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マルコの福音書

マルコの福音書 13

この世の終わり

1 イエスが宮から出ようとしておられた時、弟子の一人が言いました。「先生。これはまあ、なんと美しい建物でしょう。なんと見事な石でしょう。」

2 すると、イエスはお答えになりました。「なるほどすばらしいものです。しかし、この建物も、たった一つの石さえほかの石の上に残らないほど、あとかたもなくくずれ落ちてしまうのです。」

3-4 イエスがオリーブ山で、宮のほうを向いて座っておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレがこっそりイエスに尋ねました。「いったいいつ、神殿にそんなことが起こるのですか。そうなる前に、何か前兆でもあるのでしょうか。」

5 そこで、イエスはゆっくり話し始められました。「だれにもだまされてはいけません。

6 自分こそキリストだと名乗る者が大ぜい現れて、多くの人を惑わすからです。

7 また、あちこちで戦争が始まるでしょう。けれども、まだ終わりが来たわけではありません。

8 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、至る所で地震やききんが起こります。しかしこれらはみな、やがて襲って来る苦しみの、ほんの始まりにすぎないのです。

9 しかし、これらのことが起こり始めたら、よく警戒しなさい。非常な危険が迫っているからです。あなたがたは法廷に引き出され、会堂でむち打ちの刑を受け、また、わたしに従う者だというだけで、総督や王たちの前で訴えられるでしょう。しかしその時こそ、神をあかしするチャンスです。

10 終わりの時が来る前に、福音が世界中の人々に伝えられなければなりません。

11 逮捕されても、取り調べの時、どう釈明しようかと心配することはありません。ただその時、神があなたがたに語ってくださることだけを話せばいいのです。話をするのはあなたがたではなく、聖霊です。

12 兄弟同士が殺し合うかと思えば、親までが子を裏切り、子もまた親に反逆し、殺します。

13 そしてあなたがたは、わたしの弟子であるというだけで、すべての人に憎まれます。しかし終わりまで、わたしへの信仰を捨てずに耐え忍ぶ者はみな救われます。

14 恐るべきもの(ダニエル9・27、11・31)が神殿に立つのを見たら〔読者よ、よく考えなさい〕、ユダヤにいる人たちは、山へ逃げなさい。

15-16 急ぐのです。もしその時、屋上にいたら、家の中に戻ってはいけません。畑にいたら、お金や着物を取りに帰ってはいけません。

17 このような日に妊娠している女と乳飲み子をかかえている母親は、ほんとうに不幸です。

18 また、あなたがたの逃げるのが、冬にならないように祈りなさい。

19 それは、神が天地を創造された初めから今に至るまで、いまだかつてなかったような恐るべき日だからです。

20 主が、このわざわいの期間を短くしてくださらないかぎり、地上には、一人も生き残れないでしょう。しかし、神に選ばれた人たちのために、その期間は短くされるのです。

21 その時だれかが、『この方がキリストだ』とか『いや、あの方がそうだ』とか言っても、気をとられてはいけません。

22 偽キリストや偽預言者が次々に現れて、不思議な奇跡を行い、神に選ばれた者たちをさえ惑わそうとするからです。

23 気をつけていなさい。警告しておきます。

24 この苦難の時に続いて、太陽は暗くなり、月は光を失い、

25 星は落ち、宇宙に異変が起こります。

26 その時すべての人が、メシヤのわたしが大きな力と栄光とを帯びて、雲に乗って来るのを見るでしょう。

27 わたしは天使たちを遣わし、世界中から、まさに天と地の果てから、選ばれた者たちを呼び集めるのです。

28 さて、いちじくの木から教訓を学びなさい。いちじくの葉が出てくれば、夏は間近です。

29 同じように、いま言ったようなことが起これば、わたしはもう戸口まで来ているのです。

30 そうです。これが、この時代の終わりの前兆なのです。

31 天地は消え去りますが、わたしのことばは永遠に残ります。

32 しかしだれも、天の使いも、わたし自身でさえも、その日、その時がいつかは知りません。ただ、父なる神だけが知っておられます。

33 だから、いつ終わりが来ても困らないように、わたしの帰りを目を覚まして待っていなさい。

34 こう言えば、もっとはっきりわかるでしょう。ちょうど、外国旅行に出かける人が、使用人たちに留守中の仕事の手配をし、門番には、主人の帰りを見張っているようにと命じて出かけるのと同じです。

35 だから、しっかり目を覚ましていなさい。いつわたしが帰って来るか、夕方か、夜中か、明け方か、それともすっかり明るくなってからか、わからないのですから。

36 不意をつかれて、居眠りしているところを見られないようにしなさい。

37 あなたがただけでなく、すべての人にも念を押しておきます。わたしの帰りを、抜かりなく見張っていなさい。」

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マルコの福音書

マルコの福音書 14

裏切られるイエス

1 過越の祭り(パン種を入れないパンを食べる、年に一度のユダヤ人の祭り)が二日後に迫りました。いぜんとして、祭司長やユダヤ人の指導者たちは、イエスを捕らえて死刑にしようと、その機会をうかがっていました。

2 しかし、「祭りの間はまずいだろう。民衆が暴動でも起こすと取り返しがつかないから」と用心していました。

3 さてイエスは、ベタニヤの、ツァラアトに冒されたシモンという人の家におられました。ちょうど食卓に着いておられる時、女が一人、入って来ました。高価な香油の入った美しいつぼを持っています。女はイエスに近づくと、いきなりつぼの封を切り、香油をイエスの頭に注ぎかけました。

4-5 同席していた何人かの者たちは腹を立て、「なんてもったいないことをする女だ。この香油なら高く売れて、貧しい人たちに施しをすることもできたのに」と、女をとがめました。

6 しかしイエスは、彼らに言われました。「彼女のするままにさせておきなさい。良いことをしてくれたのに、なぜ非難するのですか。

7 貧しい人たちは、いつも身近にいるのだから、その気があれば、いつでも助けることができます。しかし、わたしはもう、そんなに長くこの地上にいないのです。

8 この女は、精一杯のことをしてくれました。わたしの葬りの準備に香油を塗ってくれたのですから。

9 よく言っておきます。世界中どこででも、福音が伝えられる所では、この女のしたことも必ず賞賛されるでしょう。」

10 ところで、弟子の一人イスカリオテのユダは、イエスを売り渡そうと祭司長たちのところに出かけました。

11 ユダが来意を告げると、祭司長たちは喜び、謝礼を払うことを約束しました。それ以来ユダは、イエスを引き渡すチャンスをねらうようになりました。

12 過越の祭りの最初の日、すなわち、小羊をいけにえとしてささげる日に、弟子たちはイエスに、「どこで過越の食事をなさるおつもりですか」と尋ねました。

13 そこでイエスは、弟子を二人エルサレムへやり、その準備をさせることにしました。「町を歩いて行くと、水がめを持って来る男に出会うから、その男について行きなさい。

14 彼が入った家の主人に、『私どもの先生が、過越の食事をする部屋を見て来るようにと申しました』と言いなさい。

15 主人はすっかり用意の整った二階の広間を見せてくれるはずです。そこで食事のしたくをしなさい。」

16 二人が町に入って行くと、何もかもイエスの言われたとおりでした。こうして、過越の準備は整いました。

17 夕方、イエスと弟子たちは連れ立って、そこにやって来ました。

18 みなが食卓を囲んで食事をしていると、イエスは言われました。「いいですか。よく言っておきます。今わたしといっしょに食事をしている者の一人が、わたしを裏切ります。」

