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雅歌

雅歌 の紹介

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ソロモンとシュラムの女との愛を歌う本書は、叙情詩や歌でつづられていて、「歌の中の歌」と言われています。内容は単純ですが、感動的で、恋人同士が互いに求め合う姿や葛藤、愛によって呼び覚まされる優しい感情から、愛する者同士がいっしょにいる喜びなどが描かれています。ソロモンや彼の恋人とともに登場するエルサレムの娘たちは、彼女たちの観察を加えることにより、物語を劇的なものにしています。

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雅歌 1

1 ソロモン王が作ったこの歌は、ほかのどんな歌よりすばらしいものです。

2 もっともっと口づけしてください。

あなたの愛はぶどう酒より甘く、

3 あなたの香油は、なんとすてきな香りでしょう。

名前もとても魅力的です。

若い娘たちが夢中になるのもむりはありません。

4 私を連れて行ってください。

さあ、走って行きましょう。」

「王は私を、宮殿に連れて行ってくれました。

私たちは幸せでいっぱいです。

あなたの愛はぶどう酒にもまさります。

若い娘たちが夢中になるのも当然です。」

5 エルサレムの娘さん、

私はケダルの天幕(荒野のアラビヤ人が住む黒いテント)

のように、日焼けして黒いのです。

でも、きれいでしょう。」

「いや、あなたは私の絹の天幕のように愛らしい。」

6 町の娘さん、そんなに見つめないでください。

私の肌はとても黒いのです。

兄にしかられ、

強い日照りのぶどう園の番をさせられたので、

すっかり日焼けしてしまったのです。」

7 私の愛する方、どうか教えてください。

今日は、羊の群れをどこへ連れて行くのですか。

お昼には、どこにいらっしゃるのですか。

私は、あなたの仲間に混じって

流れ者のようにうろつきたくありません。

いつもおそばにいたいのです。」

8 世界で一番美しい女よ、

それなら、群れのあとについて行って

羊飼いのテントを探しあて、

そこで、あなたの羊と子羊の世話をしなさい。

9 愛する人よ。

あなたはかわいい子馬のようだ。

10 頬にかかる髪の毛が、とてもすてきだ。

宝石をちりばめた首飾りをつけた首には

気品が漂っている。

11 あなたのために、

金のイヤリングと銀の首飾りを作ってあげよう。」

12 ベッドに横になった王は、

私のつけている香水の香りにうっとりしています。

13 私の愛するお方は、

私の乳房の間にある、没薬の匂い袋のようです。」

14 私の愛する人は、エン・ゲディ(死海西岸のオアシス)

