、宿営に戻りました。こうして六日間が同じように過ぎたのです。

15 七日目、夜の白むころ、またも人々は立ち上がり、この日は一度ではなく七度回りました。

16 七度目に、祭司たちが高らかに長くラッパを吹き鳴らすと、ヨシュアは大声で言いました。「ときの声を上げよ! 主はこの町をわれわれに下さったのだ!

17 住民はみな滅ぼせ。だが娼婦ラハブと、その家の中の者たちは助けなさい。ラハブはわれわれの偵察者をかくまってくれたからだ。

18 戦利品には手を出さず、すべて滅ぼし尽くしなさい。もしこれに背けば、イスラエル全体を災いが襲うだろう。

19 ただし、金、銀、および青銅や鉄の器具はみな、主にささげ、主の宝物倉に納めなさい。」

20 祭司の吹き鳴らすラッパの音を聞くと、人々はあらん限りの大声を出して、いっせいにときの声を上げました。と、どうでしょう。突然、城壁がくずれ落ちたのです。それっとばかり、四方八方から攻め込み、彼らはたちまちエリコの町を占領しました。

21 町中の者は全部、男も女も、老いも若きも死にました。また、牛や羊、ろばも殺されました。

22 それからヨシュアは、例の二人の偵察者に命じました。「約束を守りなさい。すぐ行って、ラハブと身内の者を助け出すのだ。」

23 その若者たちは、ラハブを見つけて助け出しました。もちろん、彼女の両親、兄弟、いっしょにいた親族の者たちも。彼らは、イスラエルの宿営の外で生活することになりました。

24 その間イスラエル人は、町とその中のすべてを焼き払いました。ただし、金、銀、および青銅や鉄の器具は別で、主のものとして取っておきました。

25 こうしてヨシュアは、ラハブとその家に共にいた身内の者とを救ったのです。今もなお、その一族はイスラエル人の中に住んでいます。ヨシュアがエリコ偵察のために送り込んだ者たちを、ラハブがかくまってくれたからです。

26 ヨシュアは、エリコを再建しようとする者には恐ろしい災いが下ると誓って言いました。その土台を築く者は長男を殺され、その門を建てる者は末息子を失うというのです。

27 神が共に歩まれたので、ヨシュアの名声はこの地方一帯に知れ渡りました。

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ヨシュア記 7

アカンの罪

1 しかし、イスラエル人の中に罪が潜んでいました。主にささげるもの以外は滅ぼし尽くせというヨシュアの命令が、実は守られていなかったのです。ユダ族のカルミの子で、祖父はザブディ、曾祖父がゼラフであるアカンが、戦利品の一部をふところに入れていました。そのために、主の激しい怒りがイスラエルの民に下ったのです。

2 エリコ陥落後すぐに、ヨシュアはまた、ベテル東方の町アイに数人の偵察者を送り込みました。

3 彼らは戻って報告しました。「小さな町ですから、二、三千人もいれば十分です。すぐに占領できるでしょう。全員で攻めるまでもありません。」

4 そこで、およそ三千の兵がアイに送り込まれました。ところが、彼らはさんざんに痛めつけられたのです。

5 戦闘中に三十六人ほどが殺されたうえ、大ぜいの兵士がアイの住民に石切り場まで追われ、次々に倒れました。イスラエル軍は、この敗北ですっかりおびえてしまいました。

6 ヨシュアと長老たちは心を痛め、衣服を裂き、頭にちりをかぶって、夕方まで主の箱の前にひれ伏しました。

7 ヨシュアは主に向かって叫びました。「ああ主よ。エモリ人の手によって私たちを滅ぼすおつもりなら、どうして私たちにヨルダン川を渡らせたのですか。どうして、すでに得ていたもので満足させてくださらなかったのですか。こんなことになるくらいなら、ヨルダン川の東側にとどまっていればよかったのです。

8 ああ主よ。敵に背を見せてしまった今となっては、どうすることもできません。

9 カナン人や近隣の民族がこれを聞けば、攻めて来るに決まっています。もはや全滅です。そうなれば、あなたの大いなる御名はどうなるのでしょう。」

10-11 それに対して、主は答えました。「顔を上げて立ちなさい。イスラエルは罪を犯したのだ。わたしの命令に背いて、取ってはならないと命じた戦利品を盗んだ。盗んだだけではない。偽って、自分の持ち物の中に隠している。