19 これを聞いた弟子たちは、ひどく心を痛め、口々に、「まさか、私ではありませんよね」と尋ねました。

20 「あなたがた十二人の中の一人で、今、わたしといっしょに同じ鉢にパンを浸している者です。

21 預言者が、ずっと昔からはっきり預言してきたように、わたしは死ななければなりません。けれども、わたしを裏切る者はのろわれます。その人はむしろ生まれてこなかったほうがよかったのです。」

22 食事の最中にイエスはパンを取り、神の祝福を祈ってからそれをちぎり、弟子たちに分け与えられました。「食べなさい。これはわたしの体です。」

23 それからぶどう酒の杯を取り、神に感謝の祈りをささげた後、弟子たちに与えられました。弟子たちはみな、その杯から飲みました。

24 イエスは言われました。「これは多くの人のために流す、わたしの血です。神と人間との新しい契約を保証する血です。

25 よく言っておきますが、やがて神の国で新しく飲むその日まで、わたしはもう決してぶどう酒を飲みません。」

26 一同は賛美歌を歌ってから、オリーブ山に向かいました。

27 イエスは、弟子たちに言われました。「あなたがたはみな、わたしを見捨てるでしょう。神が預言者を通して、『わたしが羊飼いを打つ。すると羊は散り散りになる』(ゼカリヤ13・7)と言われたとおりに。

28 だが、わたしは復活してガリラヤに行きます。そこであなたがたに会うでしょう。」

29 すると、ペテロが言いました。「だれがどうあろうと、私だけは、この私だけは絶対にあなたを捨てません。」

30 イエスは、「ペテロよ。あなたは明日の朝、鶏が二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うでしょう」と言われました。

31 「とんでもない! たとえ死んでも、絶対にあなたを知らないなどとは言いません。」ペテロは大声で言いはりました。ほかの弟子たちも、口々に誓い始めました。

ゲツセマネで祈る

32 さて一同は、オリーブの木の茂っている、ゲツセマネと呼ばれる園にやって来ました。「わたしが向こうで祈っている間、ここに座っていなさい。」

33 イエスはこうお命じになると、ペテロとヤコブとヨハネだけを連れて、奥のほうに行かれました。そして、恐れと絶望に襲われて、イエスはもだえ苦しみ始められました。

34 「わたしは悲しみのあまり、今にも死にそうです。ここを離れず、わたしといっしょに目を覚ましていなさい。」

35 イエスはそう言うと、三人から少し離れた所へ行き、地面にひれ伏して、もしできることなら、自分を待っているその時が来ないように、と祈られました。

36 「父よ、わたしの父よ。あなたはどんなことでもおできになります。どうぞ、この杯を取り除いてください。しかし、わたしの思いどおりにではなく、あなたのお心のままになさってください。」

37 イエスが弟子たちのところへ戻って来られると、三人とも、ぐっすり眠り込んでいるではありませんか。そこで、ペテロに声をかけました。「シモンよ。眠っているのですか。たったの一時間でも、わたしといっしょに目を覚ましていられなかったのですか。

38 しっかり目を覚まして祈っていなさい。さもないと誘惑に負けてしまいます。心は燃えていても、肉体は弱いのですから。」

39 こうしてまた彼らから離れ、先ほどと同じことを祈られました。

40 そのあと、もう一度弟子たちのところへ戻って来ると、またもや三人とも眠り込んでいます。ひどく眠気がさして我慢できなかったからです。彼らは何と言いわけしたらよいか、わかりませんでした。

41 イエスは三度目に戻って来て言われました。「まだ眠っているのですか。それだけ眠れば十分でしょう。さあ、時が来ました。いよいよ、わたしは悪い者たちの手に売り渡されるのです。

42 さあ、立ちなさい。行くのです。見なさい。裏切り者がやって来ました。」

43 イエスがまだ言い終わらないうちに、祭司長やユダヤ人の指導者たちの差し向けた暴徒たちが、手に手に剣やこん棒を持って、弟子の一人であるユダを先頭に近づいて来ました。

44 ユダは前もって彼らと、自分が口づけのあいさつをする相手がイエスだから、その男を捕まえて、引き立てて行くように、と打ち合わせておきました。

45 それで、やって来るとすぐイエスに近づき、「先生」と声をかけて、さも親しそうに抱きしめ、あいさつの口づけをしました。

46 そのとたん、暴徒たちがいっせいにイエスを取り押さえました。

47 その時、イエスのそばにいた一人がさっと剣を抜き放つと、大祭司の部下に切りかかり、相手の耳を切り落としました。

48 イエスは暴徒たちに向かって言われました。「剣やこん棒で、これほどものものしい武装をして来なければならないほど、わたしは凶悪な犯罪者なのですか。

49 なぜ、神殿で捕らえようとしなかったのですか。わたしはあそこで毎日教えていたのに。けれども、これもみな、わたしについての預言が実現するためなのです。」

50 この時にはもう弟子たちはみな、イエスを見捨てて逃げ去っていました。

51-52 ただ一人、亜麻布を一枚だけまとって、イエスのうしろからついて行く青年がいました。ところが、途中で暴徒たちに見つかり、危うく捕まりそうになったので、引きちぎられた亜麻布を脱ぎ捨て、裸のまま逃げて行きました。

ペテロ、イエスを知らないと言う

53 イエスは、大祭司の家に引き立てられて行きました。祭司長やユダヤ人の指導者たちも急いで駆けつけ、まもなく全員がそろいました。

54 さて、ペテロは遠くからあとをつけて行き、うまく門からもぐり込んで、兵士たちにまぎれて火のそばでうずくまっていました。

55 中では、イエスに死刑の宣告を下すための証拠集めに、祭司長やユダヤの最高議会の全議員がやっきになっていましたが、何も見つけることができません。

56 偽の証人は大ぜい名乗り出たのですが、証言がみな食い違っていたのです。

57-58 そのうち何人かが、「確か、この男が、『人間の手で造られた神殿をこわして、人間の手によらない神殿を三日で建ててみせる』と言っているのを聞きました」と偽証しました。

59 しかしこの点でも、証言は一致しませんでした。

60 その時、大祭司が進み出て、イエスに問いただしました。「おまえはこれらの訴えに答えないつもりか。どうなんだ。何も釈明する気はないのか。」

61 イエスは、ひとこともお答えになりません。大祭司は続けて、「おまえは神の子、キリストなのか」と尋ねました。

62 「そのとおりです。あなたがたは、やがてわたしが神の右の座につき、雲に乗ってもう一度この地上に来るのを見るでしょう。」

63-64 この答えに、大祭司は即座に自分の着物を引き裂き、叫びました。「これだけ聞けば十分だ! さあ、お聞きのとおりだ。神を汚したこの男をどうしてくれよう。」こうして彼らは、イエスの死刑を全員一致で決めました。

65 このあと、ある者たちは、イエスにつばを吐きかけたり、目隠ししてこぶしで顔をなぐり、「今なぐったのはだれか当ててみろ」とあざけったりしました。役人たちもイエスの身柄を受け取って、平手で打ちました。

66 一方ペテロは、下の中庭にいました。大祭司の女中の一人が、

67 火にあたっているペテロに気づき、じっと見つめて言いました。「あら、あんた。あのナザレ人イエスといっしょにいた人じゃないの?」

68 ペテロはそのことばを打ち消し、「変な言いがかりはよしてくれ」と言って、出口のほうへ行きかけました。その時、鶏が鳴きました。

69 すると女中は、またもペテロをしげしげと見て、そばに立っている人たちに、「ほら、あの人。あの人はイエスの弟子よ」と言いふらしました。

70 ペテロはあわててそれを打ち消しました。しばらくすると、火のそばに立っていたほかの男たちも、「おまえは確かにイエスの仲間だ。ガリラヤ人だからな」と騒ぎだしました。