の植物園にある花束のようだ。

15 愛する人よ。あなたはなんと美しいのだろう。

どう言ったらいいかわからないほどだ。

目は鳩のように優しく、

16 草の上に身を横たえる姿は、

なんと美しく、麗しいのだろう。

17 その上に、杉や糸杉が影を落としている。」

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雅歌 2

1 私はシャロンのサフラン、谷間のゆりです。」

2 そう、ゆりのようだ。

私の愛する人とほかの娘たちを比べたら、

いばらと、その中に咲くゆりの花ほども違う。」

3 私の恋人は、ほかの男の方と比べたら、

果樹園の中で最上のりんごの木のようです。

私は慕わしい方の陰に座りましたが、

その実は口の中でとろけそうです。

4 あの方は私を宴会の広間に連れて行きますが、

そこでだれもが、

あの方がどんなに私を愛しているかを見るのです。

5 干しぶどうの菓子で、りんごで力づけてください。

そうです、あなたの愛で私を元気づけてください。

私は恋わずらいをしているのです。

6 あの方は、左手を私の頭の下にあて、

右手でしっかり抱いてくださいます。

7 エルサレムの娘さん、あなたがたに、

かもしかや野の鹿を指して誓ってほしいのです。

どうか、私の恋人を起こさないでください。

十分に寝かせてあげてください。」

8 ああ、愛する方の声が聞こえます。

あの方は、山々を跳び越え、

丘々を跳ねるようにしておいでになります。

9 まるでかもしかか若い雄鹿のように。

ごらんになってください。

あの方は壁のうしろにいます。

今度は、窓からのぞいています。

10 あの方はおっしゃいました。

『愛する人、いとしい人よ。さあ起きて、出ておいで。

11 冬は過ぎ、雨もすっかり上がった。

12 花が咲き、小鳥の歌う季節になった。

そう、もう春なのだ。

13 若葉がもえいで、ぶどうの木は花ざかりだ。

たまらないほどいい香りを放っている。

愛する人、いとしい人よ、さあ、起きて、出ておいで。』

14 崖の岩のうしろに隠れている私の鳩よ、

私を呼んで、美しい声を聞かせてください。

りりしいお顔を見せてください。

15 小ぎつねがぶどう園を荒らし回っています。

捕まえてください。

ぶどうの木は花ざかりなのですから。

16 私の愛する方は私のもの、私はあの方のもの。

あの方は、ゆりの花の間で羊の群れを飼っています。

17 ああ、お慕いしてやまない方、

夜が明け、影が消える前に、

私のところへ来てください。

帰って来て、険しい山の上のかもしかや、

若い雄鹿のようになってください。」

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雅歌 3

1 ある夜のこと、恋人は私のベッドから

姿を消してしまいました。

私は起きて捜しましたが、見当たりません。

2 通りへ出て夢中で捜しましたが、

どこにもいないのです。

3 途中、警備の人に呼び止められたので、

『どこかで、私が心から愛している方を

見かけませんでしたか』と尋ねてみました。

4 それからほんの少しして、あの方は見つかりました。

私はうれしくて、あの方をしっかりつかまえ、

実家へお連れして、母の古い寝室へ案内しました。

5 エルサレムの娘さん、

あなたがたに、かもしかや野の鹿を指して

誓ってもらいたいのです。

私の恋人を起こさないでください。

十分に寝かせてあげてください。」

6 没薬や香料、そのほか手に入る限りの

香りのあるものを漂わせながら、

煙のように荒野から上って来る人はだれでしょう。

7 ごらんなさい。

あれは六十人のえりぬきの勇士に守られた、

ソロモン王のみこしです。

8 みな腕の立つ兵士で、

経験を積んだ護衛の者たちです。

めいめい、夜襲に備えて王を守るため、

腰に剣を下げています。

9 みこしは、王がレバノンの木で

特別にあつらえたものです。

10 その支柱は銀、天蓋は金、

座席は紫のカバーがかかっています。

背当てには、『エルサレムの娘たちから愛を込めて』

という文字がちりばめてあります。」

11 シオン(エルサレム)の娘さん、

さあ、ソロモン王を見に出かけなさい。

王の喜びの結婚式の日に、

母上がじきじきにかぶせたという冠を

見てごらんなさい。」

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雅歌 4

1 愛する人よ。あなたはなんと美しいのだろう。

私は全く心を奪われてしまっている。

その鳩のような目がきれいだ。

あなたの顔にかかる髪は、

ギルアデの山腹を跳ね回るやぎの群れのようだ。

2 あなたの歯は、

毛を刈って体を洗ってもらったばかりの

羊の群れのように真っ白で、きれいな歯ならびだ。

3 くちびるは赤い糸のようで、

かわいらしい口もとが魅力的だ。

巻き毛のかかる頬は愛らしく、ふくよかだ。

4 首は、千人の英雄の盾で飾られた

ダビデのやぐらのようにしっかりしている。

5 二つの乳房は、ゆりの間で草を食べている