12 だからあなたがたは敗れた。これで敗北の原因がわかっただろう。今ではイスラエルのほうが滅ぼされる運命にある。その罪が完全に取り除かれなければ、もう、わたしはあなたがたとは共に歩まない。

13 立て。みなにこう告げよ。『各自、明日に備えて、自分を聖別しなさい。イスラエルの神である主がこう言われるからだ。だれかが主のものを盗んだ。この罪を取り除くまで、敵を破ることはできない。

14 明朝、あなたがたは部族ごとに進み出なさい。主が犯人のいる部族を示されるだろう。その部族は氏族ごとに分かれて進み出なさい。主が犯人のいる氏族を示してくださるだろう。次に、その氏族は家族ごとに進み出なさい。そして、犯人のいる家族は、一人ずつ前へ出るのだ。

15 主のものを盗んだ者は、全財産もろとも、火で焼かれる。主の契約を破って、全イスラエルに災難をもたらしたからだ。』」

16 翌朝早く、ヨシュアは主の前にイスラエルの各部族を進み出させました。すると、ユダ族に犯人がいることがわかりました。

17 ついでユダの各氏族を進み出させると、ゼラフの氏族だとわかりました。今度は、家族に分かれて主の前に進み出させたところ、ザブディの家族ということになりました。

18 ザブディ家の男子が一人ずつ連れ出されると、ついに、犯人はザブディの孫アカンであると判明したのです。

19 ヨシュアはアカンにただしました。「わが子よ。イスラエルの神に栄光を帰し、ほんとうのことを白状しなさい。さあ、何をしたか、包み隠さず話しなさい。」

20 「私はイスラエルの神に対して、取り返しのつかない罪を犯しました。

21 ふと見ると、バビロン産の美しい外套と、金の延べ棒と、銀とがあったのです。銀は二百シェケル、金は五十シェケルの値打ちがあると思いました。すると、どうしようもなく欲しくなり、それらを自分の天幕(テント)の下に埋めたのです。銀はいちばん深い所に隠しました。」

22 さっそく人をやって戦利品を捜させたところ、アカンの供述どおり、天幕の下に隠してあった盗品が掘り出され、さらに深い所からは銀が見つかりました。

23 それらはすべてヨシュアのもとへ運ばれ、主の前に並べられました。

24 ヨシュアは全イスラエル人とともに、アカンをアコルの谷に連れて行きました。盗んだ銀、外套、金の延べ棒、それに息子、娘、牛、ろば、羊、天幕など、全財産もいっしょでした。

25 ヨシュアはアカンに言い渡しました。「どうして、われわれにこんな災難を招くようなことをしでかしたのだ。今度は、主があなたに災難を下される。」人々は彼とその家族を石で打ち殺し、死体を焼き、

26 その上に石を高く積み上げました。その石塚は現在も残っており、谷は、今もなおアコル〔災い〕の谷と呼ばれています。こうして、ようやく主の激しい怒りは収まりました。

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ヨシュア記 8

アイ攻略

1 それから、主はヨシュアに命じて言いました。「恐れてはいけない。勇気を出しなさい。全軍を率いて、アイを攻撃せよ。勝利は目の前にある。わたしは、アイの王と全住民をあなたの手に渡す。