71 ペテロは、「そんな男のことなど知らない。これがうそだったら、どんな罰があたってもかまわない」と叫びました。

72 するとすぐ、鶏が二度目に鳴くのが聞こえました。その瞬間ペテロは、「鶏が二度鳴く前に三度わたしを知らないと言います」という、イエスのことばを思い出したのです。ペテロは激しく泣きくずれました。

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マルコの福音書

マルコの福音書 15

イエスの裁判、十字架の死、埋葬

1 朝早く、祭司長と長老、それにユダヤ教の教師たちからなる最高議会の全議員が、次の手はずをあれこれ協議した結果、イエスを縛ったまま、ローマ総督ピラトに引き渡すことに決まりました。

2 「おまえはユダヤ人の王なのか」というピラトの尋問に、イエスは、「そのとおりです」とだけお答えになりました。

3 そこで祭司長たちは、あることないことをあげつらい、イエスを訴えました。

4 これを聞いたピラトは、「どうして何も言わないのか。あんなにまで訴えているのに平気なのか」と尋ねました。

5 しかしイエスは、ひとこともお答えになりません。これにはピラトも驚き、あきれてしまいました。

6 さてピラトは、毎年、過越の祭りには、人々の願うままにユダヤ人の囚人を一人、釈放してやることにしていました。

7 たまたまこの時、暴動で人殺しをし、投獄されていた暴徒たちの中に、バラバという男がいました。

8 群衆はピラトの前に押し寄せ、例年どおり囚人を釈放するよう迫りました。

9 そこで、ピラトは尋ねました。「『ユダヤ人の王』を釈放してほしいのか。おまえたちが赦してほしいのはこの男か。」

10 ピラトがこう言ったのは、イエスが捕らえられたのは、彼の人気をねたむ祭司長たちのでっち上げによるとにらんだからです。

11 ところが、祭司長たちも抜かりはありません。たくみに群衆をけしかけ、イエスではなくバラバの釈放を要求させたのです。

12 「バラバは釈放するとして、おまえたちが王と呼んでいるあの男はいったいどうするつもりか。」

13 「十字架につけろ!」

14 「なぜだ。あの男が、いったいどんな悪事を働いたというのだ。」それでも群衆はおさまりません。なおも大声で、「十字架につけろ!」と叫び続けます。

15 ピラトは群衆のきげんをそこねたくなかったので、結局、バラバを釈放することにしました。イエスのほうは、先端に鉛のついたむちで打たせてから、十字架につけるために引き渡しました。

16 ローマ兵たちはイエスを総督官邸内の兵営に引き立てて行き、全部隊を召集しました。

17 その目の前で、イエスに紫色のガウンを着せ、長く鋭いとげのあるいばらで冠を作り、頭にかぶせると、

18 「おい、ユダヤ人の王よ」とはやしたて、皮肉たっぷりに敬礼しました。

19 それから、頭を葦の棒でたたいたり、つばをかけたり、ひれ伏して拝むまねをしたりして、からかいました。

20 こうしてさんざん笑いものにしたあげく、紫色のガウンをはぎとってもとの着物を着せ、いよいよ十字架につけるために引き出しました。

21 途中、ちょうど田舎から来合わせていたクレネ人のシモンという男に、むりやりイエスの十字架を背負わせました〔シモンは、アレキサンデルとルポスの父〕。

22 兵士たちは、イエスをゴルゴタ〔どくろ〕と呼ばれる場所に連れて行きました。

23 そこで、没薬を混ぜたぶどう酒(痛みを和らげる飲み物)を飲ませようとしましたが、イエスはお断りになりました。

24 兵士たちは、イエスを十字架につけてしまうと、さっそくくじを引き、その着物を分け合いました。

25 イエスが十字架につけられたのは、朝の九時ごろでした。

26 イエスの頭上には罪状書きが掲げられ、それには「ユダヤ人の王」と書いてありました。

27 その日、二人の強盗も、イエスといっしょに十字架につけられました。二人の十字架はイエスの両側に立てられました。

28 こうして、「彼は罪人の一人に数えられた」(イザヤ53・12)という聖書のことばどおりになったのです。

29-30 刑場のそばを通りかかった人たちは、大げさな身ぶりで、「神殿を打ちこわして三日で建て直すんだってなあ。そんなに偉いなら、たった今、十字架から降りて来いよ。自分を救ったらどうなんだ!」と、口ぎたなくイエスをののしりました。

31 祭司長やユダヤ人の指導者たちも、同じようにあざけりました。「人を救っても、自分は救えないというわけか。」

32 「キリスト様。イスラエルの王様。十字架から降りてみろ。そうしたら信じてやろうじゃないか。」イエスの両側で十字架につけられていた強盗までが、悪口をあびせました。

33 さて正午になったころ、あたりが急に暗くなり、一面の闇におおわれました。それが三時間も続きました。

34 三時ごろイエスは大声で、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と叫ばれました。それは、「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味です。

35 近くでその声を聞いた人の中には、預言者エリヤを呼んでいるのだと思った者もいました。

36 その時、一人の男がさっと駆け寄り、海綿に酸いぶどう酒を含ませると、それを葦の棒につけて差し出しました。そして、「さあ、エリヤがこの男を降ろしに来るかどうか、とくと見ようじゃないか」と言いました。

37 イエスはもう一度大声で叫ぶと、息を引き取られました。

38 するとどうでしょう。神殿の幕が、上から下まで真っ二つに裂けたのです。

39 十字架のそばに立っていたローマ軍の士官は、イエスの死の有様を見て、「この方はほんとうに神の子だった」と言いました。

40 数人の婦人が、遠くから恐る恐るこの様子をながめていました。それは、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセの母マリヤ、サロメをはじめ、何人かの婦人たちで、

41 イエスがガリラヤにおられた時、いつも仕えていた人たちでした。ほかにもたくさんの婦人が、イエスといっしょにエルサレムまで来ていました。

42-43 以上の出来事はすべて、安息日の前日に起こったことです。その日の夕方、一人の人がピラトのところへ行き、勇気を奮い起こして、イエスの遺体を引き取りたいと申し出ました。その人はアリマタヤ出身のヨセフといい、ユダヤの最高議会の有力な議員で、神の国が来ることを熱心に待ち望んでいました。

44 ピラトは、イエスがもう死んでしまったとは信じられず、ローマ軍の士官を呼びつけ、問いただしました。

45 士官が死を確認したので、それならよいと遺体の引き取りを許可しました。

46 ヨセフは亜麻布を買って来ると、イエスの遺体を十字架から取り降ろし、布でくるんで、岩をくり抜いた墓の中に納め、入口は石を転がしてふさぎました。

47 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが葬られるのをじっと見守っていました。

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マルコの福音書

マルコの福音書 16

復活したイエス

1 翌日の夕方、安息日が終わると、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤ、それにサロメの三人は、さっそくイエスの遺体に塗る香料を買い求めました。

2 その翌朝早く、日が昇るとすぐ、女たちは香料を持って墓へ急ぎました。

3 女たちには気にかかることが一つあり、道々、そのことばかり話し合っていました。どうしたら、あの大きな石を入口から取りのけることができるかということでした。

4 それがどうでしょう。墓に着いてみると、あの重い石は動かしてあり、入口が開いているではありませんか。

5 中に入ると、右のほうに白い服を着た青年(天使)が座っています。女たちはびっくりして、息も止まるほどでした。

6 その青年がおもむろに口を開きました。「そんなに驚くことはありません。十字架につけられたナザレのイエスを捜しているのでしょう。あの方はもうここにはおられません。復活されたのです。ごらんなさい。ここが、あの方の納められていた場所です。