ふたごの子鹿のようだ。

6 夜が明け、影が消えるまでに、

私は没薬の山、香料の丘に行っていよう。

7 愛する人よ。あなたのすべてが美しい。

あなたには何の汚れもない。

8 花嫁よ、私といっしょにレバノンから来なさい。

山の頂上から、ヘルモン山の頂から見下ろしてみよう。

そこにはライオンのほら穴があり、

ひょうがうろついている。

9 美しい花嫁よ。あなたは私をとりこにしてしまった。

あなたのただ一度のまなざしと、

首飾りのただ一つの宝石で、

私はすっかり心を奪われてしまった。

10 いとしい花嫁よ。あなたの愛はなんと甘いことか。

ぶどう酒も比べものにならない。

あなたの愛の香水は、

最高の香料よりかぐわしい香りを放っている。

11 いとしい人よ。

あなたのくちびるは、はちみつでできている。

舌の裏にはみつとクリームがある。

あなたの服は山やレバノン杉の香りがする。

12 私のいとしい花嫁は、ほかの人の入れない庭園、

私だけの泉だ。

13-14 あなたはまるで最高の実の取れる、

すばらしい果樹園のようだ。

そこでは、ナルド、サフラン、しょうぶ、

シナモン、没薬、アロエをはじめ、

さまざまな最上の香料が取れる。

15 あなたは庭園の泉、湧き水の井戸で、

レバノンの山々から流れ落ちる冷たい水のように、

私をさわやかな気分にしてくれる。」

16 北風よ、さあ吹いておくれ。

南風よ、私の庭に吹いて、

愛する方のもとに香りを届けておくれ。

あの方がご自分の庭に来て、

最上の実を召し上がるように。」

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雅歌 5

1 いとしい花嫁よ。さあ私は、自分の庭園にやって来た。

私は没薬と香料を集め、

はちの巣からみつを取って食べ、

ぶどう酒とミルクを飲んでいる。」

「愛する方たちよ、食べて飲んでください。

十分に飲んでください。」

2 ある夜のことです。眠っているとき、

夢の中で愛する方の声が聞こえました。

あの方は、私の寝室のドアをたたいていました。

『いとしい人、私の恋人、私のかわいい鳩よ、

開けておくれ。

夜通し外にいたので、すっかり露にぬれてしまった。』

3 私は答えました。

『もう寝間着を着てしまったのに、

また着替えるのですか。

足も洗ったので汚したくありません。』

4 それでも、愛する方が

鍵を開けようとするのを見て気の毒になり、

5 私は跳び起きて、ドアを開けました。

かんぬきの取っ手を引いたとき、

私の手から香水が、指からかぐわしい没薬の液が

したたり落ちました。

6 ところが、せっかくお開けしたのに、

もうあの方の姿は見えません。

私は心臓の止まる思いでした。

どんなにあちこち捜しても、

あの方は見当たらないのです。

必死にお呼びしても返事はありません。

7 私は警備の人に見つかり、たたかれました。

城壁の見張りにはベールをはぎ取られました。

8 エルサレムの娘さん、どうか誓ってください。

私の愛する方を見かけたら、

私が恋の病をわずらっていると伝えてほしいのです。」

9 女性の中で一番美しい人よ。

私たちにそれほどまでに頼み込む

だれよりもすてきな人とはどんなお方ですか。」

10 私の愛する方は日焼けして魅力的で、

ほかのどの男の方よりすてきです。

11 頭は純金、

黒い髪はウェーブがかかっています。

12 目は流れのほとりにいる鳩のようで、

穏やかに輝き、深く澄んでいます。

13 頬はかぐわしい香料の花壇、

くちびるはゆりの花、息は没薬のようです。

14 腕はトパーズをはめ込んだ丸い金の棒。

体は宝石をちりばめた光沢のある象牙。

15 足は純金の台座にすえられた大理石のようで、

レバノン杉のようにたくましいのです。

あの方にまさる人はいません。

16 あの方のことばは、うっとりするほどです。

あの方のすべてがすてきなのです。

エルサレムの娘さん。

これが私の愛する方、私の恋人です。」

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雅歌 6

1 だれよりも美しい人よ。

あなたの愛する人はどこへ行ったのですか。

その方を捜してあげましょう。」

2 あの方は、ご自分の庭園、香料の花壇へ行きました。

羊の群れを飼い、ゆりの花を集めるためです。

3 私は愛する方のもの、愛する方は私のもの。

あの方は、ゆりの花の間で羊の群れを飼っています。」

4 愛する人よ。

あなたは眺めのよいティルツァ(サマリヤの東にある町)のように美しく、

エルサレムのように愛らしい。

あなたは私をとりこにした。

5 そんなに見つめないでくれ。

あなたの目に、吸い込まれてしまいそうだ。

あなたの顔にゆれる髪は、

ギルアデの山腹を跳びはねて降りて来る

やぎの群れのようだ。

6 歯は、体を洗い流したばかりの雌羊のように、

真っ白で、きれいな歯ならびだ。

7 髪の毛のかかる頬はなんともかわいらしい。

8 私には、王妃が六十人、そばめは八十人、

おとめたちは数知れずいる。

9 だが、あなたのような完全な女性は、