2 エリコとその王にしたとおり、アイとその王にもせよ。ただし、今回は奪い取ったものや家畜を自分たちの戦利品としてもよい。町の後方には伏兵を置きなさい。」

3-4 本隊がアイに向かう前に、ヨシュアは三万の精兵をひそかに派遣し、いつでも行動を起こせるよう、アイの後方のそれほど遠くない場所に、伏兵として忍ばせました。

5 ヨシュアは伏兵たちにこう説明しました。「さて作戦だが、まず本隊が攻撃をしかける。アイの軍は前回同様に町から出て来て戦うだろう。そこで、本隊は逃げる。

6 彼らはそれを追いかけて来る。つまり、町は空っぽになるというわけだ。彼らは、『イスラエル軍がまた逃げて行くぞ。この前のとおりではないか』と言うに違いない。

7 そこに、隠れていたあなたたちが飛び出し、町に攻め入るのだ。主は町を私たちの手に渡してくださる。

8 そこに入ったら、町に火をかけるのだ。」

9 こうして三万の精兵は夜中に本隊を離れ、アイの西端とベテルとの中間の地点に隠れました。一方、ヨシュアの率いる本隊は、エリコの宿営にとどまって夜を過ごしました。

10 翌朝早く、ヨシュアは兵を起こして長老たちを伴ってアイを目指し、

11-13 アイの北にある谷を前にして陣を敷きました。その夜、ヨシュアはさらに五千の兵を選んで、町の西方に隠れている別動隊に合流させ、自分はその谷で夜を過ごしました。

14 アイの王は、イスラエル軍が谷を渡って来るのを見ると、朝早く、アラバの平原で迎え撃とうと町を出ました。もちろん、町の後方に伏兵がいるとは夢にも思いませんでした。

15 ヨシュアの率いるイスラエル軍は、さんざん痛めつけられたように見せかけ、いっせいに荒野へ退却しました。

16 すると、アイの町中の兵士が追撃しようと、おびき出されたのです。案の定、町は無防備になりました。

17 アイからもベテルからも、兵士は一人もいなくなり、町の城門は開け放たれたままでした。

18 その時、主はヨシュアに命じました。「手にしている投げ槍を、アイの方に差し伸べよ。わたしがアイをあなたの手に渡すからだ。」言われたとおりにすると、

19 その合図を待っていた伏兵がいっせいに飛び出して町の中になだれ込み、火を放ちました。

20-21 アイの兵士たちが振り返ると、町から上る煙が空いっぱいに立ち込めているではありませんか。彼らは逃げ場を失いました。ヨシュアとその全軍は、煙を見て、伏兵が町に侵入したことを知りました。それで、追いかけて来た者たちに向き直り、反撃に出ました。

22 町に侵入したイスラエル軍も出て来て、背後から敵に襲いかかりました。このようにしてアイは罠にはまり、全滅したのです。生き残ったり逃れたりした者は一人もいませんでした。

23 しかし、アイの王だけは捕虜とされ、ヨシュアのもとに連れて来られました。

24 イスラエル軍はアイの全軍を一人残らず倒すと、町へ取って返し、残っていた人々を次々に打ちました。

25 こうして、アイの全住民一万二千人が、その日のうちに死に絶えたのです。

26 ヨシュアは、最後の一人にとどめが刺されるまで、投げ槍をアイの方に差し伸べたままでいました。

27 ただし、家畜と分捕り物はそのまま残しておきました。それはイスラエル軍のものでした。あらかじめ主がヨシュアに、そうしてよいと告げていたのです。

28 焼き払われたアイは荒れ果てた丘となり、現在に至っています。

29 ヨシュアは、アイの王を夕方まで木にかけてさらし、日が沈むと死体を降ろして町の門の入口に投げ捨てました。その上に積み上げた石の山は、今も見ることができます。

エバル山での律法の朗読

30 ついでヨシュアは、モーセが命じたとおり、イスラエルの神である主のためにエバル山に祭壇を築きました。

31 律法の書に、「わたしのために、のみを当てたことのない石で祭壇を築け」と言われているとおりに。祭壇が完成すると、祭司たちはその上に、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげました。

32 またヨシュアは、人々が見守る中で、祭壇の石に十戒を刻みつけました。

33 それから、長老、裁判官、在留外国人も含むイスラエル人全員は二組に分けられ、一方はゲリジム山のふもとに、もう一方はエバル山のふもとに立ちました。両者の間には、主の契約の箱をかつぐ祭司たちが全員を祝福しようと待ちかまえていました。すべて、先にモーセが命じたとおりに行われました。

34 ヨシュアは、モーセが律法の書に記した祝福とのろいのことばを、ことごとく読み上げました。

35 モーセの与えたすべての戒めが、女や子ども、それに在留外国人も含む全会衆の前で読み上げられたのです。

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ヨシュア記

ヨシュア記 9

ギブオン人の策略

1-2 さて、エリコでの出来事を耳にした周辺国の王たちは、さっそく連合し、ヨシュアとイスラエル軍に全力を挙げて対抗しようとしました。ヨルダン川の西側で、北はレバノン山脈までの地中海沿岸に住む、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の王たちでした。