7 さあ、行って、ペテロやほかの弟子たちに、『イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前もって言われたとおり、そこでお会いできるのです』と知らせてあげなさい。」

8 婦人たちは震え上がり、転がるようにして墓から逃げ帰りました。そして、あまりの恐ろしさに、この出来事をだれにも話すことができませんでした。

9 〔さて、イエスが復活されたのは日曜日の早朝のことで、最初にイエスにお会いしたのはマグダラのマリヤでした。彼女はかつて、イエスに七つの悪霊を追い出していただいたことがありました。

10-11 マリヤはすぐさま、悲しみに打ちひしがれて泣いている弟子たちのところへ行き、「大変です! イエス様は生きていらっしゃいます。私、実際にお目にかかったのです」と話しました。しかし弟子たちは、マリヤの言うことを信じようとしませんでした。

12 その日の夕方、二人の弟子がエルサレムから田舎へ向かう道を歩いていました。そこへイエスが現れましたが、とっさには、だれだか見分けがつきませんでした。以前とは違った姿をしておられたからです。

13 やっとイエスだとわかると、二人はエルサレムに飛んで帰り、ほかの弟子たちにこの出来事を知らせました。しかし、だれも彼らの言うことを信じませんでした。

14 その後、十一人の弟子たちが食事をしているところにイエスが現れ、彼らの不信仰をとがめられました。「どうして、わたしが復活したと言う者たちの証言を信じなかったのですか。」

15 それから、こう宣言されました。「全世界に出て行きなさい。すべての人々にこの福音を宣べ伝えるのです。

16 信じてバプテスマ(洗礼)を受ける者は救われます。しかし、信じない者は罪に定められます。

17 信じる人々はわたしの権威によって悪霊を追い出し、新しいことばを語ります。

18 蛇をつかんでも、毒を飲んでも害を受けません。病人に手を置けば病気は治ります。」

19 こう語り終えると、イエスは天に上げられ、神の右の座につかれました。

20 弟子たちは命じられたとおりに出て行き、あらゆる所でこの福音を宣べ伝えました。主が共に働いてくださったので、数々の奇跡が起こり、弟子たちの教えの確かさが証明されました。〕

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ルカの福音書

ルカの福音書 の紹介

の紹介

快復の見込みのない病の中で絶望している人。人々からしいたげられ、軽蔑されている人。訴える力も権力もない弱い女性たち。社会の片隅に追いやられ、存在すらも認められない人たちにイエスは目をとめました。そして、つらい思いでいる人々の気持ちを理解し、やさしい励ましと、慰めのことばを一人一人にかけていきました。そのようなイエス・キリストの姿が、医者ルカによって生き生きと描かれています。

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ルカの福音書

ルカの福音書 1

神を愛する親愛なる友へ

1-2 イエス・キリストの伝記は、最初からの目撃者であり弟子であった人たちの証言をもとに、すでに幾つかでき上がっています。

3 しかし私は、すべての記録をもう一度初めから検証し、徹底的に調査した上で、あなたのために順序正しく書いて差し上げたいと思うようになりました。

4 それによって、あなたが教えを受けられたことはみな、正確な事実であることがよくおわかりいただけると思います。

ザカリヤへの約束

5 私の話は、ヘロデがユダヤの王であった時代に、ユダヤの祭司(神殿で神に仕える人)をしていたザカリヤという人のことから始まります。ザカリヤは神殿で奉仕するアビヤの組の一員で、妻エリサベツも祭司の家系でアロンの子孫でした。

6 この夫婦は神を愛し、神のおきてを忠実に守り、心から従っていました。

7 しかし、エリサベツは子どものできない体だったので、夫婦には子どもがなく、二人ともすっかり年をとっていました。

8 さて、ザカリヤの組が週の当番となり、彼は神殿で祭司の務めをしていましたが、

9 祭司職の習慣に従ってくじを引いたところ、聖所に入って主の前に香をたくという光栄ある務めが当たりました。

10 香がたかれている間、民衆は神殿の庭で祈るのです。大ぜいの人が集まっていました。

11 ザカリヤが聖所で香をたいていると、突然、天使が現れ、香をたく壇の右側に立ったではありませんか。

12 ザカリヤはびっくりし、言い知れぬ恐怖に襲われました。

13 しかし、天使は言いました。「ザカリヤよ。こわがることはありません。うれしい知らせなのだから。神が、あなたの祈りをかなえてくださったのです。エリサベツは男の子を産みます。その子にヨハネという名前をつけなさい。

14 その子はあなたがたの喜びとなり、楽しみとなります。また多くの人もあなたがたと共に喜びます。

15 その子が、主の前に偉大な者となるからです。彼はぶどう酒や強い酒は絶対に飲みません。生まれる前から聖霊に満たされており、

16 やがて多くのユダヤ人を神に立ち返らせるのです。

17 昔の預言者(神に託されたことばを伝える人)エリヤのように、たくましい霊と力にあふれて、メシヤ(ヘブル語で、救い主)の来られる前ぶれをし、人々にメシヤを迎える準備をさせます。大人には子どものような素直な心を呼び覚まし、逆らう者には信仰心を起こさせるのです。」

18 ザカリヤは答えました。「そんなことは信じられません。私はもう老いぼれですし、妻も年をとっているのです。」

19 「私はガブリエル、神の前に立つ者です。神がこの喜びの知らせを伝えるために、私を遣わされたのです。

20 その私のことばをあなたは信じなかったので、あなたは神に打たれて口がきけなくなります。子どもが生まれるまで話すことはできません。その時が来れば、必ず私の言ったとおりになるのです。」

21 外の人たちは、ザカリヤが出て来るのを、今や遅しと待ちかまえていましたが、なぜそんなに手間どっているのか不思議でなりません。

22 そして、ようやく彼が出てきたのですが、口がきけません。しかし人々は、ザカリヤの身ぶりから、きっと神殿の中で幻を見たのだろうと考えました。

23 ザカリヤは残りの期間の奉仕をすませ、家に帰りました。

24 まもなくエリサベツは妊娠し、五か月間、家に引きこもっていました。

25 エリサベツは、「主は私に子どもを与えて、恥を取り除いてくださった。なんとあわれみ深いお方でしょう」と言いました。

マリヤへの約束

26 その翌月、神は天使ガブリエルを、ガリラヤのナザレという町に住むマリヤという処女のところへお遣わしになりました。

27 この娘は、ダビデ王の子孫にあたるヨセフという人の婚約者でした。

28 ガブリエルはマリヤに声をかけました。「おめでとう、恵まれた女よ。主が共におられます。」

29 これを聞いたマリヤは、すっかり戸惑い、このあいさつは、いったいどういう意味なのかと考え込んでしまいました。

30 すると、天使が言いました。「こわがらなくてもいいのです、マリヤ。神様があなたにすばらしいことをしてくださるのです。

31 あなたはみごもって、男の子を産みます。その子を『イエス』と名づけなさい。

32 彼は非常に偉大な人になり、神の子と呼ばれます。神である主は、その子に先祖ダビデの王座をお与えになります。

33 彼は永遠にイスラエルを治め、その国はいつまでも続くのです。」

34 マリヤは尋ねました。「どうして私に子どもができましょう。まだ結婚もしておりませんのに。」

35 「聖霊があなたに下り、神の力があなたをおおうのです。ですから、生まれてくる子どもは聖なる者、神の子と呼ばれます。

36 ちょうど半年前、あなたのいとこのエリサベツも、『不妊の女』と言われていたのに、あの年になってみごもりました。

37 神の約束は、必ずそのとおりになるのです。」

38 「私は主のはしためにすぎません。何もかも主のお言いつけどおりにいたします。どうぞ、いま言われたとおりになりますように。」マリヤがこう言うと、天使は見えなくなりました。