ただの一人もいない。

エルサレムの女たちは、あなたを見て歓声を上げた。

王妃やそばめたちでさえ、あなたをほめそやした。

10 『夜明けのように上ってきて、

月のようにおしとやかな、太陽のように明るい、

私たちを魅了してしまうこの方は、

いったいだれですか』と。」

11 私はくるみ林と谷へ行ってみました。

春の訪れを知りたかったからです。

ぶどうの木が芽を吹いたか、

もう、ざくろの花が咲いたかを見に。

12 でも、いつしか生まれ故郷がたまらなく恋しくなり、

帰りたくなりました。」

13 シュラムの娘さん、帰って来てください。

私たちのところへ戻って来てください。

もう一度、あなたの顔を見たいのです。」

「どうして、ただのシュラムの女を、

そんなに見たいのですか。」

「それは、あなたが見事な舞を見せるからだ。」

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雅歌 7

1 女王のような高貴な人よ。

軽やかに歩くあなたの足はなんと美しいことか。

丸くてふっくらしたももは、

名人が磨き上げた宝石のようだ。

2 あなたのほぞは、ぶどう酒をなみなみとつぐ

器のように愛らしい。

腰は、ゆりの花をあしらった小麦の山のようだ。

3 乳房は、ふたごの子鹿のようにかわいらしい。

4 首は、象牙の塔のように形がよく、なめらかで、

目はバテ・ラビムの門のほとりにある

ヘシュボンの池のように澄んでいる。

鼻は、ダマスコを見下ろすレバノンのやぐらのように、

形がよく、筋が通っている。

5 カルメル山が山々の冠となってそびえているように、

あなたの髪はあなたの冠だ。

私は、その豊かな髪のとりこになってしまった。

6 ああ、あなたはなんとすてきな人なのだろう。

そばへ行くだけで、すっかり夢中になる。

7 あなたはやしの木のように背が高く、

ほっそりしている。乳房はなつめやしの房のようだ。

8 私は言った。やしの木によじ登って、枝をつかもう。

あなたの乳房はぶどうの房のよう、

あなたの口の匂いはりんごの香りのようであればいい。

9 あなたの口づけは、

最上のぶどう酒のようにすばらしく、

なめらかで甘く、眠っている者のくちびるを開かせる。」

10 私は愛する方のもの、あの方の望みどおりの者。

11 私の愛する方、さあ、野原へ出かけ、

村にしばらく滞在しましょう。

12 早起きしてぶどう園へ行き、

ぶどうの木が芽を出したか、花が咲いたか、

ざくろの木が花をつけたかを見てみましょう。

そのぶどう園で、私の愛をあなたにささげます。

13 そこでは恋なすびが香りを放ち、

私たちの門のそばには、

古いのも新しいのも取り混ぜた最高の果物があります。

それは私の愛する方のために、

わざわざたくわえておいたものです。」

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雅歌 8

1 ああ、あなたが私のお兄さんだったらいいのに。

そうしたら、あなたに口づけしているのを

だれに見られても笑われませんから。

2 あなたを実家にお連れして、

そこでいろいろ教わりたいことがあるのです。

また、香料を混ぜたぶどう酒、

甘いざくろの果実酒を差し上げたいのです。

3 あの方の左手が私の頭の下にあり、

私を右手でしっかりと抱いてくださるとよいのに。

4 エルサレムの娘さん、

どうか、あの方が十分に眠るまで起こさない、

と誓ってください。」

5 愛する人に寄りかかって、

荒野から上って来るのはだれでしょう。」

「あなたの母が産みの苦しみをして、

あなたを産んだりんごの木の下で、

私はあなたの愛を呼び起こした。」

6 私をあなたの心に刻みつけて、

どんなことがあっても見捨てないでください。

愛は死のように強く、

ねたみは地獄のようにきびしいからです。

それは炎となって輝く、主の炎です。

7 どんなに水をかけても、

愛の炎を消すことはできません。

洪水も、それを押し流すことはできません。

たとえ全財産をはたいてその愛を買おうとしても、

買うことができません。」

8 私たちには、まだ乳房がふくらんでいない妹がいます。

だれかが彼女に結婚を申し込んだらどうしよう。」

9 彼女が純潔なら、励ましてあげよう。

しかしだらしないなら、男たちから切り離そう。」

10 私は純潔です。

もう乳房は成熟しています。

そのため、愛する方の目にとまり、

かわいがってもらいました。

11 王様はバアル・ハモンに

ぶどう園を持っています。

それを土地の使用人に、

めいめい銀貨千枚で貸しています。

12 でも、王様。

私のぶどう園の場合は、王様には銀貨千枚を差し上げ、

管理人には銀貨二百枚ずつを払います。

13 庭園に住んでいる私の愛する方。

お仲間は、あなたの声に聞きほれています。

私にもぜひ聞かせてださい。

14 愛する方、早く来て、険しい山の上のかもしかや、

若い雄鹿のようになってください。」

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