3-5 しかしギブオンの住民は、エリコとアイでの一部始終を聞いて、何とか生き延びようと策略を巡らし、使者をヨシュアのもとへ送りました。使者の一行は、いかにも遠い国から旅して来たかのように、ぼろぼろの服を着て、繕ったくつをはき、風雨にさらされた袋と、つぎはぎだらけのぶどう酒の皮袋と、かび臭い乾ききったパンをろばに積んでいました。

6 一行はギルガルのイスラエルの陣営に着くと、ヨシュアと人々にこう言ったのです。「私どもは、友好条約を結んでいただきたくて、遠い国からまいりました。」

7 人々は、このヒビ人たちに答えました。「あなたたちがこの近くに住んでいないという確証はない。このあたりの住民を滅ぼせと主から命じられている以上、条約を結ぶわけにはいかない。」

8 「私どもを奴隷にしてくださってもけっこうです。」

「それにしても、あなたたちはいったい何者だ。どこから来たのか」とヨシュアは尋ねました。

9 「私どもは遠い国からまいりました。あなたの神、主の偉大なお力と、エジプトでなさったすべてのことは知っております。

10 それに、あなたがエモリ人の二人の王、あのヘシュボンの王シホンとバシャンの王オグとを、どんな目に会わせられたかもよく知っております。

11 それで、私どもの長老や住民がこう言うのです。『さあ、長旅の用意をして、イスラエルの人々を訪ねてくれ。そして、奴隷になると申し上げて、和平を求めて来るように』と。

12 このパンなど、出発した時には焼き立てのほかほかでしたが、今はごらんのとおり、すっかりひからびて、かび臭くなっております。

13 このぶどう酒の皮袋も新品でしたが、今は古びて、破れてしまっておりますし、着物もくつも、難儀な長旅ですっかりぼろぼろになってしまいました。」

14-15 このことばに、ヨシュアもほかの指導者たちも、とうとうその一行を信用し、主の指示を仰ぐこともせず、和を講じてしまったのです。そして、厳粛な誓いを立てて協定を結びました。

16 それから三日たって、彼らが近くの者だという事実が明らかになりました。

17 イスラエル軍は直ちに調査を開始し、三日目に彼らの町々に踏み込みました。その町の名は、ギブオン、ケフィラ、ベエロテ、キルヤテ・エアリムです。

18 しかし、イスラエル軍は彼らを攻撃しませんでした。イスラエルの指導者たちが、先に主にかけて誓っていたからです。しかし、治まらないのは会衆で、協定を結んだことで、指導者たちに不平を鳴らしました。

19 指導者たちは言いました。「われわれはイスラエルの神、主の前で、彼らに手を下さないと誓ってしまったのだ。だから手出しはしないでくれ。

20 どうしても生かしてやらなければならないのだ。もし誓いを破れば、主の怒りが下る。」

21 こういうわけで、ギブオンの住民は、イスラエル人の奴隷として、たきぎを割ったり、水をくんだりして暮らすことになったのです。

22 ヨシュアは彼らを呼んで、問いただしました。「あなたたちは、私たちの近くに住んでいながら、なぜ遠い国から来たなどと、だますようなまねをしたのか。

23 今にのろいが降りかかり、あなたたちはこの後いつまでも、私たちの奴隷となり、私たちの神に仕えて、たきぎを割り、水をくむことになるだろう。」

24 「私どもがあんなことをしたのは、イスラエルの神様が忠実なしもべモーセ様に、『この全土を征服し、住民を皆殺しにしなさい』とお命じになったことを、はっきり知っていたからです。殺されるのが怖かったのです。お赦しください。

25 どうぞ、どのようにでもお気のすむようになさってください。」

26 そこでヨシュアは、彼らを殺すことを禁じました。

27 彼らはイスラエル人のため、また、やがて主の選ぶ場所に築かれる祭壇のためにたきぎを割り、水をくむ者となりました。それは今も続いています。

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