39-40 数日後、マリヤはユダヤの山地へ急ぎました。そして、ザカリヤの住む町へ行き、エリサベツを訪ねました。

41 マリヤのあいさつを聞くと、エリサベツの子が、お腹の中で跳びはね、エリサベツは聖霊に満たされました。

42 彼女は喜びを抑えきれず、大声でマリヤに言いました。「あなたほどすばらしい恵みを受けた女性はいないでしょう。あなたの子が、神様の大きな誉れを表すようになるのですから。

43 主のお母様がおいでくださるとは光栄です。

44 あなたが入って来てあいさつされた時、私の子どもがお腹の中で喜び躍りました。

45 神様が語られたことは必ずそのとおりになると信じたので、神様はあなたに、このような祝福をくださったのです。」

46 マリヤは言いました。

「ああ、心から主を賛美します。

47 救い主である神様を心から喜びます。

48 神様は取るに足りない私のような者さえ、

お心にとめてくださいました。

これから永遠に、どの時代の人々も、

私を神に祝福された者と呼ぶでしょう。

49 力ある聖なる方が、

私に大きなことをしてくださったからです。

50 そのあわれみは、いつまでも、

神を恐れ敬う者の上にとどまります。

51 その御手はどんなに力強いことでしょう。

主は心の高ぶった者を追い散らし、

52 権力をふるう者を王座から引きずり降ろし、

身分の低い者を高く引き上げ、

53 飢え渇いた者を満ち足らせ、

金持ちを何も持たせずに追い返されました。

54 主は約束を忘れず、

しもべイスラエルをお助けになりました。

55 先祖アブラハムとその子孫を、

永遠にあわれむと約束してくださったとおりに。」

56 マリヤは、エリサベツの家に三か月ほどいてから、家に帰りました。

ヨハネの誕生

57 さて、エリサベツの待ちに待った日が来て、男の子が生まれました。

58 このニュースはたちまち近所の人たちや親類の間に伝わり、人々は、神がエリサベツを心にかけてくださったことを心から喜び合いました。

59 子どもが生まれて八日目に、友人や親類が集まりました。その子に割礼(男子の性器の包皮を切り取る儀式)を行うためです。だれもが、子どもの名前は父親の名を継いで、「ザカリヤ」になるものとばかり思っていました。

60 ところがエリサベツは、「いいえ、この子にはヨハネという名をつけます」と言うのです。

61 「親族にそのような名前の者は一人もいないのに。」

62 人々は、父親のザカリヤに身ぶりで尋ねました。

63 ザカリヤは、書くものがほしいと合図し、それに「この子の名はヨハネ」と書いたので、みんなはびっくりしました。

64 すると、とたんにザカリヤの口が開き、話せるようになったのです。彼は神を賛美し始めました。

65 これには近所の人たちも驚き、このニュースはユダヤの山地一帯に広まりました。

66 人々はその出来事を心にとめ、「この子はいったい、将来どんな人物になるのだろう。確かにこの子には、主の守りと助けがある」とうわさしました。

67 さて、父親のザカリヤは聖霊に満たされ、こう預言しました。

68 「イスラエルの神、主をほめたたえよう。

主は来て、ご自分の民を解放し、

69 そのしもべダビデ王の血筋から、

力ある救い主を遣わされた。

70 ずっと昔から、聖なる預言者を通して

約束されたとおりに。

71 救い主は、私たちを憎むすべての敵から

救い出してくださる。

72-73 主は私たちの先祖をあわれみ、

特にアブラハムをあわれみ、

彼と結んだ聖なる契約を果たされた。

74 私たちを敵の手から解放し、

恐れず主に仕える者としてくださった。

75 私たちはきよい者、

神の前に立つにふさわしい者とされた。

76 幼い息子よ。

おまえは栄光ある神の預言者と呼ばれよう。

おまえがメシヤのために道を備え、

77 主の民に、罪を赦され、

救われる道を教えるからだ。

78 これはみな、ただ神の深いあわれみによることだ。

天の夜明けがいま訪れようとしている。

79 その光は、

暗黒と死の陰にうずくまる者たちを照らし、

私たちを平和の道へと導くのだ。」

80 ヨハネは成長し、心から神を愛する者となり、イスラエルの人々の前で公に語り始めるまで、たった一人、荒野に住んでいました。

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ルカの福音書

ルカの福音書 2

イエスの誕生

1 そのころ、皇帝アウグストが全ローマ帝国の住民登録をせよと命じました。

2 これは、クレニオがシリヤの総督だった時に行われた最初の住民登録でした。

3 登録のため、国中の者がそれぞれ先祖の故郷へ帰りました。

4 ヨセフは王家の血筋だったので、ガリラヤ地方のナザレから、ダビデ王の出身地ユダヤのベツレヘムまで行かなければなりません。

5 婚約者のマリヤも連れて行きましたが、この時にはもう、マリヤのお腹は目立つほどになっていました。

6 そして、ベツレヘムにいる間に、

7 マリヤは初めての子を産みました。男の子です。彼女はその子を布でくるみ、飼葉おけに寝かせました。宿屋が満員で、泊めてもらえなかったからです。

8 その夜、町はずれの野原では、羊飼いが数人、羊の番をしていました。

9 そこへ突然、天使が現れ、主の栄光があたり一面をさっと照らしたのです。これを見た羊飼いたちは恐ろしさのあまり震え上がりました。

10 天使は言いました。「こわがることはありません。これまで聞いたこともない、すばらしい出来事を知らせてあげましょう。すべての人への喜びの知らせです。

11 今夜、ダビデの町(ベツレヘム)で救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。

12 布にくるまれ、飼葉おけに寝かされている幼子、それが目じるしです。」

13 するとたちまち、さらに大ぜいの天使たちが現れ、神をほめたたえました。

14 「天では、神に栄光があるように。

地上では、平和が、

神に喜ばれる人々にあるように。」

15 天使の大軍が天に帰ると、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださった、すばらしい出来事を見てこようではないか」と、互いに言い合いました。

16 羊飼いたちは息せき切って町まで駆けて行き、ようやくヨセフとマリヤとを捜しあてました。飼葉おけには幼子が寝ていました。

17 何もかも天使の言ったとおりです。羊飼いたちはこのことをほかの人に話して聞かせました。

18 それを聞いた人たちはみなひどく驚きましたが、

19 マリヤはこれらのことをすべて心に納めて思い巡らしていました。

20 羊飼いたちは、天使が語ったとおり幼子に会えたので、神を賛美しながら帰って行きました。

21 八日たち、割礼を行う日になり、その子は、母の胎内に宿る前から天使に示されたとおり、「イエス」と名づけられました。

22 モーセの律法によるきよめ(母親のきよめと幼子の献児)の時が来ると、両親はイエスを主にささげるため、エルサレムに連れて来ました。

23 モーセの律法には、「女から最初に生まれる子が男であれば、その子を主にささげなければならない」とあったのです。

24 両親は、決まりどおり、「山鳩一つがい、または家鳩のひな二羽」をきよめの供え物としてささげました。

25 その日、神殿には、エルサレムに住むシメオンという人がいました。信仰のあつい正しい人で、聖霊に満たされ、イスラエルにメシヤ(救い主)の来るのを待ち望んでいました。

26 神が遣わされるその方を見るまでは絶対に死なない、と聖霊のお告げを受けていたのです。

27 その日彼は、聖霊に導かれて神殿に来て、マリヤとヨセフがイエスを主にささげるためにやって来るのに出会ったのです。

28 シメオンはイエスを抱き上げ、神を賛美しました。

29 「主よ。今こそ私は安心して死ねます。

30 お約束どおり、この目でメシヤを見、

31 あなたが遣わされた救い主に

お会いしたのですから。

32 この方はすべての国を照らす光、

あなたの民イスラエルの光栄です。」

33 ヨセフとマリヤはそこに立ったまま、驚いてシメオンの言うことを聞いていました。

34-35 シメオンは両親を祝福してから、マリヤに言いました。「剣があなたの胸を刺し通すでしょう。イスラエルの多くの人がこの子を信じようとしないで、滅びるからです。しかし、この子によって大きな喜びを受ける人も多くいます。こうして、多くの人の思いが現されるのです。」

36-37 その日、女預言者アンナも神殿にいました。彼女はアセル族のパヌエルの娘で、非常に年をとっていました。七年の結婚生活の後、未亡人で通し、もう八十四歳にもなっていたのです。彼女は神殿を一歩も離れず、祈りと断食に明け暮れ、神に仕える毎日を送っていました。

38 この時、そこにいたアンナも神に感謝をささげ、救い主の来るのを待ちわびていたエルサレムのすべての人に、メシヤがおいでになったことを語りました。

少年イエス

39 モーセの律法どおりにすべてのことをすませると、ヨセフとマリヤはガリラヤのナザレに帰りました。

40 イエスは成長してたくましくなり、たいへん賢い子だと評判になるほどでした。神も絶えずイエスを祝福してくださいました。

41 さて、両親は過越の祭り(パン種を入れないパンを食べる、年に一度のユダヤ人の祭り)には、毎年かかさずエルサレムに行きました。

42 十二歳の時、イエスは祭りの慣習に従って、両親についてエルサレムに行きました。

43 祭りが終わると、両親は帰途につきましたが、イエスはそのままエルサレムに残っていました。そうとは知らない両親は、

44 てっきりほかの人たちといっしょに帰っているものと考え、気にもとめず、その日一日、旅を続けました。ところが、夕方になってもイエスの姿が見あたりません。あわてて、親族や友人たちの間を捜し始めました。

45 それでも見つからず、とうとう、捜しながらエルサレムまで引き返しました。

46 三日後、ようやくイエスの居場所がわかりました。なんと、神殿で律法の教師たちを相手にむずかしい議論をしていたのです。

47 取り巻く見物人はみな、イエスの知恵と答えに舌を巻いていました。

48 両親は、わが子が落ち着きはらって座っているのを見て、驚きました。「どうしてこんなことをしたのです。お父さんもお母さんも、どんなに心配して捜し回ったか知れないんですよ」とマリヤが言いました。

49 ところがイエスは、「なぜ捜したのですか。ぼくが父の家(神殿)にいるとわからなかったのですか」と答えました。

50 こう言われても、どういうことか、両親にはさっぱりわかりませんでした。

51 それからイエスは、両親といっしょにナザレに帰り、彼らによく仕えました。マリヤは、このことをみな心にとめておきました。

52 イエスは身長も伸び、ますます知恵も加わって、神にも人にも愛されました。

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ルカの福音書

ルカの福音書 3

バプテスマのヨハネ、活動を始める

1-2 ローマ皇帝テベリオの治世の十五年目に、神は、荒野に住むザカリヤの子ヨハネにお語りになりました。〔当時、ポンテオ・ピラトがローマから遣わされた全ユダヤの総督で、ヘロデはガリラヤ、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ、ルサニヤがアビレネを治めていました。大祭司はアンナスとカヤパでした。〕

3 ヨハネはヨルダン川周辺をくまなく歩き、罪が赦されるために、今までの生活を悔い改めて、神に立ち返ったことを表明するバプテスマ(洗礼)を受けるようにと、教えを説き始めました。

4 預言者イザヤの書にあるとおりです。

「荒野から叫ぶ声が聞こえる。

『主の道を準備せよ。

主が通られる道をまっすぐにせよ。

5 山はけずられ、

谷は埋められ、

曲がった所はまっすぐにされ、

でこぼこ道は平らにされる。

6 こうして、すべての人が

神から遣わされた救い主を見るのだ。』」(イザヤ40・3-5)

7 バプテスマを受けに来る人たちに、ヨハネはきびしい口調で話しました。「まむしの子ら! あなたがたは神に立ち返ろうともせず、ただ地獄から逃れたい一心でバプテスマを受けようとしている。

8 その前に、悔い改めたことを行いで示しなさい。アブラハムの子孫だから大丈夫などと思ってはいけない。そんなものは何の役にも立たない。神はこの石ころからでも、今すぐアブラハムの子孫をお造りになれるのだ。

9 今の今でも、神のさばきの斧はふりかぶられ、あなたがたを根もとから切り倒そうと待ちかまえている。だから、良い実を結ばない木はすぐにも切り倒され、火に投げ込まれるのだ。」

10 「では、いったいどうすればいいのですか。」

11 こう尋ねる群衆に、ヨハネは答えました。「下着を二枚持っていたら、一枚は貧しい人に与えなさい。余分な食べ物があるなら、お腹をすかせている人に与えなさい。」

12 取税人たち(ローマに納める税金をあくどいやり方で取り立て、人々からきらわれていた)までもが、バプテスマを受けようとやって来ました。そして、恐る恐る、「私たちはどうしたらよいのでしょう」と尋ねました。

13 「正直になりなさい。ローマ政府が決めた以上の税金を取り立ててはいけない。」

14 兵士たちも尋ねました。「私たちはどうすればいいのですか。」「脅しや暴力で金をゆすったり、何も悪いことをしない人を訴えたりしてはいけない。与えられる給料で満足しなさい。」

15 民衆は、救い主を待望していました。そして、もしかしたらヨハネがキリストではないかと考えたのです。

16 この疑問を、ヨハネはきっぱり否定しました。「私は水でバプテスマを授けているだけだ。しかし、もうすぐ私よりはるかに権威ある方が来られる。その方のしもべとなる価値さえ、私にはない。その方は、聖霊と火でバプテスマをお授けになる。

17 また、麦ともみがらとをふるい分け、麦は倉に納め、もみがらを永久に消えない火で焼き尽くされる。」

18 ヨハネはほかにも多くのことを教え、民衆に福音を伝えました。

19-20 〔当時、ガリラヤの領主ヘロデ・アンテパスが、兄嫁のヘロデヤを奪い取るなど悪事を行っていたので、ヨハネは彼を非難しました。そのためヨハネは捕らえられ、投獄されました。こうしてヘロデは、多くの悪に悪を重ねました。〕

21 さて、そうしたある日のこと、イエスは、ヨハネからバプテスマを受ける人々に加わりました。バプテスマを受け、祈っておられると、天が開き、

22 聖霊が鳩のようにイエスに下りました。そして天から、「あなたはわたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ」という声が聞こえました。

イエスの家系

23-38 イエスが公に教え始められたのは、およそ三十歳のころでした。人々はイエスを、ヨセフの息子と思っていました。このヨセフの父はヘリ、ヘリの父はマタテ、マタテの父はレビ、レビの父はメルキ、メルキの父はヤンナイ、ヤンナイの父はヨセフ、ヨセフの父はマタテヤ、マタテヤの父はアモス、アモスの父はナホム、ナホムの父はエスリ、エスリの父はナンガイ、ナンガイの父はマハテ、マハテの父はマタテヤ、マタテヤの父はシメイ、シメイの父はヨセク、ヨセクの父はヨダ、ヨダの父はヨハナン、ヨハナンの父はレサ、レサの父はゾロバベル、ゾロバベルの父はサラテル、サラテルの父はネリ、ネリの父はメルキ、メルキの父はアデイ、アデイの父はコサム、コサムの父はエルマダム、エルマダムの父はエル、エルの父はヨシュア、ヨシュアの父はエリエゼル、エリエゼルの父はヨリム、ヨリムの父はマタテ、マタテの父はレビ、レビの父はシメオン、シメオンの父はユダ、ユダの父はヨセフ、ヨセフの父はヨナム、ヨナムの父はエリヤキム、エリヤキムの父はメレヤ、メレヤの父はメナ、メナの父はマタタ、マタタの父はナタン、ナタンの父はダビデ、ダビデの父はエッサイ、エッサイの父はオベデ、オベデの父はボアズ、ボアズの父はサラ、サラの父はナアソン、ナアソンの父はアミナダブ、アミナダブの父はアデミン、アデミンの父はアルニ、アルニの父はエスロン、エスロンの父はパレス、パレスの父はユダ、ユダの父はヤコブ、ヤコブの父はイサク、イサクの父はアブラハム、アブラハムの父はテラ、テラの父はナホル、ナホルの父はセルグ、セルグの父はレウ、レウの父はペレグ、ペレグの父はエベル、エベルの父はサラ、サラの父はカイナン、カイナンの父はアルパクサデ、アルパクサデの父はセム、セムの父はノア、ノアの父はラメク、ラメクの父はメトセラ、メトセラの父はエノク、エノクの父はヤレデ、ヤレデの父はマハラレル、マハラレルの父はカイナン、カイナンの父はエノス、エノスの父はセツ、セツの父はアダム、アダムの父は神です。

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ルカの福音書

ルカの福音書 4

イエス、悪魔に試みられる

1 さて、イエスは聖霊に満たされ、ヨルダン川をあとにすると、聖霊に導かれるまま、ユダヤの荒野に向かわれました。

2 そこで、悪魔が四十日間、イエスを誘惑したのです。その間イエスは、何も口にしなかったので、空腹を覚えられました。

3 その時、悪魔がたくみに誘いかけました。「もしあなたが神の子なら、ここに転がっている石をパンに変えてみたらどうだ。」

4 しかしイエスは、お答えになりました。「『人はただパンだけで生きるのではない』(申命8・3)と聖書に書いてあるではないか。」

5 次に悪魔は、イエスを高い所へ連れて行き、一瞬のうちに、世界の国々とその繁栄ぶりとを見せて言いました。

6-7 「さあ、ここにひれ伏して、この私を拝みなさい。そうすれば、これらの国々とその栄光とを、全部あなたにやろう。」

8 イエスはお答えになりました。「『神である主だけを礼拝し、主にだけ従え』(申命6・13)と聖書に書いてあるではないか」

9 さらに悪魔は、イエスをエルサレムへ連れて行き、神殿の頂に立たせて言いました。「さあ、ほんとうに神の子だと言うなら、ここから飛び降りてみなさい。

10 聖書には『神は天使を送って、

11 あなたを支えさせ、あなたが岩の上に落ちて砕かれることのないように守られる』(詩篇91・11-12)と、はっきり書いてあるのだから。」

12 しかしイエスは、お答えになりました。「『あなたの神である主を、試みてはならない』(申命6・16)とも書いてある。」

13 あの手この手の誘惑のかぎりを尽くすと、悪魔は一時、イエスから離れて行きました。

イエス、活動を始める

14 イエスが聖霊の力に満たされてガリラヤに戻られると、まもなくその地方一帯にイエスの評判が広まりました。

15 あちこちの会堂で教えを語るイエスは、人々の賞賛の的でした。

16 それからイエスは、少年時代を過ごしたナザレに帰り、いつものように土曜日(安息日)に会堂へ行かれました。聖書を朗読しようと席を立つと、

17 預言者イザヤの書が手渡されたので、次の箇所をお開きになりました。

18-19 「わたしの上に主の御霊がとどまっておられる。

主は、貧しい人たちに

この福音(神の救いの知らせ)を伝えるために、

わたしを任命された。

主はわたしを遣わして、

捕虜には解放を、

盲人には視力の回復をお告げになる。

踏みにじられている人を自由にし、

主の恵みの年をお告げになる。」(イザヤ61・1―2)

20 イエスは朗読を終えると、聖書を閉じ、係の者に返して、腰をおろされました。みんなの目はいっせいにイエスに注がれました。

21 それにこたえるように、イエスはこう言われました。「この聖書のことばは、今日、実現したのです。」

22 人々はみなイエスをほめ、そのことばのすばらしさに驚きました。しかし一方では、「いったいどうなっているのだ。ただのヨセフのせがれではないか」とささやき合いました。

23 そこで、イエスは言われました。「きっとあなたがたは、『医者よ、自分を治せ』ということわざを引いて、『カペナウムで行った奇跡を、自分の郷里でもしてくれ』と言うのでしょう。

24 はっきり言いましょう。どんな預言者でも、故郷では歓迎されないものです。

25-26 エリヤはどうだったでしょうか。三年半のあいだ雨がなく、国中が大ききんに見舞われた時、イスラエルには助けを求める未亡人が多くいました。しかしエリヤは、そういう人たちのところへではなく、シドンのツァレファテに住む外国人の未亡人のところへ遣わされ、奇跡によって彼女を助けました。

27 また、預言者エリシャの場合はどうだったでしょうか。ユダヤにもツァラアト(皮膚が冒され、汚れているとされた当時の疾患)の人がたくさんいたというのに、そのだれもがいやされず、ただシリヤ人ナアマンだけがいやされたではありませんか。」

28 こう言われて、会堂にいた人たちはひどく腹を立て、

29 どっとイエスに襲いかかり、その町の丘のがけっぷちまで連れて行きました。そこから突き落とすつもりだったのです。

30 ところがイエスは、群衆の間をすり抜け、去って行かれました。

31 それからイエスは、ガリラヤの町カペナウムに帰り、毎土曜日、会堂で教えられました。

32 ここでもまた、人々はイエスの教えに驚きました。イエスが、権威あることばで真理を語られたからです。

33 ある時、会堂で教えておられると、悪霊につかれた男が、イエスに向かって大声でわめき立てました。

34 「ナザレのイエス。お願いだから出て行ってくれ! おれたちをどうしようというのだ。おれたちを滅ぼしに来たのだろう。あなたがだれなのか、よくわかっている。神のきよい御子だ。」

35 イエスは悪霊をさえぎり、「黙りなさい。その人から出て行きなさい」とお命じになりました。すると突然、悪霊は、人々の目の前で男を投げ倒しましたが、それ以上は何の危害も加えずに出て行きました。

36 あっけにとられた人々は、口々に言いました。「悪霊までが言うことを聞くとは、この方のことばにはなんと力があるのだろう。」

37 こうしてイエスのうわさは、この地方一帯に非常な勢いで広まりました。

38 その日イエスは、会堂からシモン(ペテロ)の家へ行かれました。すると、シモンのしゅうとめが高熱にうなされているところでした。「お願いです。治してやってください」と人々に頼まれて、

39 イエスは彼女の枕もとに立ち、熱病をおしかりになりました。するとどうでしょう。たちまち熱が引き、平熱に戻ったしゅうとめはすぐに起き上がり、食事の用意を始めたではありませんか。

40 夕方になると、病人を連れた村の人たちが、ぞくぞくとイエスのもとに詰めかけました。イエスは、どんな病気であろうと、連れて来られた病人の一人一人にさわり、治されました。

41 中には悪霊につかれた人もいましたが、イエスが命令すると、悪霊は大声で、「あなたは神の子だ!」と叫びながら出て行きました。しかし、イエスは悪霊がものを言うことを許されませんでした。悪霊は、イエスがキリスト(ギリシャ語で、救い主)であることを知っていたからです。

42 翌朝早く、イエスはただ一人、人気のない寂しい所へ行かれました。人々はあちこち捜し回り、やっとのことでイエスを見つけ出すと、もうどこへも行かないように頼みました。

43 しかし、イエスはお答えになりました。「ほかの町々にも、神の福音(救いの知らせ)を伝えなければならないのです。そのために、わたしは来たのですから。」

44 こうしてイエスは、ユダヤ中を旅し、各地の会堂で教えられました。

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ルカの福音書

ルカの福音書 5

弟子を集める

1 ある日、イエスがゲネサレ湖(ガリラヤ湖)のほとりで教えておられると、群衆が神のことばを聞こうと押し寄せました。

2-3 見ると、水ぎわの二そうの小舟のそばで、漁師たちが網を洗っています。イエスはそのうちの一そうに乗り込んで、持ち主のシモンに少しこぎ出してもらい、舟の中に座ったまま群衆に教えられました。

4 話が終わると、イエスはシモンに言われました。「さあ、もっと沖へこぎ出して、網をおろしてごらんなさい。」

5 「でも先生。私たちは夜通し一生懸命働きましたが、雑魚一匹とれなかったのです。でも、せっかくのおことばですから、もう一度やってみましょう。」

6 するとどうでしょう。今度は網が破れるほどたくさんの魚がとれたのです。

7 あまりに多くて、手がつけられません。大声で助けを求めました。仲間の舟が来ましたが、二そうとも魚でいっぱいになり、今にも沈みそうになりました。

8 シモン・ペテロは、あわててイエスの前にひれ伏し、「先生。どうぞ私みたいな者から離れてください。私は罪深い人間で、とてもおそばには寄れません」と叫びました。

9 あまりの大漁に、ペテロも仲間たちも恐ろしくなったからです。

10 仲間には、ゼベダイの息子のヤコブとヨハネもいました。イエスはシモンに、「こわがることはありません。あなたは今からは人間をとる漁師になるのです」と言われました。

11 岸へ上がると、彼らはすべてを捨てて、イエスに従いました。

病気を治す

12 イエスがある村におられた時のことです。そこに、ツァラアトに全身を冒された男がいました。彼はイエスを見るや、その前にひれ伏し、額を地面にこすりつけて頼みました。「主よ。お願いでございます。どうぞ私の体をもとどおりにしてください。お気持ちひとつで治るのですから。」

13 イエスは手を伸ばして男にさわり、「治してあげましょう。さあ、もう大丈夫です」と言われました。すると驚いたことに、ツァラアトはたちまち消え去り、あとかたもなくなったのです。

14 「このことをだれにも話してはいけません。すぐに祭司のところへ行って、体を調べてもらい、モーセの律法どおりのささげ物をしなさい。そうすれば、治ったことがみんなの前で証明されるのです。」しかし、

15 イエスのうわさはあっという間に広まり、多くの人が、教えを聞こう、病気を治してもらおうと集まって来ました。

16 しかしイエスは、何度も荒野に身を避け、祈っておられました。

17 ある日、イエスが教えておられると、パリサイ人(特におきてを守ることに熱心なユダヤ教の一派)と律法の専門家たちもそばに座っていました〔ガリラヤやユダヤの村々、またエルサレムから来た人たちです〕。イエスには、病気を治す神の力がありました。

18-19 その時、数人の人がやって来ました。見ると、中風(脳出血などによる半身不随、手足のまひ等の症状)の男を、それも床のままかついでいます。彼らは何とか群衆をかき分けてイエスのところへ行こうとしましたが、人が多くて、とても近づけたものではありません。しかたなく彼らは屋根にのぼり、天井に穴をあけ、病人をふとんごと、人々の真ん中に立っておられるイエスの目の前につり降ろしました。

20 イエスはこれほどまでの信仰を見て、病人に、「あなたの罪は赦されました」と宣言なさいました。

21 すると、「なんと罰あたりなことばだ! いったい自分をだれだと思ってるのか。明らかに神への冒瀆だ! 罪を赦すことなど、神にしかできないことなのに」と、パリサイ人や律法の専門家たちは、心の中で強く反発しました。

22 それを見抜いたイエスは、「なぜ、わたしのことばが神を汚すことになるのですか。

23-24 この人に、『あなたの罪は赦されました』と言うのと、『起きて歩きなさい』と言うのと、どちらがむずかしいですか。わたしは病気を治す力も、罪を赦す権威も持っているのです。それを証明してみせましょう」と言い、中風の男に、「さあ、起きなさい。床をたたんで、家に帰りなさい」とお命じになりました。

25 男はすぐにはね起き、床をたたむと、並み居る人をしり目に、神を賛美しながら帰って行きました。

26 居合わせた人たちは、みな恐れに満たされて、「不思議だ。まるで考えられないことだ」と幾度もくり返しては、神をほめたたえました。

27 このあと、イエスが町を出ようとされた時、一人の取税人が税金取立所に座っているのが見えました。その男の名はレビ(マタイ)と言いました。「さあ、ついて来て、わたしの弟子になりなさい。」

28 イエスの誘いに、レビは何もかも捨てて立ち上がり、あとに従いました。

29 まもなくレビは、家で、イエスのために盛大な歓迎会を催しました。取税人仲間をはじめ、大ぜいの人が招かれました。

パリサイ人たちの言いがかり

30 ところが、パリサイ人や律法の専門家たちはこの光景を見て、弟子たちに激しい非難をあびせました。「あなたたちは、どうしてこんなくずのような連中といっしょに食事をするのか。」

31 イエスは、お答えになりました。「医者が必要なのは病人で、健康な人ではありません。

32 わたしは、自分を正しいと思う人を招くためではなく、罪人を招いて、罪を悔い改めさせるために来たのです。」

33 彼らも負けてはいません。今度は違った面から、詰め寄りました。「バプテスマのヨハネの弟子たちは、いつも断食して祈っている。パリサイ人の弟子たちも同様だ。なのに、あなたの弟子たちときたら、平気で飲み食いしている。そのわけを聞かせてもらいたい。」

34 イエスは言われました。「幸せな人が断食しますか。結婚披露宴で、花婿の招待客がお腹をすかせたままでいることがあるでしょうか。もちろん、ありえません。

35 しかし、花婿が彼らから引き離される日が来ます。その時こそ断食するのです。」

36 続いて、もう一つのたとえを話されました。「古い着物に継ぎを当てるのに、新しい着物から布切れを切り取る人がいるでしょうか。そんなことをしたら、新しい着物もだめになるし、古い着物も継ぎ目が破れて、結局どちらもだいなしです。

37 また、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れる人がいるでしょうか。そんなことをしたら、古い皮袋は新しいぶどう酒の圧力で張り裂け、ぶどう酒もこぼれてしまいます。

38 新しいぶどう酒は、新しい皮袋に入れるものです。

39 こうも言えます。だれでも古いぶどう酒を飲んだあとで、新しいぶどう酒を口にしたいとは思わないでしょう。『古い物は良い』と言われるとおりです。」

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